十七、友達のかけら

「なんで教えてくれるの。あたしの病気もそのせい?」

 木島はスマートフォンの小さな画面の中で戸惑っている。

「事の発端だし。知りたいと思って。できれば来てほしい。後、あれは違う。明らかに遺跡の元からの呪いだろうね」

「なんであたしも?」

「知りたくない?」

「でも、どう考えても危ないよ」

「そうだね。秘密の兵器開発が環境破壊を引き起こしている可能性がある。その証拠を探りに行くんだから安全じゃないのは確かだよね」

 健一の感情を抑制した声に木島は苛立ってきた。

「どうしたいの? それに、あたしが行ってなにか役に立てる? そっち方面の技術は持ってないし、知識は独学だし」

「関わり合いになってほしい。どう?」

「嫌。もうこりごり。魔法だとか、犯罪だとか。あのこと教えたの後悔してる。黙ってればよかった。衝動で動いた挙句、父さんは会社を売り、あたしにはろくに口も利いてくれない。で、田舎に引っ込むのよ。今の早乙女くんだって、なんで告発せずに調べに行くのか説明できないでしょ」


 その通りだった。この調査は健一でなければならないという理由はない。また、事の重大さを考えれば、証拠が固まっていなくても事情を知らせておくべき関係当局はあるだろう。


 でも、でもだ。これは僕が片を付ける。


 健一の頭に魔法使いに脅される一方だったあの瞬間がよぎる。それは、その前からあった協会に対する不快感と一組になっていた。

 心の中のそれらをきれいに掃除しないと、僕もいずれ木島さんのお父さんのように、この仕事から目を背けて逃げ出したくなるんじゃないだろうか。

 そんな気がしたが、その思いを画面の向こう側には言えなかった。


「なによ。黙り込んで。もう言うことないの?」

「やっぱり、関わる気、ない?」

「ない」

「そっか」


「ねえ、わたしたちは友達よね」

「もちろん」

 木島はそれだけ確かめると電話を切った。


 健一は通話終了画面を見て考える。本当にそうかはわからない。友達と言っても、お互いの心の中までは見えないのだから。

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