kneading 第6話

カオリさんも無事、見返りを頂いたらしくご機嫌な雰囲気。


自分 (マコト) も平穏な日々が過ぎ、仕事も遊びも充実。

すっかりこの街にも馴染み馴染まれ、この小さな街に思い切って飛び込んで良かったと実感する毎日。


と、思い切って飛び込んで来た人物がもう1人。

見かけも話し方も全てが軽そう〜〜 な人物が会社にやってきた。


信用金庫の人。


この小さな街ではウチの会社は割と有名。新しく転勤で、こちらの信用金庫の

支店にやって来たと言う人物が、挨拶がてら会社を回っていた。


「銀行の人っぽくない奴が、来たな〜〜 」

同僚がボソッと。


確かに信用金庫のイメージに結びつかない人。調子いい人という言葉がぴったりの人だった。何だか難しい名前をしていて覚えられなかったので、(信金さん) と呼ぶことにした。あまり関わりたくないタイプだが、フットワークが良すぎる信金さん。ちょこちょこ関わるハメになる。まぁ歳上なのは分かるがアキさんやユウさんよりも歳上の人だった事には、驚いた。


その晩。会社の同僚とユウさんの店 [ピッグペン] に行った。


が、何か変?


ユウさんが明らかに元気が無いというか、いつもとは違った。

「どうしたんすか? 体調でも悪いんすか? 」

「んー、大丈夫」ユウさんにしては、言葉少な。

気になった。


会社の人と一緒なので奥のテーブル席に座り静かに飲む事にした。

カウンターには若い女性が1人。

見覚えのある娘。

「あれ、蜃気楼の子だねーー 。休みか? 蜃気楼? 」同僚が言った。

[蜃気楼] は、スナックの名前。会社の飲み会で何度か行った事がある上司のお気に入りの店。

この街では珍しい若い娘。20代前半。

年季の入ったスナックのママや女性が多い中、若い娘はある意味人気者だった。


その娘がカウンターに1人、んっ? ユウさんと何か関係あるのか?と、一瞬よぎったがその娘は携帯をずっと操作してるだけだし、ユウさんもその娘とは関係無さそうな感じで仕事をしていた。


割と静かな感じの店の中だったが、店の扉が開いたと同時に賑やかな連中が、なだれ込んで来た。


フットワークが軽い、見た目も軽い、話し方も軽い信金さん達だった。

信金さんの歓迎会なのか、賑やかだった。無論、1番賑やかなのは歓迎会の主賓の信金さんだった。


少し経ち、信金さんがカウンターへ。

何やら怪しい動き。

カウンターに座ってた [蜃気楼] の娘に、何やら絡んでる。

[蜃気楼] の娘も若いせいか、口が悪い。


やっぱり信金さんは軽い人なのねーー と同僚と、ほくそ笑みながらその様子を見ていた。


「ウザイって、オッサン! 」


いきなりその娘が声をあげた。

突然の罵倒に信金さんもキレ出した。


「うわ! やばくないっすか? 」

ヘタレの自分がビビりながらも同僚に言った。

「うわーー 信金さん、酒癖わるいのか? 」

同僚が呆れ顔で言った。

信金さんと来た人達も慌てて、なだめだす。

酔って更に口が軽くなってる信金さんが、止まらない。グダグタ言い続けた時、ユウさんが一喝!


「帰れよ! ウチの店で…… 全く! 他に客いるのに迷惑だろ! 」


自分は初めて見るユウさんの凄味。


その言葉に焦った様子で信金さん御一行は店を出て行った。


ユウさんがカウンターの娘に

「悪かったな。大丈夫か? 」と声を掛けていた。

それから直ぐに自分達の所へ来て

「悪りーね。気分悪くしちゃったね。今日のお代はいらないから。ごめんね」


「いや、大丈夫っすよ」

元気が無かったユウさんだけに余計心配になった。


「あの子さーー 蜃気楼で働いてる子だけどさーー 。俺の奥さんの親戚なんだよ。だからちょっとイラっとしちゃった。マスターとして失格だねーー 帰れって! 」


ユウさんが元気無かったのは奥さんと大揉めしたせいらしい。 [蜃気楼] の娘が来てたのは2人の事 (ユウさんと奥さん) が心配になって来たらしい。


夫婦って…… 大変なんだな……

ヘタレなマコちゃん 33歳 結婚の現実を垣間見る。同時に重みある男を目指す。


第6章 終

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