第6話 剛造

 「うっ、うわぁぁぁぁーー!!!、ご、剛造さーん!剛造さーーーん!!!」

 気がつくと僕は叫び続けていた。

「くっそー。なんやねんあいつ!左腕持ってかれてもーたやんけ!」

「剛造さん、早くっ!早く逃げてーー!」

 僕はその場に立ちすくみ、一歩も動けないでいた。

 数分前まであんなに力強く思えた剛造さんの背中が小さく見える。

 一瞬、たった一瞬の出来事であった。


 キャスト後すぐに姿を現した怪物。その怪物に剛造さんが鍛えあげた、ゴーゾースティックは一瞬で粉砕された。

「さ、さぶろーー!逃げろーー!」

 僕は剛造さんに突き飛ばされた。

 ガバッガバッガバッ!

 グワッシィィ!!!

「ぐわぁぁぁぁ!!!」

 僕を庇い剛造さんは怪物に左腕を食いちぎられた。

 剛造さんの血飛沫がまう。スローモーションのように時が流れた。


「くっそっー情報と全然ちゃうやんけ…、足生えて陸に上がれるなんて聞いてへんで…。」


 剛造さんは弱々しく呟いた。


「剛造さん、逃げて下さい!早く!」


「アカン…、さっきの攻撃で両足骨折してもーた…、さぶろーー!お前だけでも逃げろっ!」


「僕一人だけ逃げるわけには、いきません!剛造さんがこうなったのは僕のせいだ…。」


「アホー!なにゆーてんねん!お前にはまだ大事な仕事が残っとる!お前はこの事を俺の仲間に伝えてくれ!」


「剛造さんを見殺しになんてできません!」


「あっかん!またやつがきた。さぶろーー!頼んだぞー!仲間に、ライギョマン達にこのことを伝えてく……。」


「うっ、うわぁぁぁぁ!!!!!!」


 僕の目の前で剛造さんは、怪物に頭を食べられた…。

 

 僕のせいだ、僕のせいだぁぁぁ!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る