クッチョロ！！２

沙魚人

ある日、大学の授業が終わって、美生（みお）と佳（けい）が連れ立って歩いていると、後ろから女性に声をかけられた。

美生と佳が振り返ると、人の良さそうな顔をした女性が立っている。その女性がもじもじしながら言った。

「あの、すみません。私の実家で古いバイクが見つかって、美生さんのバイクに似てるので、美生さんなら何かご存知かと思いまして、、、」

とりあえず３人は学生食堂に行くことにした。今日これからの２人だけのひと時を邪魔された佳は傍目にはいつも通りに見えるが、実はかなり不機嫌なのが美生にはわかる。

後で佳のご機嫌を取らなければ、と思いつつ、美生はバイクについて聞いた。

人の良さそうな顔をした女子大生は、有希（ゆき）と名乗った。顔だけでなく、なんとなく服装も人が良さそうな感じで、話し方も人が良さそうに思えた。この人は問題ない、美生はそう判断した。

有希の話によると、もうだいぶ前に亡くなった有希の祖父は古いバイクのコレクターで３０台以上のバイクを所有していた。それは祖父の死後、全て処分してしまったのだが、つい先日農機具をしまっていた倉庫を片付けていたところ、１台だけ残っているのが見つかったという。祖父以外の有希の家族は全くバイクに興味がなく、祖父が集めた本なども祖父の友人知人に譲ってしまい、手がかりがないと言う。

写真はないですか？という美生の問いに、有希はスマホを出して画像を見せてくれた。１０枚程の画像の中に、ガソリンタンクの画像があった。タンクについているメーカー名のデカールに美生は見覚えがあった。

『 MotoGuzzi 』