天使が殺せるものならば。

いある

第1話 出会いはいつだって唐突に

 夏の到来を告げる蝉の声がうるさいくらいにそこら中に響きわたっている。青い空、白い雲、頬を撫でるそよ風。おおよそ読書をするという行為においては最高と呼んで差し支えない環境で、木陰に一人腰を下ろして、文字に目を走らせていた。

 俺の趣味は読書。本なら何でも好きだ。

 アガサクリスティやコナン・ドイルをはじめとする著名な推理小説作家の本も大好きだし、ホラー界隈、例えばスティーヴンキングやH・P・ラヴクラフトだったりという物書きの作品も好きだ。

 恋愛だって例外じゃない。ライトノベルなんかも独自の面白さがあっていいと思うし、漫画や雑誌だって読めば読むほど書き手の感情や込められた真意、読者に託した想いなんかが滲み出てくる。たとえそれが深読みだったとしても構わないし、その予想に対する真偽は正直どうでもいい。

 自分の中でピースを組み合わせて推理する。その行為が何事にも代えがたい興奮と感動を俺にもたらしてくれる。

 だから俺にはそれだけでよかった。決して神話や聖典なんかに興味がない訳じゃないが、それはあくまで伝説の上で存在する架空の存在として脳の片隅にいるだけで俺には十分だった。




 だってそっちの方が、神秘的だろ?


 そんな俺の前に現れたのは、俺にという、純白のワンピ―スを纏った手折れそうなほどに華奢な、美少女だった。

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