第11話 恋愛シミュレーション


「よし!」

 私は鏡に向かって気合いを入れた。準備は完璧だ。

 お兄ちゃんとのデート……もとい取材の為に慎重に服を選ぶ。


「これなら大丈夫……だよね?」

 ようやく着る服を選び終わった頃にはすでに外はうっすらと明るくなっていた。


◈◈◈


 高校1年の妹、高校2年の兄、そして両親の4人家族。

 両親は自営業、夫婦で喫茶店を経営しており、いつも朝早く夜遅くまで働いている。

 妹の名前は菜々美、兄に対して我儘ばかり言っているが、実は大好きでいつもイチャイチャしたいと思って……いる?

 兄の名前は翔環とわ、妹の事が大好きで、可愛い妹の我儘はなんでも聞いちゃう優しい……お兄ちゃん……くっ。

 

 高校生になり、お兄ちゃんと同じ学校に通う様になった菜々美は、学校で見てしまった。凄く仲良くクラスメイトの女子と話しているお兄ちゃんの姿を……ぷぷぷ。


 菜々美はお兄ちゃんに尋ねた。「好きな人居るの?」と……

 お兄ちゃんは答える。「いや、いないよ」……えへへ。


 更に菜々美はお兄ちゃんに突っ込む。

「彼女とか作る気無いの?」


「それは……欲しいけど……でも……女子と、女の子と、どう接して良いか……」オタクだったお兄ちゃん、エッチな本での知識しかないので、どう踏み込んで良いか、どこまで接して良いかわからないという……あはは。


「……じゃあ…………私が……教えてあげようか?」


「え?」

 そして始まる二人の恋愛ごっこ…………はうう。


 これが私の書いている漫画、第1話目……恥ずかしいいいいい


 あくまでも、あくまでも作り話だからね! そんな事これっぽっちも思った事なんて…………無いんだからね! 勘違いしないでよね!


 誰に言ってるんだ私は……


 そして兄妹はとりあえずリビングでイチャイチャしてみる。仮想恋愛ごっこ……恋人の振り……よくあるパターン……


 最後にキス……と思いきやここで菜々美は言った。


「ダメ……」


「あ、ご、ごめん……」


「ここじゃ……ダメ……だよ」


「え?」


 そして二人は翌日デートに出かける。


 前回はここまで……ああああああああ、恥ずかしい……


 だって……だってだって……これって半分実話なんだから……お兄ちゃんは覚えてないかも知れないけど……子供の頃、おままごとで色々なシチュエーションに混ぜてやったの……これ……お兄ちゃんと……恋愛ごっこ……


 だから描けるの、あの時の事を思い出せば……恥ずかしい恥ずかしい私の思い出……ううう……恥か死ぬううううう……


 でも……でも良いの、そういう物なんだから、作家や漫画家なんて、皆変態なんだから! 自分の妄想や思い出を全国、いや、全世界に発表しちゃう、出来ちゃう露出狂の変態さんばかりなんだから!!


 私だけじゃ無いんだからああああああ……

 プロとしては当然の事……


 それでここまではいい、問題はここから……お兄ちゃんとのデートシーン。

 お兄ちゃんと二人きりで出かけた事って……今まで一度も無い。


 ……買い物に行ったりとかはあるけど、二人きりでどこかに行く、つまりデートなんてあり得ない……まあ……ちょっとは行ってみたいって思った事はあるけど……ちょっとよ、ちょっと、だって女友達とは行けない場所とかあるでしょ? え? どこって? ………………言えるかあああ! とにかくあるの!


 そして今日はその取材、プロット作りの為に仕方なくお兄ちゃんに付き合って貰う……仕方なくね。

 

 今日の行き先は…………お兄ちゃんが決めていればそこへ……



 そうじゃなければ何かで時間を潰して最後はホテル……いやいや違うよ、ラブなんとかじゃないよ!

 

 シティホテルだからね! とりあえず夕方に食事をしにそのホテルへ


 ディナーを食べそしてチェックイン…………はうう。


 ちが、違うから、想像するだけだから……でも……もしお兄ちゃんが…………ってないない、お兄ちゃんが私にとか、あり得ないから。大丈夫大丈夫。


 ちなみにホテルは予約済み、実の兄妹なんだから高校生でも問題なし。そしてお母さんには「今日ドームでコンサートがあってその後皆で食事会があるの。結構遅くなるから1泊するね、お兄ちゃんにボディーガードとして来て貰うから大丈夫」って言ってある。 完璧! え? お金? ふふふこれでもプロだからね!


 あ、ちなみにお兄ちゃんには泊まる事は内緒……だって……変な考え持たれたら困るから……私が最初から泊まる予定だったって……なんかね。


 とりあえず、何かしら理由を付けて急遽泊まる事にすれば良いよね?


 よし、とりあえずお兄ちゃんの計画に合わせて最終的にはホテルに誘導、これで決まり!

 

 さあ、とりあえず寝ないと、時間が………………ああああああああああああ!


 え? もうこんな時間? え? いつの間に? まずい、時間が無い!

 

 髪をセットしてお化粧もしないと、ええええ時間がないいいい。

 

 私は一睡もしないでベットから飛び起き用意していた服を着て髪の毛のセットと化粧に取りかかる。


「ふええええええええん、クマが目の下にクマがあああ、折角のお兄ちゃんとのデートなのにいいいいい」


 ち、違う、た、楽しみだったわけじゃ無いんだからね! 心配だったからなんだからね!! 



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