本編7万PV記念、5田舎娘の裏話1

ex5−1 田舎娘の沈黙

 都会っちゃこわかね。

 皆歩くの早か。喋るんのも早か。

 ウチよお出て来よるばってん、話ばついていかんばい。

 訛っちるんも恥ずかしかと? ウチが喋るっち皆変な顔しゅる。

 話ぃついてけん、何も言えなか。


 戦えるっち言うちゃけど、信じとぉ?

 小さか女や思うて笑っとんと?

 ……泣かんちゃ。ウチは強かから。


 ◇◆◇


 小さな仕事を1人で受けて、ひっそり熟して、言葉の使い方も覚えて。

 でもまだ、ついていけんよ。皆なんでそんな早か喋れると?

 あんま喋らんけん、ウチの言葉通じようか判らんね。

 ばってん、聞くのも恐か。

 今更村さ帰れんし、一応どげんかなっとるけん。

 もうちょっち頑張るね。


 怖か人多いけども、優しか人もおるもんたい。

「無所属かい? ウチは今女性ばかりで、女性のパーティメンバーを探してるんだけど、どうかな?」

 パーティば誘ってくれた皆には感謝しとぉよ。

 ちゃけど、一杯お喋りしとう思うちゃけど、もう少し待ってぇな。

 まだまだ、勉強中だけん。


 ◇◆◇


 パーティー初めての『遠出』で皆張りきっとぉね。ウチもしっかり頑張るよ!

 って張り切ってみたけど、ウチはお留守番なんね。

「では、留守を頼むよ。非戦闘員と私達の拠点を護る、重要な任務だ」

 必要な役割だし、大切な事やと判っちゃけど。だでも、暇たい。……皆平気と?

 昼には皆帰ってくる言うてたし、お昼の準備ばしとこうかいな?

 焚き火組んで、水汲んで。こうゆうんは村ん仕事と変わらんね。

 妹達は元気にやっとうと?


 ウチはしばらくぼーっとしようたけど、まだまだ帰ってくる気配はなかね。

「遅いですねぇ?」

 ギルドん人の言葉に、ウチは頷く位しか出来んばい。申し訳なか。

 ……空木箱で椅子と机も用意しようけ。そしたら、皆疲れとってもゆっくり出来るたい。


 お天道様が頭の上を通り過ぎて、反対っ側に傾き始めて。

 ……テントの中の整理まで終わっちしもうたね。

 料理は皆でやるっち言うてたから、準備だけしとうよ。

「試練は、人を育てるんですよ」

 ギルドん人はそーいうて微笑んでる。おかんみたかなあったかい笑顔だけん、ウチも釣られてちょこっと笑えた。

 皆ちょっと遅か。どげんしたんと?


 幾らなんでも遅か。

 もう夜が着よるばい。ウチお腹減ったよ。

 ちゃけど、皆もっと減っとうと?

 ギルドん人も困っちるね。

 仕方なか。料理始めとうちゃ?

 ……帰れんと?


 うち、まだ寝とると?

 不安で変な夢見とると?

 なんね、何で皆帰って来んと?


 黒の使者が着よったね。

 知っとるばい。それがパーティ全滅の知らせっちゃいうんは。

 認めとうなか。けんども、使者さんいっぱい来たら嫌でも判るたい。

 ウチ等も、もう1つのパーティも全滅したいうんは。

 使者さんが来てくれるんは、パーティの皆の気遣いじゃけん、意地張っても仕方なか。

 結局、ウチはここでも何も出来ないんかね……。



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展開自体は決まっているので、ごりごり書いていきたいと思います。

……訛り表現という難敵……。

意味が通じる程度に適当な方言をごった煮にしてるつもりなのですが、通じる程度の崩し方になってますでしょうか。

p.s.極度に発言機会の少ない、1章から登場し3章で名前が初登場の(4章現在)無口キャラ、メルのお話です。影薄過ぎですね、すみません。

ex5−1は彼女が無口である理由をお伝えできたなら幸いです。やがて無口キャラを克服してくれる日が……来ると良いのですが。

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