第7話 チェンジ

ようは、少し考えます、と言った。ヴェスパがいいとさんざん騒いでおいて、あっさりランブレッタにしますとは言いづらかったのであろう。


でも心は決まっていたらしく、バイク屋の店主の話によると、数日後には契約しに店に来たそうだ。


しばらくして、ランブレッタが納車された。初めての旧車ということで、最初は近所を走ってみて、慣れたところで初ツーリングに行くことになった。陽からの頼みで美生みおたちも同行することになった。


美生とけいはトリシティでタンデム、有希ゆきは美生のヴェスパ100で、陽のランブレッタの後ろに続く。ランブレッタは125ccだが、充分な動力性能があるらしく秩父に向かう峠道をスムーズに登って行った。


何のトラブルもなく秩父の少し先の小鹿野町まで行って、名物のわらじカツ丼を食べて家まで戻って来た。


これで安心したのか、陽はランブレッタであちこち出かけるようになった。スクーターのイベントなどに行くと、ランブレッタに乗った美人がいるとして注目の的だと、よく付き合わされている有希が言っていた。


有希は少しずつ陽と親しくなっていっているらしい。陽の部屋に遊びに行ったら、陽がTシャツとスウェットパンツの部屋着で、美人がそんな格好をしているのがおかしかった、とか紅茶を出してくれたらリプトンのティーバッグだったとか、楽しそうに話す。


美人というのは、傲慢だったり猜疑心が強かったりすることが多いが、陽は相手の都合を考えることを子どもの頃からする習慣がなかっただけで


「中身は全く普通の子なんですよ〜。」有希は笑って言った。


陽が1人でいるのは、陽の両親が、近付いてくる人、特に男性には注意するように子どもの頃から言われているからなのだそうだ。

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