Call!Call!Call! メリーさんはオトモダチ

餅の種

CaII0 プロローグ



 夜の闇に重苦しさを感じたのは、これが初めてかもしれない。


 真夜中の教室……深夜一時五十九分。


 肌を滑り落ちる汗の冷たさと粘りつくような静寂の空気は、私がここに一人でいることを自覚させる。


 光源は片手に握ったスマホだけ……。

 これでいい、これだけでいい。

 あと一分もない、深夜二時になれば真実が分かる。


 あの噂が本当なら、これで出会えるはずだ……『深夜二時のメリーさん』に。


 教室にかかった時計を見る。

 窓から入り込んでくる月明かりに照らされて、秒針が一秒ずつ時を刻む。

 深夜二時まで後……五、四、三……。


「……!」 


 深夜二時、ちょうどの時間。

 手に持ったスマホが震え、びくりと心臓がはねあがる。

 軽快な着信音の中で画面を確認すると、非通知の電話がそこにかかってきていた。


 心臓が竦み、本当なのかとか、ありえないという考えが思考を過るけれど……混乱しそうになる考えを押し留め、自分の目的のために、勇気を振り絞り画面をタップする。


(私の、目的は……)



『もしもし、わたしメリーさん、いま校門にいるの』



 スマホの向こうから聞こえた女の子の声……それに息が詰まりそうになるけれど。それでも私は、その言葉を告げるために口を開く。



「めり、メリーさん!」



 緊張で震える声を噛み殺し……。

 はっきりと、続く言葉を彼女に伝えた。



「私と友達になってください!!」



 ――私のその言葉に、ふふ、と小さく笑ったメリーさんの声は、今でも耳に残っている――



 それが、彼女との最初の出会い。

 今思い返せば懐かしい、始まりの日。



 これはきっと怪奇譚じゃない。


 奇妙で、不思議で、少し壊れた彼女との……懐かしい想い出話だ。

 



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



〈〈〈Call!Call!Call!〉〉〉


~メリーさんはオトモダチ~


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




TEL XXX―XXXX―001

深夜二時のメリーさん




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