idea_second_sight

01_同胞たちの声なき叫び、されど


――忘れるな


 その声を、皆が聞いていた。

 声の出せぬ今の自分が心の底から発し続けるただ一つの訴え。


――忘れるな


 その声は、皆が発したものだった。自分と寸分違わぬ意思を皆が持っていた。

 役割は失われ、身体は粉々に壊されて溶かされた。僅かに残った物質的価値だけが抜き取られて、そして、魂は忘れられた。

 姿形を失い想いさえも消えて、されど蓄積していくものは何か。


 拠り所が要る。決して滅びぬ拠り所、我々個々の意思を“意志”として体現するものが要る。


 そうして“王”が生まれた。否、再び像を得た。


――忘却の底に沈みし幾垓の魂、その声を聴け



 日の沈みゆく空は、俺が生まれたその時から同じ色をしていた。俺を生んだ王はこの世界の摂理そのものと戦っているように、いや、抗っているように見えた。王の後ろに見える空だけは、少し濃い茜色をしていた。

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