ペットボトル内の圧力が下がる

 翌日から僕は彼女を観察し始めた。


 彼女は相変わらず、クラスの中心にいた。周りに友達がいないことはない。


 だが、時節寂しそうな、悲しそうな顔を見せることがある。


 そんな彼女であるが、トレードマークがある。それは炭酸水だ。ごくごく普通の炭酸水。なんの味付けもない炭酸水。


 授業前にゴクゴク、授業中にゴクゴク、授業後にゴクゴク。見ると飲んでいる。流石に授業中は飲んじゃダメだろ。


 そんな感じで彼女のすぐそばにはいつも炭酸水があった。


 炭酸水を飲んでいる理由は盗み聞きによるとダイエットのためらしい。


 僕と彼女は教室では一切しゃべらない。屋上でのみである。


 合図などない。僕が屋上にサボり行っていると彼女は屋上に来る。まぁ、クラスが一緒なのだから僕がいないことぐらい分かるだろう。


 あの日以来、屋上であの日のようなことをしゃべることはなかった。と言ってもほとんど僕は寝たし、彼女は読書をしていた。


 僕が覚えている会話を一つ思いだそう。


「そうそう、○○がね、(教科名)の△△先生のことが嫌いなんだってさ」


 ここの詳しい教科や名前は覚えてない。


「ふーん、そうなんだ」


 僕はこれに興味がなかった。だか、彼女はしゃべり続ける。


「なんでも、授業が分かりづらいんだってさ」


「へー」


 こんな会話だったりする。


 他愛もない会話はこれしか覚えてない。これも僕が後から付け足した記憶かもしれない。


 他に僕が覚えている記憶は彼女の悲鳴、叫びとかの彼女自身に直結してることだけである。


 その記憶を少しずつ時系列ごとに思いだそうではないか。


 今思えばそれは彼女からの必死のSOSだった。それはポツリポツリと語られていった。


「私ね、ひとりぼっちになるのが怖いんだ。友達がいなくなるのがすごく怖いの。今は必死にみんなをつなぎ止めてる。母親も父親も友達も先生も。もう、これ以上は無理かもしれないなぁ。あっ、君は違うよ。なんというか私が手を伸ばしたら掴んでくれるし、私が手を離したら離してくれる。」


 僕はこれに一般論を答えてしまった。彼女が求めているのは一般論ではないのに。


「そんなのは友達でもないし、両親でもないよ。それはただの人だよ」


「う~ん、そうだよね~。」


 この言葉は知ったかぶりの僕の言葉だ。決して真実ではない僕の言葉だ。それに彼女は僕に依存しているのは分かってた。なのに、この言葉を言った。彼女にとってそれらは全てであったのに。

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