第3話 ある日の夜です! (3)

 だから僕は、自身の車を置いてある駐車場へと向かう淑女のお姉さま達に、自身の両手を大きく振りながら。


「みなさんも、気をつけて帰ってくださいね~。特に今年は雪もなく暖かい日が続くから~。獣達も冬眠をしないでいるかもなので~? 急に道路を飛び出して横断するかも知れないので気をつけてください~」


 僕はこんな感じで、黄色い声色での労いの言葉をくれた淑女のお姉さま達へと、声を大にして叫びながら労いの言葉を告げた。


 するとさぁ~、こんな中国山地の山に囲まれた山里の、農協の購買部で僕が声を大にして叫んだものだから。


 僕の労いの言葉が『山彦』のように何度も響き返ってきたのだよ。多々ね。


 それを聞いた淑女のお姉さま達も振り返り、僕へと手を振ってくれた。


 多分淑女のお姉さま達も僕と一緒で笑みを浮かべながらだと思う。


 でもお互いが漆黒の闇の中にいるものだから、顔の様子はお互い確認できない。


「お兄さんも気をつけて帰るようにね~。でも~? お兄さんは若くて可愛い顔をしているから~。物の怪様に婿にするからと連れ去られないように気をつけて帰るようにね~。だからとっとと早く片付けて帰宅をするように~」


 僕に手を振りサヨナラと、車で事故をしないと告げてくる淑女のお姉さま達──。


 彼女等に自身の頭を何度も下げお礼を告げる僕に大変に不可解な言葉を告げてきた。


 物の怪さまに連れ去られて、神隠しに遭わないようにと。


 だから僕は、『お姉さま達、どう言うことですか?』と、本来訊ねたいのだが。思い留まった。


 だって、淑女のお姉さま達の帰宅の邪魔をするようになる。彼女達は僕とは違い、自宅には首を長くして待つ家族がいるのだから、早く帰宅をしないといけない。

 だから、早急に帰宅の途につくお姉さま達の邪魔をするのはいけないと思うから、訊ねることはやめて。


「は、はい。ありがとうございます~。僕も危ないので早く片づけを終わらせて、帰宅の途につくようにしますから~。お姉さん達も気をつけて帰宅をしてくださいね~」


 帰宅の途につく、淑女のお姉さま達へと、こんなお礼の言葉を告げた。


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