第8話 ノースランド

美生たちが乗ったハイエースは東北自動車道を北上して行った。女性が4人も乗っていると会話には不自由しない。必ず誰かがしゃべっているので、さほど退屈することもなく夕方には青森に着いた。


ロングドライブで強張った体を、ホテルのお風呂でほぐして夕食を食べてから、美生たちは1室に集まって、明日以降の予定の確認をする。


初めてのロングツーリングに対する大きな期待とかすかな不安が4人を少しハイにさせていた。


翌日、函館行きのフェリーに乗り、美生たちは北海道に上陸した。1泊目のホテルは札幌なので、そのまま一気にハイエースで走る。


札幌からいよいよツーリングの開始である。まずは、美生と佳がヴェスパでタンデム、陽がランブレッタに乗る。お盆過ぎの北海道はもう秋の気配で、バイクに乗るには、快適だった。


北海道の道は素晴らしかった。ずっと真っ直ぐで単調と言えば単調だが、本州と違う景色が飽きさせない。


地平線が見える真っ直ぐな道では、美生の後ろの佳が脇から身を乗り出して、景色を眺めてた。




宗谷岬まで近付くと、少し離れたスーパーマーケットにハイエースを停めて、2台のタンデムで宗谷岬に向かう。陽が運転するランブレッタの後を走りながら、美生は


「4人がそれぞれ自分のバイクに乗っていたら、もっと楽しいんだろうな。」と思った。


だが、何かトラブルが起きればトランスポーターのハイエースのありがたみが骨身にしみるに違いない。


美生がそんなことを考える程、ヴェスパとランブレッタは何のトラブルもなく走り続けた。


ツーリングも最初の内は、みんな夜は疲れて、すぐに寝てしまっていたが、慣れてくると色々なことを話すようになった。たわいのない話から、次はどんなバイクに乗りたいかとか、将来どんな仕事をしたいかとか、お互いの家族の話など。


ホテルに泊まる時は、2人部屋が多い。基本は、美生と佳、有希と陽だが、組み合わせを変えて、美生は有希や陽とも同室となった。そうすると、また相手の違う面が分かって、互いの理解が深まるような気がした。


北海道は食べ物も美味しかった。というより北海道の景色の中で食べる物は、何でも美味しく感じられるのかも知れない。美生を始め、皆軒並み1〜3キロ太ってしまい、帰ってからダイエットに追われることになった。


楽しい時間は過ぎるのが早い。

天候にも恵まれ、美生たちのツーリングもあっという間に終わりを迎えた。


「帰りたくないです〜。」有希は叫び、


「この2週間ずっと皆と一緒で楽しかった。」佳は満足した様子で言った。


「楽しいこともいつかは終わる。次はもっと楽しいツーリングをしましょう。」陽は納得した顔をしていた。


美生は言葉が出なかった。ロングツーリングって、こんなに楽しいんだ。きっと祖父や父も同じような体験をしたに違いない。


美生たち4人は、フェリーのデッキから手を振った。

さようなら、北海道。必ずまた来ます。


美生たちの初めてのロングツーリングは、無事に終わったのだった。


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