第28話
そう言えば、そんな事もあったなと思いながら俺は話しを聞いていた。
「それがきっかけなのか?」
「う、うん・・・・・・そう・・・・・・」
顔を真っ赤にする由香里。
少し無神経だっただろうか?
流石に本人を前にこの質問は答えにくい。
「すまん、無神経だったな」
「だ、大丈夫だよ! だって、私が拓雄君を好きな事は……ほ、本当の事だもん・・・・・・」
「そうか・・・・・・」
「う、うん・・・・・・」
なんだか気まずくなってしまった。
何度も告白を受けて来たが、ここまでちゃんと気持ちを聞いたのは始めただった。
なんだかちゃんと言われると気恥ずかしい。
「今度はどこに行く?」
「え、えっと・・・・・・じゃあ、その・・・・・・雑貨屋に・・・・・・」
「おう」
俺は由香里の要望通り、雑貨屋に向かった。
*
あっという間に時間は過ぎ、もう夕方。
そろそろ帰らなくては行けない。
「そろそろ帰るか」
「あお、そうだね・・・・・・」
夕焼けの空を眺めながら、俺と由香里は駅まで歩いて向かう。
ふと、由香里の方を見るとなんだか元気が無い。
どうかしたのだろうか?
「どうした?」
「え? な、なにがかな?」
「いや、なんか元気ないから・・・・・・楽しく無かったか?」
「う、ううん! 凄く楽しかったよ! だから・・・・・・なんだか帰るのが寂しいなって・・・・・・」
夕焼けの影響か、由香里の顔をはいつも以上に真っ赤に染まり、少し俯気味だった。
「また一緒にくれば良いだろ?」
「ま、また、一緒に来てくれるの!?」
「あぁ、時間が合えばだがな」
「そ、そっか……ウフフ」
俺の言葉に由香里は笑みを浮かべる。
良かったいつも由香里に戻った。
少し歩き、駅についた俺たちは、切符を買って電車が来るのを待つ。
「まだ日は高いが、気を付けて帰れよ」
「うん、ありがと!」
由香里は嬉しそうにそう言い、電車に乗って帰って行った。
送って行こうかと言ったのだが、悪いからと断られてしまった。
「帰るか・・・・・・」
俺は由香里を見送った後、自分の乗る電車を待った。
久しぶりに遊んだ気がした。
最近は色々ありすぎて忙しかったし、遊びになって行く暇が無かった。
「来週はあのお嬢様か・・・・・・」
俺はそんな事を考えながら、帰りの電車に乗った。
*
「おかえりなさいませ、拓雄様」
「ただいま、最上さん」
屋敷に帰ってきた俺を出迎えたのは、メイド服姿の最上さんだった。
「お疲れでしょう、お風呂が沸いておりますので、良ければご入浴下さい」
「ありがとございます、それじゃあ風呂に入って来ます」
俺は最上さんにそう言い、一度部屋に帰って着替えを持ち、浴場に向かう。
午後はほとんど歩きだったので、なんだか疲れてしまった。
脱衣所に着いた俺は、服を脱いで浴室の戸を開ける。
「あぁ~・・・・・なんだか疲れたな・・・・・・」
歩き回っただからだろうか、いつも以上に風呂が気持ち良く感じる。
「はぁ~・・・・・・」
湯に浸かり、俺は体の力を抜いて湯に浸かる。
一日の疲れが抜けていくのを感じていると、突如浴室の扉が開いた。
「お背中………お流しします」
「………お前は何をしている?」
そこに居たのは、学校専用のスクール水着を着用した早癒だった。
手にはタオルと石けんを持ち、いつもの感じで話している。
「仕事」
「そうか、なら言っておこう。俺は自分で体を洗える、だからその仕事は必要無い」
「・・・・・・拓雄は……今日出かけて疲れてる」
「あぁ、そうだな」
「だから、私が全部洗ってあげる・・・・・・オーケー?」
「ノーだ馬鹿」
俺はそう言いながら、早癒を浴室から追い出した。
早癒は絶対にメイドの仕事を誤解している気がする。
俺はその後、体を洗って風呂から上がり、着替えを済ませて部屋に戻る。
するとまたしてもそこには・・・・・・。
「今度はなんだ・・・・・・」
「ん・・・・・・マッサージしてあげる」
「それは別に良い・・・・・・俺が聞きたいのはなんでブルマ姿なんだって事だ」
うちの学校の体操着は男女共にハーフパンツだ。
一体どこでそんな物を見つけて来たんだ・・・・・・。
「マッサージもいらん、着替えてこい」
「あ、メイド服の方が良かった?」
「服装の問題じゃねーんだよ・・・・・・」
俺は早癒を部屋から出し、服を着替えてくるよう言い、一人になったベッドの上で寝転がる。
「はぁ・・・・・・どうしたんだ、一体・・・・・・」
いつも以上に仕事に積極的な早癒。
頑張る事は良いことだが、なんだか頑張る方向がズレている気がする。
そんな事を考えていると、部屋のドアが二回ノックされた。
「はい」
「・・・・・・着替えて来た」
部屋に来たのは着替えを済ませた早癒だった。
早癒はメイド服のままベッドに寝転がる俺の脇に来ると、首を傾げて尋ねる。
「マッサージする?」
「着替えて来てからしろって意味じゃねーよ」
「むぅ・・・・・・わがまま」
「そういう事じゃねーだろ・・・・・・」
俺はため息を吐きながら早癒を見る。
俺と似て表情の少ない早癒。
しかし、時々笑ったりするのを俺は知っている。
折角整った容姿なのだから、もっと笑えば良いと思うのだが・・・・・・。
「何か……することある?」
「いきなりなんだよ……」
「ん……拓雄……最近頑張ってる……」
「まぁな……」
「だから………」
「だから?」
「力になりたい………」
そういうことか……。
主人が頑張っているからメイドの早癒も何か手伝いをしたい。
それで考えたのが、背中を流すこととマッサージだったと言う訳だ。
「そうか……あの格好もただ単に動きやすいと思ったからか?」
「ううん、男の子が好きって聞いたから」
「一度お前にはちゃんとしたメイドさんを見て欲しい」
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