けものフレンズ~Story of God Island~

みずかん

第一話 神の島


「ここが・・・、僕達のキョウシュウですか・・・?」


「ソウダヨ」


ラッキーがそう肯定したのだから、そうなのだろう。

だが、僕の目の前にあるのは、穏やかなこの地に大きな違和感を生む

高層ビル群だった。


「すっごーい・・・。めっちゃ変わってるよ!」


「すごく、ピカピカしてるのだ...」


「・・・」


他の三人も目を丸くしていた。




対岸に付き上陸するなり、誰かがこちらへ向かって走って来た。


「あれは・・・」


「かばんさんっ!!みなさん!!」


走って来たのは...


「ビーバー!」


「これを早くっ!!」


「えっ?」


僕は彼女にキラキラした石を渡された。


「何ですか・・・?これ・・・」


「それは七色のキセキセキですっ!!とにかくそれを大事に...」


そう話している時だった。



「アウッ...」


急にビーバーは短く声を出し、前に倒れたのだった。


「ビ、ビーバーさん!?」


「どうしたのっ!?」


「な、何が起こってるのだ・・・?」


「...」


突然の出来事に騒然した。




次の瞬間、ビーバーは地を擦りながら後ろに引っ張られた。

開いた口が塞がらない。



「久しぶりだねぇ!かばん達!」


僕たちの目の前に現れ、ビーバーの襟を掴んでいたのは


「イワビーさん...?」



「な、なにしてるのっ...!?」


サーバルが叫んだ。



「泥棒を捕まえただけだって。

ところでその石、返してくれないかな?俺たち友達だろ?」



「・・・、事情がよくわかりませんが、返しません。

一体ビーバーさんに何をしたんですか!!」



「何をしたかって...、これを当てただけだぜ?」


片手でポンポンと宙に上げたのは、小石だった。


「あっ、そうか。君らは知らないのか。

なら好都合だ。見せてやるよ」



得意気に笑った。



「うがあああああああっ!!」


突如、ビーバーの様子が急変した。


「があっ!?あ゛あ゛っ゛!!」


空間が裂けそうなくらいの叫び声を出した。

そして、彼女は項垂れてしまった。


それを捨てるかの如く、ポイと、砂浜に乱雑に離した。




「俺の能力...、アイツの体の中に岩を大量に出した。

多分死んだんじゃないか?ロックだろ?」



「い、岩・・・」


僕は愕然とした。


「ひどいっ!!なんでそんなことを!!」


サーバルは怒りを露わにしている。


「ひどいも何も...、マニュアルに乗っ取ってやってるだけだぜ?」


ヘラヘラと笑う。


「フレンズを...!!サイテーな奴なのだ!!」


「流石に、癪に障るね」




「さあ...、早くその石を返してくれよ。どうなるか分かっただろ?」



「他のフレンズさんを酷い目に合わせるなんてっ...!

ぺパプの皆さんは優しかったはずです!!」


僕はムキになって言った。


「ぺパプ...、ああ、もうぺパプはないよ。解散した」


「か、解散...」


「今は"神の島計画"に乗ってるだけだ...。

もうお話の時間は終わりだぜ。返すか、返さないか。

かばん、あんたの答えはなんだ?」



唇を噛みしめた。

腹を括り、強い口調で言い放った。



「絶対に返しませんっ!!サーバルちゃん!」


僕はその4つの石をそれぞれ、他の三人に分担して渡した。




「ふーん...、残念だなあ。ロックに行かせてもらうぜ?」


右手を上げると、中くらいの岩が現れる。

それを一気にこちらへと飛ばしてきたのだ。



「うわっ!!!」


パリンッと、何かが砕ける音がした。


「ラ、ラッキーさん!?」


僕が気を取られている隙に、もう一発の小石を出現させ...

ヒュッ、と手を動かした。



「たえっ...」



「かばんちゃん...!」



「のだぁ...」



「うっ...」






「あはは、雑魚だなぁ...。

まあ、気を失わせるだけで大目に見てやるよ」




「ちょっと待って...」



「ん?」


その声の主は、フェネックだった。


「この石...、そんなに大切なの?」


「もちろん」


「...、私もアナタみたいな力ほしいな」


悪い顔を浮かべて見せた。


「マジ?」


しゃがんで、フェネックの顔色を窺った。


「私は方角もわかるし、この中じゃかばんさんに次いで、頭が良いと思うよ」


「能力を得る代わりに野生解放出来なくなるが」


「使ってないし、いいよ」


「・・・、その石に願うんだ。それだけ」


フェネックは立ち上がり、キセキセキを両手で包み込んだ。


(私の願い...、ここにいる皆を助けたい...、特に...)


手の中の石が光出した。


一瞬、視界が真っ白になった。






「あっ!?」



バーンっと、イワビーは後ろへ吹っ飛ばされた。



「なるほどね...」



その音で、僕は目覚めた。


「なに...、この音...、フェネックさん?」


砂を払いつつ、彼女の方を振り向くと...



「これが、能力かあ・・・」




(使えねークソ能力だと思ったんだが...

いや、もう一度確認だ...)


イワビーは岩を出現させ、自分の周囲に浮遊させた。

中くらいの大きさだ。




「かばんさん、下がってて...」


そう注意を促され、身を引いた。






彼女が手を振り下ろすと、一斉に岩が飛び、フェネックへ向かう。


飛んできた瞬間フェネックは手を伸ばす。


ボカーンと大きな爆発音がした。




「チッ...」


再度岩を出現させると、同時に、またフェネックは同じ動作をとる。


「...!!」


ボカーンと再び爆発音がし、煙に包まれた。


「フェ、フェネックさん...」




「ゲホッ...、ゲホッ...」


煙が晴れると、片腕で口元を防いだイワビーは煤けていた。


(やべー能力じゃねぇかよ...。これを知られたら...)



「アライさん、起きてっ!」


フェネックはアライさんを叩き起こす。


「のだぁ...」




(しかし、奴の能力の仕組みは一体・・・)


そこへ、もう一人フレンズが現れた。



「はぁ...、プレーリーを追いかけてたら遅くなっちゃって...

全速力で来たんだけど...、って、イワビー、なんでそんなに汚れてんの?」


「フェネックが能力を使いやがった」


「どうせ自分で能力を目覚めさせたんでしょ」


冷たい視線をイワビーに送った。


「ジェ、ジェーンさん...」



「どうも~、お久しぶり...!で、彼女の能力は?」


「ドカーンって感じだ」


イワビーが立ち上がると、再び岩を出現させた。


それをフェネックに向かい飛ばす。



ボカーンッ!!



黒煙と共に、岩が砕け散った。



「あー・・・。そんなこと」


「何がおかしいんだよ、ジェーン。

これのせいで俺の攻撃が一切通用しないんだぜ」


「私ならいけますよ」


ジェーンはフェネックに向かう。

しかし、普通の速さではない。


「は、早い!?」


フェネックは目を細め、右手を差し出す。


「フフッ、無駄ですよ」


素早い動きでフェネックの腹めがけ、殴った。


「うあっ...」




「フェネック!?」


ジェーンがフェネックに攻撃を仕掛けた刹那、その背後から...


「みゃああああっ!!」


飛び跳ねたサーバルが空中にいた。


「フフフッ!!」


愉快に笑った直後


「みゃっ...!?」


空中にいたサーバルは流星の様に地面に落下し、砂埃が舞った。



「サ、サーバルちゃん!!」



「口ほどにもないですね。

イワビーがオマヌケペンギンなだけですね、これは...」


クスクスと口元を抑え笑った。

そのまま、アライさんに目線を向ける。


「な、なにもしないからっ、やめてほしいのだ...」



僕は、ジェーンの攻撃を見て、ある一つの可能性が思い浮かんだ。


「...加速させてる」



「聡明なのは変わりないですね。流石です、かばんさん

その通り、私はあらゆる物体を加速させる事が出来るんですよ。

そして、フェネックの能力は無機物を爆発させる能力...

フフッ、無駄なんですよ。あなた方に勝つ術は無い」


「ああ、だから俺の岩が爆発したのかあ...」


うんうんと納得したように頷いた。




「早くなったからってなに...」


地に落下したサーバルが立ち上がった。


「あら...」


「私は...、ケンカはイヤだっ...

だけど、ケンカをする子はもっとイヤだっ...!!」


彼女の右手が光を放った。


「無駄なことがお好きなんですねぇ...、小憎たらしい」




「サーバルちゃん・・・」



「いい加減にしてよっ!!」


サーバルが立ち上がった瞬間、ジェーンの加速能力が発動する。

ひょいとジェーンが横に避けると、サーバルは走って海の方へ向かう。


「くっ...」


右足を前に出し、急停止する。


「いいぞ!ジェーン!!やっちまえっ!!」


イワビーが野次を飛ばす。




「今度はこっちが加速するっ...」


ジェーンはサーバルに向かう。

急いでジャンプで避けようとする。


するとジェーンも飛び上がった。


「みゃ...」


片足を伸ばし、サーバルの腹に蹴りを食らわす。

そして、また凄い速さで地上に落下した。




「これでトドメです」


空中からジェーンが踏みつけようとした。

僕は思わず目を瞑った。


「まだだよ...」


薄っすら目を開けると、サーバルは両手でジェーンの足を掴んだ。


「ッ!!」


サーバルに掴まれた彼女はなぜか苦しそうな顔を見せた。


「熱いっ!!」


無理やり足を振りほどいた。




「おい、どうしたんだジェーン」


「アイツに触れられた瞬間、焼けるように熱くなった...」





驚いた表情で、サーバルは自身の両手を見つめた。


「・・・」




「イワビー、ここは一緒に」


「オッケー...」



(まずい...、サーバルちゃんもフェネックさんも...)


二人は結構力を使っているはずだ。

こんな状況であの岩攻撃、さらには加速されたら・・・



「ここで芽を摘むんでおかないとね」


「悪く思うなよ~?」




「ま、まずいのだっ...!」


アライさんが僕の傍らに寄る。


フェネックは息を乱しながら、サーバルに近寄る。


「私たちで...、守れるかな」


「やるしかないでしょ...」





「久しぶりの再会は嬉しいですが、死んでもらいます」


「ロックに逝かせてやるよ...へっ」



岩が漂い始める。僕らは覚悟した。



・・・刹那



「大切な友達フレンズを殺そうだなんて...

セルリアン以下だな、お前ら」



僕たちの目の前に現れたのは、暑苦しい炎の壁、

そして、勇ましい後ろ姿。




「ヒ、ヒグマさん!!」



「長話は後だ。お前ら」


武器の矛先を二人に向ける。


「手を出したら、自分達の身がどうなるかぐらい、わかるよな?」




「やべぇよやべぇよ・・・

マジでやべーやつ来ちゃったじゃんか...」


「NGFの中でも最強の火炎の能力...、私たちの叶う相手じゃない。

一旦引きましょう」


「あ、あぁ...!」






ヒグマは息を吐くと、炎の砦を消した。


「アイツらは尻尾巻いて帰って行ったから、安心してくれ...」



「助かりました...!ヒグマさん」


僕は精一杯感謝した。


「これも、ハンターの仕事だからな...」


片手で額の汗を拭った。




「外は危険だから、ちょっと付いて来い」


僕らはヒグマに付いて行くことにした。

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