月曜日(2)

 自宅のマンションに戻ると半袖のTシャツとジャージに着替えた。一頃の暑さに比べればかなりマシになったが、まだまだ気温は高かった。僕はひとまずベッドに横になって、山城のパンツを脳裏に焼き付けるように思い起こした。きっと下品な顔をしていたに違いない。

 スマホで漫画を読んでいる内に日が暮れ、両親と三人で会話の少ない夕食を済ませ、ゲームをしたり、ネットを見たりするうちに夜も更けた。いつものことだ。

 時計が十時を過ぎる頃、出すものを出してから風呂に入り、歯を磨き、速やかに寝床に入った。本当のお楽しみはこれからだ。

 明かりを消して横になった僕は、瞳を閉じ、山城の横顔とパンツを思い浮かべ、静かに彼女を招いた。


 地味で根暗でガリガリでオタクで人付き合いが下手で――自分を卑下する分にはきりがないが、そんな僕にも一つだけ特技があった。夢をコントロールすることができるのだ。夢の中では好きなように行動でき、思うがままに世界を操れる。ネットで調べたところ、どうやら明晰夢と呼ばれるものらしい。

 夢の中に限れば、僕は主役にも神にもなることができた。もちろん現実には何の影響も及ぼさないし、金になる能力でもなかったが、夢の中で自由に振る舞うのは僕の生き甲斐と言っても過言ではなかった。

 自分の能力に気づいたのは小学五年生の冬休みで、初めは空を飛んだり、海に潜ったりするくらいだった。年齢を重ねるごとに夢のバリエーションは広がり、やがてアイドルや学校の美少女と愛し合うことがメインになった。

 夢の中では誰もが僕に好意的で、親切だった。全てが僕の思い通りになった。夢から覚めるまでの間は。

 その夢の世界で今夜のパートナーに選んだのが山城というわけだ。現実の彼女には何の影響もないのだから、僕が良い思いをしても迷惑はかからない。

 僕はすでに興奮していたが、寝る前に一度出しておけばパンツを汚すようなことはなかった。今日も備えは万全だ。

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