002――リミットレス(映画)

あらすじ

 エディ・モーラ(ブラッドリー・クーパー)はうだつの上がらない作家。安アパートに住み、日々パソコンの前に座っては一文字も書けずに無為な時間を過ごす日々を送り、出版社からも彼女であるリンディからも見限られていた。ある時エディは街で元妻の弟であるヴァーノンと出会い、彼から脳の能力を100%活用させるという「NZT」という薬を手渡される。人生のどん底寸前のエディは「NZT」を服用し、そして彼の見る世界は一変する。

 一日で出版社が絶賛するような小説を書き、様々な語学や技能を短時間に習得していく。それは文字通り人生が一変する劇的な変化であり、エディはウォール街の伝説的な投資家であるカール・ヴァン・ルーン(ロバート・デ・ニーロ)の右腕にまで上り詰める。だが同じ頃、何者かがエディを監視し、エディ自身の記憶も不意に飛び始めエディの人生を変えた「NZT」が彼に暗雲をもたらし始める。




概要

 原作はアラン・グリンの小説『ブレイン・ドラッグ』。

 監督は『ダイバージェント』のニール・バーガー。

 脚本はレスリー・ディクソン。


 主人公であるエディ・モーラを『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパー。

 エディの恋人であるリンディを『ロボコップ(2014年リメイク版)』のアビー・コーニッシュ。

 ウォール街の伝説的な投資家であるカール・ヴァン・ルーンを『タクシードライバー』『バックドラフト』のロバート・デ・ニーロが演じる。


 今作は薬――「NZT」とそれによってもたらされる能力が重要なカギとなってくる。実際エディがヴァーノンで出会わず、脳の能力を100%活用させる「NZT」を服用しなかったなら、落ちぶれたエディが自らの人生を一変させることはなかったし、後々本編で彼を悩ませる「NZT」がもたらす能力と副作用も含めた危険性という問題に頭を悩ませることもなく、さらに「NZT」を服用し、味を占めた金貸しのゲナディや自分のことを尾行するコートの男などのトラブルに右往左往するということも起きなかっただろう。

 しかし、彼は服用する道を選んだ。だからこそこのストーリーは始まるのだ。


 さて、フェーズ1で落ちぶれたエディに「NZT」というきっかけが与えられたことで彼の人生に一つの光が見いだされる。誰だってどん底から這い上がれる蜘蛛の糸を見つければ縋りつくだろう。そして縋りついた人間の次の行動は糸を手繰ってどん底から這い上がることだ。

 「NZT」の切れたエディも同じように薬をくれたヴァーノンの元に赴いて薬のために彼の雑用を引き受けているが、帰ったところでそんなヴァーノンが殺されているという状況で「NZT」の危険性はある程度エディにも読者にも明示される。だが、エディは警察を呼ぶという正常な判断を下しながら、同時に彼の部屋を漁って「NZT」を見つけ出し、それをくすねるという正反対な行動という形で人間の欲が現れている。


 そして、フェーズ2でエディは「NZT」の力で驚異的な速度でどんどんなり上がり金や名声を手にしていく。ここで一つ注目したいのは映像の変化だ。フェーズ1の落ちぶれたエディの色彩はSF作品に用いられるようなコントラストの弱い映像で作られているが、「NZT」を服用することで鮮やかな色彩へと移り変わる。しかし、そんな満ち足りたエディの心を表す画面の鮮やかな世界に徐々に歪むような演出がなされる。これが副作用で記憶が飛び始めていることを観客に分かりやすく表している。

 この副作用によってエディの中で「NZT」を使い続ける事への葛藤が生まれ、その隙間をつくようにトラブルが入りこむ。そしてそのトラブルが尾を引くことでフェーズ3への展開につながっているのだ。


 脳の能力を100%活用させるという魅力的なテーマを扱っている本作は分解してみると、非常にシンプルな要素で固められていると感じられた(まぁ、それは他の作品にでも言えそうなことではあるが)。しかしすべてが「NZT」という薬に繋がっていることで要素同士のリンクが見えているので、堅実に作られている作品なのではないかと思う(あと個人的にブラッドリー・クーパーが出ているというのも個人的には加点対象だった)




プロット(ストーリーライン)

フェーズ1(設定)

・高層ビルの端に立って眼下を見つめるエディ(プロローグ)

・小説家を名乗りながら落ちぶれた生活を送るエディの様子

・昇進したリンディに別れ話を切り出されるエディ(学校を卒業後メリッサという女性と結婚し別れたことが明かされる)

・街中でメリッサの弟のヴァーノンと出会い、彼から「NZT」を渡される

・「NZT」を服用し、変化を迎えるエディ(服用によって映像に色彩が宿る)

・翌日、「NZT」の効力が切れるが、書き上げた小説を出版社に持っていき、絶賛される


第1プロットポイント

・ヴァーノンの家に赴き、「NZT」をもらうために彼の雑用を引き受けて外出するが、戻ると彼が殺されているのを発見。警察を呼びながらその間に彼の部屋を漁って「NZT」を見つけるエディ


フェーズ2(対立・衝突)

・警察で事情を話している時にメリッサから電話をもらう

・「NZT」の力を使って4日で本を書き上げ、3日でピアノを習得したりと有効活用し人生を変えるエディ

・大きなことをやるための株で金を稼ぎ始め、ゲナディから金を借りる

・リンディと復縁するエディ

・コートの男から監視されていることに気づくエディ

・ウォール街の伝説的な投資家であるカール・ヴァン・ルーンと会うエディ

・「NZT」の副作用で記憶が飛び始める(視覚的な表現が面白い)

・「NZT」なしでカールと会合するが彼に失望され、その時見たニュースで記憶の飛んでいる間で垣間見たモデルの女が死んでいることを知り、弁護士であるモリスを雇う

・メリッサから電話があり、彼女と会う約束をした後、エディが「NZT」について調べ始め、ヴァーノンの顧客が死んだり病院にいることを知る

・自分を監視しているコートの男に追われ、逃げるエディ

・メリッサと再会し、彼女も「NZT」の副作用に苦しんでいたことを知り、「NZT」を徐々に減らしてやめるように警告されるエディ

・ゲナディから金の催促をされ、「NZT」を飲まれてしまう

・仕事中のリンディの元を訪れ、「NZT」のことを話し、「NZT」を取りに行ってもらうがその最中にコートの男に追われ、近くの通行人に助けを求めるが男が通行人を刺し殺す

・コートの男から逃れるためにリンディが「NZT」を飲み、覚醒する

・リンディと共にホテルに逃げ込むが「NZT」は危険でやめるべきだと言われるエディ

・ゲナディが「NZT」をタカりにきて何錠か渡すエディ

・「NZT」を服用しつつ複製できないか模索する中で、刑事からモデル殺しの疑いをかけられる

・ホテルが荒らされているのを見て、新たな家を買う

・ゲナディから「NZT」を20錠もってこいと言われる

・カールの会社との取引相手であるアトウッドが体調を崩し夫人が回復後に契約すること伝えくるが、使用人が自分を付け狙い、リンディを襲ったコートの男であることにエディが気付き、アトウッドも「NZT」を飲んでいたと知る

・モデル殺しで警察に赴いた後、カールの会社に戻るがアトウッドとの合併がどこかから漏れ、さらにスーツに仕込んでいた「NZT」がなくなっていることに気いた直後、エディの元に切断された手首が送られてくる(弁護士であるモリスがくすねた)


第2プロットポイント

・ニュースに出たアトウッド夫人の隣にモリスの姿を見て、全てが仕組まれていたことであると気づく


フェーズ3

・「NZT」を奪いにゲナディがエディの自宅にやってきて(プロローグへ)缶に「NZT」が残っていることに望みを賭けて行動を起こすエディだったが最後の一錠を落としてしまい、捕まる

・隙を見てゲナディを殺し「NZT」の混じったその血を舐めることで一時的に覚醒。男の手下もなんとか倒す

・アトウッドが死に、弁護士のモリスから「NZT」を奪うために監視していたコートの男と手を組み「NZT」を取り戻す

・一年後、上院議員となったエディの元にカールが現れ、彼が「NZT」をバラまいていた張本人であることを知る

・実は「NZT」によって脳が変化し、エディがすでに「NZT」をやめていることが明かされ、逆にカールの心臓病を見抜き、脅迫する

・リンディとの仲が戻ったことが提示される

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