哀しく、色鮮やかで、温かい

最愛の妻の死をきっかけに自らの過去を振り返る、というどこか哀しい物語の本作。ただ、その過程で創り出される幻想的な雰囲気は素晴らしいの一言でした。

ストーリーの時間軸は激しく行き来しますし、色とりどりの魚達に導かれていくうちに一体何が本当の出来事なのかが段々とわからなくなってきます。ただ、絵画や工芸などの要素が散りばめられた洗練された雰囲気が、そんな風にストーリーに振り回されることさえ心地よいと感じさせてくれるようでした。

そして、最終的には過去を見つめ直し…………という流れは、なんていうか、本当、こういうの読みたかったんですよ、ずっと。喜怒哀楽ではまさに「哀」の物語で、個人的にツボ過ぎて感謝でいっぱいになりました。

はぁ……、こういうの、書けるようになりたい。

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