シトラス・フレーム

浅川多分

記録1

 これは、主観的な記録である。

 どんなにくだらなくとも、どんなに話が広がろうとも、主観的な記録以外の何物でもない。その枠を出ることはない。


 まず何から話そうか。そもそもこのような記録を残し始めた経緯からだろうか。それとも私の自己紹介的なものからだろうか。


 そんなことを考えている内に、我が学級の担任であり英語教師であるところの西村に教科書32ページの5行目からの一文を日本語に訳すように言われ、クラス中に恥を晒したところである。


 軽く自己紹介をする。

 東京の某高校に通う頭のあまり良くない男子高校生である。名前はまだない。正確には、あるが名乗るほどの名はない。正直、ここに記録する程の情報を自分は持ちあわせていない。前述した頭の悪い高校生であるという情報ですら、必要のない情報であろう。この記録が主観的な記録だとしても、何処の誰それの主観かに関しては、記録の中に滲み出てくるものであり、前提など必要無いのである。

 ただ一つだけこの場で定めておこう。一人称は私。ここだけは定めておく。

 

 こんな不毛な独り言を脳内で展開して、日々をやり過ごしているのが私である。間もなく授業が終わる。

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