31 Self Defence Force

 

 ーダンジョン内・化け猫との地点から数kmー



 ⦅ザッザッザッ⦆



 俺と火憐は歩き出した。

 ダンジョンのさらに奥深くへ……幼馴染の氷華を見つけ出す為に……。



 ⦅ザッザッザッ⦆



 歩き始めてからどのくらい経つんだろうか。

 10分……いや20分程歩き続けているはずかな。正直よく分からない、俺のスマホは火憐を助ける為に化け物に向かって投げたからな。

 まぁ……元々ダンジョンに入ってからは圏外で使えなかったからいいけどさ。



「時間が分からねぇ……」



 俺がボソッと呟いたその言葉は火憐に聞こえたらしい。彼女はスマホをこちらに見せてきて無言で「これか?」と合図をしてきた。

「うん」と小さく頭を動かすと彼女は時間を言ってくれた。



「30分くらいは歩いているわね。全く、このダンジョンどこまで続くのよ」

「本当になぁ」



 俺達はゆっくりと上を見た。そこにあるのは弱々しい松明たいまつの光だけだ。

 ボヤァっとした光……それはまるで俺の心中を表しているように鈍く輝いていた。

 正直、さすがの俺も感づき始めたよ。あの後ずっと歩いても人間プレイヤーどころか化け物モンスターにすら遭遇しないんだ。

 氷華はもしかして……もう……ってさ。



 だが……。



 ⦅ザッザッザッ⦆



 足を止めることは無い。

 せめてダンジョンの最終地点に着くまでは歩き続けるよ。

 そうしないと後悔するからな、あの時こうしておけば良かったってさ。



 そうやって俺が覚悟を決めている時だ、火憐が何かに気づいたらしい。

 俺を向いて話しかけてきたんだ。

 興奮気味でな。



「蓮君! あれって人じゃない?」

「え……」



 火憐が指を指す方向を見ると確かに人影らしき物が見える。確かに氷華のようにも見えるんだ。

 でも……周りにいるのはダンジョンに入る前、見たクラスメイトじゃない。

 あれは……は……。



「自衛隊……か?……」



 俺達の遠い視線の先にいるのは、足を引きずりながら歩いている女子高生と、緑の服を着て周囲を警戒している人物が10名程のみだ。

 他のクラスメイト達はどこにいった?

 それに戦車部隊が見えない。自衛隊はこんな未開の地に歩兵しか派遣していないのか? 

 戦車は? 装甲車は?



 でも、今はそんな事を考えるより感動が先に立ってしまった……だって見つけたんだ。やっと氷華を……。俺と火憐は、数ある疑問を胸に抑え込んでその集団に近づいていったんだ。

 多少の違和感はあるけど、これで氷華を連れて帰れるって……。



 ――そう思っていた。

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