第4話 図書室の隅で

「……さてと」


 日当たりが悪く、先生も滅多に見回りに来ない図書室の隅。目の前にある本棚には埃の積もった本がたくさん入っている。その壁にもたれかかるようにして俺らは座り込んだ。そして、御徒町が話し始める。


「まず、君が感じた違和感とはどんな事かな?」


「下駄箱に督促状が入っていたことと、ロッカーに借りた記憶のない本が入っていたことと、司書の先生がそれについて『友達が借りた』って言ってたこと」


「ふむ。何故その3つの事に違和感を感じたのかな?」


 どうやら、彼は疑問文に“かな”を意識的に語尾につけているようだ。


「督促状って、放課後に司書の先生が、しばらく本を返してない人がいる教室の教卓の上に置いてくだろ。それで、次の日の朝、担任の先生を通じて督促する相手に渡す。下駄箱に入れるなんてふざけたことはしない。これが1つ目。2つ目は、そりゃ……誰だって自分が借りたはずのない本が自分のロッカーにあったら不思議に思うだろ。しかも、昨日まではなかったのに。扉がなかったら入れ間違えるのはあるかもしれないけど、このロッカーって扉も出席番号もついてるし……。3つ目。俺は今まで、友達に本を借りてもらったことなんて、一度もないと思う」


長い台詞を言い切った俺は深呼吸をする。


「話は理解した。それらの犯人は全て僕だ」


彼は罪を告白した。


「……はっ!?」


長い沈黙の後、俺は驚いて声をあげた。静かな図書室は更に静まり返る。――鋭い視線が目の前の本棚を貫いてこちらへ向かってくる。しまった、この視線が司書の先生だとしたら――。いや、司書の先生は穏やかな性格だ。だから、大丈夫。


「静かにしてくれないかな。ここはあくまで図書室なんだ。司書の先生が穏やかな性格だから大丈夫とか、そういう問題ではない」


俺の心を完全に見透かしている彼に軽く睨まれ、


「あ、いや、その、何でもないです。ご迷惑をおかけしました」


下を向いて、ボソボソと呟く。


「――それはさておき。僕がやった事を順を追って説明しよう」


御徒町による解説が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る