第22話 最速の空中格闘戦

 二組目は、壮絶な格闘戦となった。


 ユミ・ドルニエ率いる攻撃側は、彼女の代名詞である速攻をかけた。一直線に突っ込む彼女たちを迎え撃ったのは、ミハル・タチカワを中心とした、高機動を特徴とした四人だった。

「へぇ、凄い」

 マスタング姉妹が同時に呟いた。彼女らが驚いたのは守備側に対してだった。

 ミハルたちは絶妙な位置取りで、攻撃側に対し数的優位を保ちながら、確実に一人ずつ撃墜していく。狭い空間を有効に活用し、囮を使い、罠を仕掛けている。


 激しい銃撃戦の末、残るはユミ・ドルニエだけになった。

「さすがにこのまま全滅では、印象が悪すぎるからねぇ」

 彼女は呟くと、すっと目を細めた。

 残り30秒。

 急降下からの旋回。壁沿いに急上昇し敵の背後をとる。そして連射。あっという間に二人を墜とす。

「えっ、早いっ」

 マリーンが身を乗り出した。


 ユミ・ドルニエは飛びながらくるり、と仰向けになると後方から迫っていたもう一人も撃墜。守備側で最後に残ったミハルと対峙する。二人はほぼ同時に発砲した。


 双方、初弾はかわした。

 上下入れ替わり、更に連射する。


 ミハルが急降下し、反転上昇したユミ・ドルニエと交錯する。

 銃声が、二つ。


「そこまでだ」

 教官の声に、二人は離れ、降下した。

 どちらにもペイント弾の痕があった。

「これは引き分けだな」

 ユミ・ドルニエとミハル・タチカワは顔を見合わせた。お互いの右手を軽く合わせる。


 ほえー、と未冬はため息をついた。

「格好いい」

「ちぇ、引き分けか。実戦にそんなものなんか無いだろうに」

 グリーシャが面白くなさそうに言った。

「だけど、ドルニエっていつも手を抜いてるからなぁ。それも気にくわない」

 どういう事?

 未冬が問いかける。

 マスタング姉妹が振り向いた。

「良くも悪くも、突出しない方がほかの女の子からもてるんだ、って言ってた」

「あれも一種の天才かもしれない」

「あるいは真性の馬鹿か」

 交互に言う。

 そういえば通常科目の成績もちょうど真ん中だった。

 やはり狙ってやっているのだろうか。


 うらやましい。未冬は呟いた。

 それは、この前、成績発表があったからなのだ。

 後期の中間成績発表。


 まさか、あんな事になっていようとは。




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