第2話『新たなる序章・反撃の嚆矢』

 無限に広がる宇宙空間……恒河沙の光。

 星間物質のベールから恒星が生まれ、恒星から惑星が生まれた。

 惑星は海と緑に祝福され、生命が芽生える。

 生命の樹に純愛宿り、紡がれゆく──

 太古の記憶……悠遠の神代から続く人々の営みは『神話』となり、新たなる時代の幕開けを告げる……



 ……時に、西暦二〇二二年。日本国──

 

 ステンドグラスに陽が燦々と差し込む……

 幾何学的造形と有機的意匠の融合した宮殿。

 赤絨毯が敷かれ、高みの玉座には一柱の神が構える……

 火之神カグツチだ。

 それは異世界方舟の邪神、デューゴスでもあった。

 床から青い火炎が吹き上がり、禍々しい宮殿を照らし出す。

 火之神は嗤った。


「──これは、太陽因子を宿す皇国に等しく定められた、滅びの運命だ!」

 

     *    *

  

 日方文化交流イベントの最中、事件は起こった。

 明かされる驚愕の真実──それは、カグツチが憑依しての、先代異世界を滅ぼした邪神デューゴスの復活、そして日方両国への宣戦布告だった。

 そして弾道ミサイル攻撃の一報が入る。

 どよめく人々。


 ミュラの脳裏に先代異世界の記憶がかすめる。

 邪神デューゴスの凶行に、親友アリスは臣民を守り崩御した。

 今、一命に代えても王族としての使命を果たす──

 

「皆、聞いて──」

 臣民を守るべく立ち向かおうとするミュラをバシスが肩を掴み、制する。


「お前ひとりの責任じゃない……全員で背負う!」


「──破壊措置命令を発動! 弾道ミサイルを撃墜する! 奴に指一本方舟に触れさせるな!」

 荒垣あらがき防衛大臣が宣言する。

 その決意に、岸本きしもと内閣総理大臣が、阿部あべ副総理が、バシスが頷く。


 同盟国を守るため、自衛隊が立ち上がった。

 異世界の悲劇に終止符を打つべく、自衛隊が立ち上がったのだ。


「みんな……」

 その様子にミュラが涙ぐむ。

「俺たちはもう、ひとりじゃない……」


 反撃の嚆矢を携えた護衛艦『やまと』を、バシスとミュラが見上げていた……


     *    *


 護衛艦やまと──


『──来ました! 中国吉林省通化基地より、四発の弾道ミサイルを確認!』

「了解! ……砲術長!」

 船務士の報告に攻撃指揮官が応じ、砲術長に命令を下す。

「弾道ミサイル迎撃用意! CIC指示の目標! SM3攻撃始め!」

 砲術長が命じた。


 ミサイル垂直発射管の天蓋が開き、弾道弾迎撃ミサイル『SM3』がせり上がる。

 橙色の火炎を吹き上げ、ミサイルは高空へと飛翔した。



「(当たれ……!)」

 ミュラが祈る。

 この一撃に、方舟の運命がかかっているのだ。

 バシスら王族、重臣、臣民もミュラと同じように天を仰ぐ。



『インターセプトまで十秒! 八、七、六、五……』

 カウントダウンが始まる。

『三……二……一……マークインターセプト!!』

 ディスプレイに爆炎が閃いた!

『迎撃、成功です! 弾道ミサイル、全弾撃墜しました!!』

 肩を叩きあう護衛艦の乗員たち。



「……やったよ。見える? アリス……」

 ミュラの頬に涙が伝う。

 臣民らを熱狂の渦が包む。



 邪神の野望に立ち向かう日本と異世界。

 火之神──デューゴスの凶行に対し、反撃の嚆矢が放たれた日だった……


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