最終章

プロローグ

 昼下がり頃、屋敷にて大広間のソファーに寝転がっていた。今日から三日ほどクレアが内に滞在する。レティシアは彼女に取られてしまった。


 例の計画について深い思考の渦に潜り込んでいた所を、肩を叩かれ引きずり上げられる。迷惑だと目で訴えながら、背後にニヤニヤとするクレイグを見る。


「どうした?」


「くくく、実はですね、あははは!」


 何が愉快なのか台詞の間に笑いを挟み、そして笑っていた。面倒に思いつつも気がすむまで笑わせてろうと、口は出さずに用件を吐くまで待つ事にした。これだけ勿体ぶり笑い声を撒き散らすのだから、よっぽどの朗報なのだろう。


「明日クレアと出かける約束したんですよ!」


 別にクレアに嫌われている訳では無いし、というか寧ろ快く思われているのだから、空気を読んで誘えばデートくらいしてくれただろうに。「そんなことで邪魔すんじゃねぇ」と言ってみたが、顛末が気にならなくもない。なにより珍しい。


「明日は雨かもなぁ……」


「それは困るんで止めてください。あ、天気悪かったら変えて下さい」


「いやだ。自分でやれ」


「まぁ、明日の予報は晴れだったし余計な心配ですけどね! それじゃ、蔵書整理が残ってるんで」


 グダグダと面倒臭がり、溜まっていた蔵書整理の仕事を自主的にやるとは。相当嬉しいのだろう。別にデートは初めてでは無いのだし、あれほど浮かれるものだろうか。


 ボフッと再びソファーに横たわる。


「急げよ、エルフィ」


 この場にはいないが、地下深くで奮闘するダンジョンの名を焦燥と共に呟いた。


 翌日、雨は降らず天気は快晴。

 しかしながら、セルニーは小さな地震に襲われた。

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