13話

 朝、起きたら家には誰も居なかった。

 今日は平日

 みんな既に学校や仕事に行っている。

 当然だが食卓に私の分のご飯はない。

 代わりにあるのは朝使ったと思われるお皿やお箸、それにコップだ。

 朝、時間がないのは分かる。

 しかも私が体調不良で朝ごはんの用意ができなかったから余計に時間がなかったのだろう。

 それでも、だ。

 「せめて水につけるぐらいはしてよ」

 熱を測るとまだ微熱ではあるが昨日よりかは下がっていた。

 私は溜息をついて三人分の朝食を片付けた。

 脱衣場には昨日の分の洗濯が溜まっている。

 まだ体には倦怠感が残っている。

 それでもしなければきっと洗濯物が溜まってしまうだろう。

 母は家事が苦手だ。

 そして苦手なことはしないのが母の主義だ。

 私は服のタグを確認して仕分け、洗濯機に放り込む。

 食事はする気が起きなかったので食べなかった。

 ピンポーン

 呼び鈴が鳴ったので出てみると・・・・。

 「・・・・店長」

 「ごめん、寝てた?」

 「いいえ。でも、どうしたんですか?」

 「ちょっと心配で様子を見に来た」

 「お店は」

 「今日は休みにしてる」

 「そうですか。ご迷惑をおかけしてすみません。

 それと、昨日は送って頂きありがとうございました」

 「あまり無理をしちゃダメだよ」

 「はい」

 「ご家族の方は?」

 「・・・・・仕事に行っています」

 「・・・・そう」

 昨日、母は店長にどういう態度を取ったのだろうか?

 体の怠さとかでそこまで頭が回ってなかったけど、おかしな態度は取ってないよね。

 「ご飯は?」

 「まだ食べてません」

 「だと思っていろいろ買って来た」

 そう言って店長が掲げたスーパーの袋にはヨーグルト、ゼリー、お豆腐、スポーツ飲料や食材、果物、熱さましなどが入っていた。

 立ち話も何なので私は店長を部屋の中に入れた。

 「何か食べれる?お粥でも作ろうか?」

 「いいえ。あの、では、セリーを頂いてもよろしいですか?」

 「ああ」

 あまり食欲がないのでヨーグルトうあゼリーは有難かった。

 私は店長から受け取りゼリーを食べた。

 つるんとしたのど越しが心地よくて食べることができた。

 「っ」

 不意に店長の手が私の額、頬、首元に触れた。

 思ったよりも店長の顏が間近に会って驚いた。

 心臓もバクバクしてうるさい。

 私に触れる店長の手から体温が伝わって来て、下がったはずの熱が再発しそうだ。

 「昨日よりは大分いいけど、まだ少しあるね。

 ご両親はいつ帰るの?」

 「一八時以降には。妹の由利は一七時ぐらいに帰ってくると思います」

 「じゃあ、それまでは俺が居るから。遠慮なく使って」

 「いいえ、そこまでご迷惑をかけるわけには」

 「迷惑じゃないよ。俺がそうしたいだけ。ダメ?」

 「・・・・いいえ」

 「じゃあ、決まり。起きてると体に悪いから部屋に行って横になろう」

 「はい」

 「もしつらないなら俺が抱えて部屋まで運ぶけど」

 「いいえ」

 抱えるって、抱えるって何!?

 そんな恥ずかしいことされると心臓が破裂する。

 「そう。それは残念」

 店長は本当に残念そうな顔をした。

 天然って怖い。

 店長は結局、由利が帰ってくれるまで家に居て私の看病をしてくれた。

 思えば、具合の悪い時にこうやって誰かが傍に居てくれたことも、こうやって看病してくれるのも初めてのことだった。

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