ペン先の向く方向

にゅーろんΩ

ペン

 檸檬が爆弾ならばこの手の中にあるペンはミサイルに違いない。

 思えばこの先の尖った形状も、中に黒鉛が詰まっている構造も、何かを書くためではなく、何かを破壊するために生まれてきたに違いないのだ。

 それをこちらの勝手な都合で、筆記具として使っていただけなのだ。そう思うと無性に愛着が湧いた。

 僕は積み上げた教科書にペンを立てかけた。即席の発射台だ。

 そして消しゴムを取り出した――そうだ、これはスイッチなのだ。擦れて、削れて、形を失った、うす汚れた白い樹脂。この樹脂の腹を強く押し込めば、ミサイルが発射され、それは成層圏を超え、中間圏で幾億に分岐して、地上に降り注ぐのだ。

 今度は、消しゴムの丸みを帯びた形状とその肌触りが手に馴染む気がした。

 ――押そうかな。どうしようかな。

 僕はミサイルが降り注いだあとの、なんにも無い世界を夢想した。それだけで、なんだか嘘みたいに救われた。

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