第2話 世界を握せし六の神

 イヴァルティアと一緒に転移して広い建物の中に出る。ここは神界の中央部だ。


「ここからは歩いていきましょう」

「うん。そうだね」


そう言いわたしとイヴァルティアは歩きだす。


「もうだいぶ力も知識も馴染んできたみたいですね」

「何でも知ってるような感覚があってちょっと不思議かな」

「この世界で私たちは最高位の神ですから、世界のほとんどを感知することが可能です。中には自分の権能でなければ感知できないこともありますけどね」

「神様でも万能じゃない、だねー」

「そうですね」

 そういいながら花咲く綺麗で大きな廊下を渡っていく。


 はえ~すごいな~神様の建物……まあ私ももうその神様の一人なんだけど。


 そんなことを思いながら周りを見渡すとたくさんの神達がお辞儀した後に私達……というか私を見ている。


「何かみられてるね」

「それは多分新しい上位神がどんな方か気になっているんですね。転生しようとした人間が神に、まして上位神になることなんて過去にありませんでしたから」

「そうなんだ。……初対面の印象は大事だよね」


 そう言った私は自分を見ている神達に笑顔で手を振る。すると驚かれた。失敗したかな?

 その様子を見たイヴァルティアが笑いながら、


「彼女たちからすれば私たちはだいぶ格上の神なので挨拶してもらえるとは思ってなかったのでしょうね」


と言ってる。


「そなんだ。よかったー。なんかおかしかったのかと思っちゃった」

「ふふっアーヴァロンはかわいいですからね。それもあるかもしれませんね」

「私もイヴァルティアみたいに大人の女性になりたかったよ。髪と目の色が変わっただけでスタイルよくなったりしてないし……」

「あらあら…そうですか。私はかわいらしくてとても魅力的に見えますよ」

「そうかなー?」


 そんな会話をしながら目的の場所へ向かう。

 ちなみに私の髪は銀色、目は銀と金の2つの色に変わっている。近所にいた猫みたい。






 そうこうしているうちに目的の「上位神の間」についた。そこには私たち以外の上位神たち4人が待っていた。


「あーイヴァルティアお帰り。…おっその子が新しい上位神の子?」


 口調が軽めの緑髪の女性が話しかけてくる。イヴァルティアと親しそう。


「はい。この子が新しいい神のアーヴァロンですよ。ヘクセンチア」

「へーどんなのかと思ってたけどこんなかわいい子なんだー。……ああ、挨拶忘れてたね。あたしはヘクセンチア。「豊穣」を司る上位神だよ~」

「丁寧にありがと。私はアーヴァロン。よろしくねヘクセンチア」

「うん♪よろしく~」


 軽い。なんというか彼女は物凄く軽かった。友達にいたなこんな子。

 自己紹介を入り口でしていると奥に座っている黒髪の男性がしゃべりだした。


「ヘクセンチア。仲良くなるのは良いけど入り口で立ち話もなんだから座ってはなそう」

「そうだね。ごめんごめん。さっ二人とも座って~」

「そうですね。行きましょうアーヴァロン」

「うん。えっとどこ座ればいいの?」

「んー?適当でいいよ~」


 そうして席に全員座り自己紹介が始まる。

 まず話し出したのは黒髪の男性だった。


「初めましてだね。僕はアポロヌス。「元素」のアポロヌスだ。よろしくアーヴァロン」

「うん。よろしくね。アポロヌス」


 次に話出したのは無口そうな青髪の女の子だった。私より体は少し小さい。


「……私は「循環」のケリュケイオン。…よろしく」

「よろしくね。ケリュケイオン」


 最後は……物凄くこちらをにらんでいる赤髪の男性だ。

 何でこんなに睨んでいるんだろう?そう考えているとヘクセンチアが自己紹介を彼に促す。


「睨んでないで自己紹介しなよヴァルドゥール」

「ちっ…わかってるよ……「戦乱」のヴァルドゥールだ。……言っておくが俺はお前みたいに突然沸いた神がいきなり俺と同じ上位神だなんて認めないからな」


 そう言った彼はやることはやったと言わんばかりに部屋から出ていく。

 するとイヴァルティアがすこし苦笑いしながらため息を出す。


「……まったく…彼は…。すみません。悪い方ではないんですが……」

「ううん、別にいいよ。いきなり神様になったのも事実だしね」

「あいつは戦闘バカだから。あんまり気にしないでいいよ~」

「ヘクセンチア…それはさすがにひどいと僕は思うんだが……」

「……くだらないプライド」


 拒絶されて少しへこんでいたが他のみんなが元気づけてくれる。


 よかった。仲良くできそうだ。





 その後にこれからの話をする。


「それで神様になったのはいいとして……私は何をすればいいの?」

「そうですね。私たちは世界に干渉し人々が暮らしていけるように調整することが役目です。ですから自分の神格を使って人々を助けていく、それが私たちの最終目標ですね。それ以外はさして決まりはないですから……あなたなりの方法で人々を助けてくださいね」

「うん。わかったよ。とりあえず一度地上に干渉してみようかな?」

「ああー…それなんだけど…まだアーヴァロンは地上に干渉する手段がないんだー。」

「えっ?」


 私は驚きヘクセンチアを見る。


「私達神は人の信仰を通して地上に干渉するんだけど……アーヴァロンは生まれたばかりだから、信仰している人間がいないんだよ。だからまだ地上に干渉はできないの」

「そっかぁ」


 若干しょぼんとしている私にイヴァルティアがいう。


「一応私の信者たちに新しい神が生まれたことを教えて、あなたを模した石像を私の神殿に作るようにお願いしたので……誰かがあなたを信仰してくれれば干渉出来るようになると思いますから……しばらくは神界でゆっくりしてください」

「うん。りょーかい。ありがとね」


 私とイヴァルティアが笑いあっているとアポロヌスが思い出したように話し出す。


「ああ、そうだ。神界の中で君の補助の神を一人連れていてもいいから。神界で暇しているときに自分に仕える神を探してみるといいよ」


 とのことだった。


「わかった。それじゃ早速探してみるね」


 そういいながら私は上位神の間を出ていく。自分と一緒に人々を助ける神を探すために。







 ―彼女のいなくなった上位神の間での出来事


「いや~突然上位神が誕生したって言うから驚いたけど。すごくいい子だねあの子」

「おや、ヘクセンチアもそう思いますか?」

「うん。しっかりとあいさつも全員に返してたし。ヴァルドゥールより礼儀正しいんじゃない?」

「そうですね…いきなり神など言われても普通は混乱して暴れたりしかねないですからね。少し彼女が暴れたりするのではと私が傍にいましたが……全然そんなそぶりもありません。本当にいい子です」


 この神界最高位の上位神が彼女の目覚めに付き添っていたのはそういう理由だった。結局アーヴァロンは暴れるどころか周りにかわいさを振りまく美女神として下級の神達に慕われるほどのおとなしさだったので問題はなかったが。


「……そういえばあの子。自分の自己紹介の時に神格言い忘れてたけど…イヴァルティア、あの子なんの神格持ってんの?」

「……あの子は…彼女の神格は…「慈愛」と「守護」です」

「……うそでしょ?2つ?しかも失われてた「慈愛」と「守護」?」

「……それは…すこし異常…」

「その二つは今は彼女以外は持っていないだろうからね。異常と言えば確かに異常だね」

「ええ。私も驚きました。……ですが彼女と話して問題ない、そう思えました。ですから今は見守りましょう。あの子がどんな神になるのか」

「……うん。そうだね。ケリュケイオンと違って素直でかわいいし。あたしも力になっちゃうぞぉ―」

「……喧嘩うってる?」

「さて僕はヴァルドゥールの様子でも見に行くかな」


 こうしてその場から上位神は皆消えていった

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