第2章 1話

今年から高校生になった。

私は高校を卒業したら独り暮らしをしたいのでアルバイトのできる高校であり、また自分にその余裕を作る為に自分の行ける高校よりもワンランク下げた高校を選んだ。

母は「馬鹿なあんたには所詮はその程度ね」と言った。

ただの一度も私の成績表を見たことがないのに。

でも、いい。

後は三年の我慢だから。

因みにだが柚利は私よりも下の高校を選んでいる。

それでも母の中では私は馬鹿な子なのだろう。

「おはよう、柚利愛」

「おっはよぉ。#緋紅__るーじゅ__#」

私の通う高校は地元からかなり離れている。

だから知らない人ばかり。

誰も私を知らない人の中で私は『私』という存在を作り上げた。

明るくて、冗談が好きで、でもちょっぴり辛口。

一番の敵は女子だから、女子に好かれる人を演じる。

ノリの大好きな軽い女の子

自分ではない誰かを演じるのは正直、キツイ。

でも、上手く擬態する。

これで暗い学校生活とはお別れだ。

そう、願って。

多くは望まない。

ただ、平穏な毎日が欲しい。

「ねぇ、柚利愛。宿題して来た?」

「・・・・して来たよ」

またか。と、内心思った。

でも決して顔には出さない。

「やった。やっぱり持つべきものは友達だよね」

「緋紅、ちょーし良すぎ」

笑って受け流す。

分かっている。

これは私の望んでいる友達関係ではない。

ただ良いように使われているだけ。

でも、それの何が悪い?

虐められるよりよっぽど良いじゃないか。

人間関係なんて希薄で良い。

だってその方が楽だし、それに今時の人間関係なんてそんなものでしょ。

みんな、表で笑って、友達のふりをしながら影で貶す。

なら、人間関係なんてこんなもので良い。

何事もなく過ごすことが私の目標だ。


私は緋紅と馬鹿な話しをして、馬鹿笑いしながら教室に入った。

きっと小学校や中学の友達が見たら驚くだろうね。

本人だって気づかないかも。

髪のことはまだ言われている。

特に真面目な生徒や女性教師や頭の固い年配の教師に。

でも言うことなんて聞かない。

だって聞いたところでメリット何かないもん。

私の言うことを聞いてはくれないのにどうして私が言うことを聞かないといけないの?

先生ってそんなに偉いの?

先に生まれてきただけじゃない。

私よりも多く生きているのにアルビノに対する理解がないなんて知能も精神も子供じゃない。

だから期待しない。

同じ子供だから。

私は自分の身は自分で守る。

これはその為の鎧

「ねぇ、ねぇ、今日さカラオケして帰らない?」

緋紅が私を誘ってきた。

「ごっめーん、今日はバイト」

「えぇっ。またぁ」

「ごめん、ごめん。今度埋め合わせするから」

「もう、仕方がないな」

「ちょっと、あなた達!」

怒鳴るような声が私達を呼んだ。

視線を向けるとお下げをしてメガネをかけた、真面目を絵に描いたような女子が睨むようにして私達を見ていた。

彼女はクラス委員長の#辻本可奈__つじもとかな__#だ。

「校則で寄り道は禁止されてるわよ」

「そんなの守ってる人間なんて委員長ぐらいだよ」

うるさいなと、緋紅は溜め息をつきながら言った。

「仮にそうだとしても堂々と破って良いわけがないでしょっ!」

委員長の勢いは止まらない。

緋紅の機嫌もますます急下降していく。

「委員長、私達は寄り道しないからその辺で矛を収めてくれない」

 私がそう言うと委員長はギッと私を睨みつけた。

 「神山さん、私は入学してから既に何十回も言っているけど、そのふざけた頭をなんとかしないさい」

 「私も何度も言っているけどこれは地毛よ。

 証明書だってあるわ」

 毎度のことながら何の役にも立たないただの紙切れだけど。

 「そういうのを差別って言うのよ。

 不快な思いをさせたのはこれでお互い様ね。

 もういいかしら。

 私達、結構注目を浴びているわよ」

 入学してから一か月

 真面目で頑固一徹の委員長はいろんな意味で目立っているし周りから敬遠されている。

 「明日には必ず元の髪に戻しておきなさいよ」

 そう言って委員長は自分の席に戻って行った。

 戻すも何も地毛なんだけどね。

 「何よ、あれ。きっと嫉妬してんのよ。

 受験の時、柚利愛。一位だったんでしょう。

 入学式の挨拶してたもんね。あれって首席がするものでしょう。

 噂だけで委員長は二位だったらしいよ」

 「受験の成績を何で知っているの?」

 「成績を知っているって言うか、万が一あんたが休んだ時の為ように委員長も挨拶の練習をしてたんだって。

 そういうのって次席がするもんでしょ。

 私の知り合いの先輩がそう言ってたの」

 「へぇ」

 だからって突っかかられても困るけど。

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