bench time 第5話

朝晩の冷え込みが紅葉を彩る。麓は、まだ緑が多いが上に行く程、様々な樹木が葉を色付ける。夏は暑さで冬は寒さで季節を感じ、春は新緑、秋は紅葉と 目で季節を感じる。

山あいの渓谷。道沿いに真っ赤な楓の葉が、せり出している。

真っ黄色なイチョウの葉が道に散らばり素敵な色の共演。そんな優雅でもあり侘び寂びをも感じさせる景色。

そんな景色は二の次の車内の面々。いつものメンバーなのに飽きずに、たわいも無い話が尽きない。

仕事が忙しいのは、変わらないが合間を縫って素敵な温泉一泊旅行。

考えてみたらキャンプの時は、農協の女の子2人が一緒だったので、この4人だけでの旅行は初めてかも。

もはや、遠慮も歳の差も関係無い間柄。


ユウさんの大きな車でゆったり4人旅。少し遠出になる為、休憩を挟みつつ運転手も変わりつつ。ただ、後ろの席に陣取っているカオリさんはアキさんを手放そうとせず。

アキさんが運転しようとしても駄目、ずっと後ろの席で軟禁されたアキさんが少し気の毒だった。

カオリさん、とうとう力技っすか?


ユウさんやアキさんでもあまり行かない所だったので、休憩の度に皆んなで記念撮影をした。何処で撮っても綺麗な紅葉が写りこんでいた。

小さめな温泉街。3、4軒の渋めの温泉宿が固まっていたが、目的の宿はそこから離れた一軒宿。とはいえ新しい宿で、シンプルだか高級感のある宿だった。

広い敷地で川もあり、せせらぎが聞こえていた。宿と言ってもホテルの様なシックで高級感漂う館内。デザイン性が高いソファや椅子が置かれ大きな一枚窓からは、かなり色付いた山々と広い庭に植えられたモミジが絵画の様だった。


部屋もお洒落。勿論それなりの料金がするが、カオリさんの希望 100%!の宿なので

我々は何も言えない。贅沢に2部屋取り、とりあえず部屋で一服。静かな山の中で紅葉を見ながらお茶を啜る。


まだ部屋でゆっくりするのも早いので、皆んなで庭を散歩。少し夕陽に染まりだした空の下、綺麗に整備された庭の散策路を歩く。

赤、黄、橙、緑とちょうど紅葉が揃った木々の前で皆んなで写真を撮る。木々のコントラストと皆の表情がとても良い一枚になった。

夕陽が沈むのが早く冷たい空気が漂う。


宿に戻り、夕食前にお風呂へ。

無論お風呂も綺麗。ゆったり浸かり微かに残る夕映えと紅葉を見ながら、この旅行の本分を全うした。

何気なく言った 『この時期は紅葉見ながらの温泉』 の言葉が、実現でき感無量だった。仕事が忙しかった中での温泉旅行! より疲れが取れリフレッシュするには最高だった。混浴露天風呂も覗いてみる…… 男の人だけ…… ちっ。


風呂上がり早めではあるが夕食。食事をする場所は、別の所。でも個室の様になっていてゆっくり食事が出来そうな感じ。

既に夕食が、並べられていて…… 豪華です。

流石、それなりの料金がする宿。


早速座る。腹減った〜〜

ん? カオリさんが、まだか〜〜 お預け状態!


「お待たせ〜〜 」カオリさんが来た。


う! ヤバい。浴衣を着て髪をまとめ、ほぼすっぴん (すっぴんでは無いと思うが) 。

今迄、見たことない感じでキュンとした。


「カオリすっぴん? 」ユウさんが訊く。


「な訳ないでしょ。この歳で。限りなく薄いスーパーナチュラルメイク⁈ 」

カオリさんが何故かポーズをとりながら言った。

「カオリちゃん、すっぴんでも綺麗だと思うからメイクしなくても大丈夫だよ」

アキさんが、サラっと言った。


「きゃ〜〜 ねぇ聞いた? 今の言葉? 愛の言葉だよね! ん? プロポーズに聞こえたかも」絶頂状態のカオリさん。


いやいや、愛の言葉じゃ無いし、どう考えてもプロポーズじゃないっす。

しっかりしてください? カオリさん!

のぼせましたか? カオリさん!


ここからはユウさんとカオリさんの本分。

食とお酒!

見た目だけでなく美味しい料理、風呂上がりでお酒も美味しい。大人4人が、はしゃぎながら楽しい夕食をとった。

食事の時、楽しすぎてテンションが上がったせいか、後で皆んなで混浴露天風呂に行く事に。カオリさんも。


少しマッタリした時間を過ごし、露天風呂へ。混浴露天風呂は広めに作られていた。

ちょっとドキドキしながら……

既にカップルが入っていたが、夜で暗く湯気が立ち昇っていたので余り気にならなかった。山の中の一軒宿、流石に夜は冷たい空気だった。おかげで湯気が…… くそっ!


なんとなく女風呂の方から誰か来る感じ。

「アキさん〜〜 アキさんどこ? 」

心細い声でカオリさんが、湯気で見づらい湯船を浸かりながらやって来た。

「ここ! こっち! 」アキさんが優しくエスコート。

カオリさんはアキさんを見つけるとアキさんの背中に隠れる様に……

「えろマコ! 見んなよ! エロい目で! 」


いきなり牽制ですか? 大丈夫です。湯気で見えません、うっすらしか。

ただ、湯浴みを着ていたが肩まで出てた姿と一緒のお風呂と言う事で…… う〜ん。

始めは恥ずかしがってたカオリさんも自分達も次第に慣れ、意外に普通に温泉をみんなで楽しんだ。

まぁ、あの夜空を見てたら恥ずかしさも変な欲望も忘れてしまう位、綺麗な星空だった。顔には冷たい空気が当たり、いつまでも入っていられる感じだった。


その後は、部屋に戻り二次会的な飲み直し。ユウさんとカオリさんが本領発揮!

露天風呂では、お淑やかだったカオリさんは、いつものカオリさんに。

ユウさんも下ネタ満載のオヤジモードに。

アキさんもカオリさんに常に寄り添われながらも、久々にお酒が進んでた。

そういえば最近、余りアキさん飲んでなかったな。体の事考えて抑えていたんだろうな。そんな事を少し考えていたが、女王様からお酒を賜わる。


すっかりユウさんとカオリさんは、べろべろで寝てしまった。2人とも浴衣が、はだけて…… そういえばカオリさん、私の はだけた浴衣想像してとか言ってたけど…… ごめんなさい。あまり興奮しないっす。それまでの過程を見てるんで。ただの酔っ払いにしか見えません!

アキさんはそんなカオリさんを抱え布団に入れ、はだけた浴衣を整えてあげていた。

ユウさんは、重そうなので自分が布団を掛けてあげた。


アキさんと2人、そっと部屋を出て本来 カオリさんとアキさんが寝る部屋に行った。


結構自分もアキさんもお酒飲んだのに意外と、しっかりしていた。

そのせいかアキさんが少し話を始めた。

アキさんの過去の事を……



第5章 終

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