第7話 ノーベンバー1

「みなさん! 出発します!」

「おお!」

オクトーバー村の人々は慣れ親しんだオクトーバー村を一先ず捨てて、生きるために隣町のノーベンバー町に移住することを選択した。村人たちは持てるだけの荷物を持って隣町を目指す。

「朝に出れば、夕方には着くわ! みんな頑張りましょう!」

「おお!」

道のりは難しいものではなかった。日頃から人や物の行き来があるので、特に不安などはなかった。

「ノーベンバー町の町長も私たちを快く受け入れてくれるそうよ。」

イリーナは手紙でノーベンバー町の町長とやり取りし、オクトーバー村の人々の受け入れの約束をもらった。

「イリーナ、がんばろう。」

俺はイリーナを励ます。

「ええ。」

イリーナも明るい表情で俺に笑いかける。



「ゴブリンだ!」

村人の一行が隣町へ向うために道なり進み、ノーベンバーの森の入り口が見える所まできた。森の入り口にはゴブリンたちが検問のように立ち塞がっていた。

「どうする? イリーナ?」

俺は代表であるイリーナに意見を求めた。

「森にゴブリンがいると分かったからには、森には入れないわ。一晩野宿することになるけど迂回して岩場の道を通りましょう。あそこなら姿を隠しながら進むことが出来るはずよ。」

イリーナは村人の安全のためにも賢明な判断を下す。

「それがいい。私がゴブリンたちの注意を引き付けるおとりになろう。アイン、おまえが村の人々を守るんだ。」

しんがりはオーガスが引き受ける。

「分かりました。師匠。俺に任せて下さい。」

俺は師匠に信頼してもらっていると感じ嬉しかった。



「やれやれ。やっと行ったか。」

オーガスはオクトーバー村の人々が岩場の道に向けて進んでいくのを確認する。オーガスはゴブリンたちの元に歩み寄っていく。

「よくやった。おまえたち。」

オーガスは知り合いのようにゴブリンに話しかける。

「お帰りなさい。ウァズワース様。」

そう、オーガスの正体は魔王の手下のウァズワースである。彼はゴブリンの指揮権を持っている。

「クポクポ、森の中の様子はどうだ?」

ゴブリンの名前は、クポクポ。ウァズワースの信頼するゴブリンである。

「ダメです。狼の群れが人間の血と肉を欲しそうに待っています。ウァズワース様の言う通り、森の入り口に我々でバリケードを作ったのは正解でしたね。」

「恐らくエイブラムが新しい雑魚を寄こしたのだろう。まだ伝説の生き物の証拠も掴めていないし、邪魔をされては困る。」

そう言うとウァズワースは森の中に入って行く。

「どれ、少し遊んでやるか?」

ウァズワースは森で待つ狼たちの元に進んでいく。


つづく。

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