第13話

 霊媒師のおばさんが言った通り、月日が経つにつれて彼女と彼女の娘の入れ替わりがコントロールできるようになってきた。俺と居ることで、彼女の悪霊としての格がどんどん下がっている証拠だ。

 彼女との関係も良好で、先にあったような『昼ドラ』関連の場面が日常的にあったり、彼女がただの娘一辺倒ではない一面を知ったり、お互いが隠れた性格をさらけ出し始めている。

 最近になって更新された俺の彼女の印象は、何というか……うっかりのドジっ子だ。娘が絡むと周りが見えなくなり、うっかりが発動する。それが定期的に起きれば、ドジという烙印を押されても仕方がない。見た目は子供、中身は主婦、その実態はうっかりでドジっ子。その手の趣味の人なら需要があるのではないだろうか? 金髪の幼女だし。

 さて、もう一人の人格である彼女の娘の方とはどうかというと、よく話すようになった。今日もチョコチョコと近づいて、何の警戒もなしに話し掛けてくる。

「愛人のおじさん」

「ん? 何?」

「今、ひま?」

「暇だよ」

 休日、特にやることもなく、ぼ~っとしてるだけだからね。

「じゃあ、わたしと遊んで」

 子供と遊ぶのか……。

 世のお父さんとお母さんは、こんな年齢差の離れた生物と何をして遊ぶのだろうか? 子供の頃が俺にもあったはずなのに、都合よく思い出せないとは……。

「君は、いつも何してるんだ?」

「一人しりとりとか」

「…………」

 何? そのエンドレスで無性に悲しい遊び……。

「あと、一人すごろくに一人――」

「もういい」

 なんか聞いちゃいけないことを聞いてしまった罪悪感がある。そんな皆で遊ぶものを一人でやらないで欲しい。

 俺は首を傾げる。

「ん? でも、そんな遊びばかりじゃないはずだよな? ママとままごとしてたって言わなかった?」

「うん。それはママが戻ってきてから」

「そっか」

 彼女が戻るまで、この子は一人で遊ぶしかなかったってことか。

 では、一緒に行動する人間が居るというだけで、彼女の娘にとっては新しい発見や経験になるのではないだろうか?

「出掛けようか」

「どこ?」

「散歩するだけでもいいんじゃないかな。ネタは落ちてるはずだ」

 彼女の娘は首を傾げたが、それはそうだろう。俺も出掛けるにあたって具体的な目的がないのだ。強いて目的を言うなら、彼女の娘が興味を示すものを見ることだ。このまま一人遊びだけをさせるわけにもいかない。大人になってからでは得られない、子供の時だけの自由な時間というものがあるのだ。是非とも、友達と遊ぶ切っ掛けを作って欲しい。

 ああ、あと、公園を回った後にでも、デパートに行ってみよう。彼女の娘が興味を示すものなどを知っておきたい。あの感情豊かな彼女の娘だ。機嫌を損ねた時の事前策は用意するに越したことはない。

「さ、準備して」

「うん」

 彼女の娘は、外に出掛ける用意をしに自分の部屋へと走っていった。

「何か、予想外に面白いことでも起きるかね?」

 俺はズボンのポケットに財布を突っ込み、彼女の娘が来るのを待った。


 …


 陽射しは暖かく、適当に散歩をするなら丁度いい。

 彼女の娘は大きなツバのある白い帽子を目深に被り、手を広げて歩いている。帽子から見え隠れする金髪も、もう見慣れたものだ。

「あの子は、何に興味を示すのかな? 占いには興味を持っていたけど」

 あと、昼ドラも……。

 目の前で帽子が回り、彼女の娘が俺を見上げている。

「変な顔して、どうしたの?」

「ちょっと、話題に事欠いていたから」

「なんでもいいよ」

 その何でもいいというのが、意外と困る問題なのだ。以前、何でもいいからと面倒臭くて適当に話したら、相手は怒り出した。だったら、『お前が話題を提供しろ』と言いたかったが、人間社会のコミュニケーションは、それほど単純ではない。故に子供と言えど、後々の展開が面倒臭くならないように少しは配慮しないといけない。

 しかし、考え続ける俺を待てないらしく、彼女の娘から提案を出してきた。

「質問ごっこしよう」

「質問ごっこ?」

「愛人のおじさんがわたしに質問して、わたしが答えるの」

「ああ、いいよ」

 それぐらいなら簡単だ。小さい子が答えられるぐらいの質問なら出来るだろう。

「好きな食べ物は?」

「ほうれん草のマカロニグラタン」

「ああ、美味しそうだね」

「愛人のおじさんは?」

 はて? 俺は、何が好きだったろうか?

「消化できれば、何でもイケるんだよな」

「今まで、何を基準に食事をしてきたの?」

「店に入って、一番最初に目に入ったものを食べてた」

 彼女の娘は眉間に皺を寄せて、小さな右手の人差し指を振る。

「ダメだよ。食事は楽しまなくちゃ。病気にならないようにバランスも大事」

「君のママが来てからは改善されてるよ」

 彼女の娘は顎の下に指を当てる。

「そういえば、愛人のおじさんってママの出すものに一度も文句言ったことないね?」

「普通に美味しいしね」

 彼女の娘はにぱ~っと笑みを浮かべて頷く。

「そういう風に言ってくれると、うれしいな」

「そう?」

「うん。今までママの料理を褒めてくれる人は居なかったんだもん」

「ママの周りには、舌が馬鹿になってる味覚障害者しか居なかったんじゃないか?」

 高橋っておばさんは、砂糖を入れる前の紅茶を砂糖なしだって勘違いするぐらいだし。

「じゃあ、ママはやっと味の分かる人に出会えたんだね」

「あの人は君にさえ分かって貰えれば、他はどうでもいいと思うけどね」

 あの過度の娘主義者が、娘以外の他人の評価で喜んだり落ち込んだりしている姿は想像できない。

「ねぇねぇ」

「ん?」

「ほかの質問してよ」

「そうだな」

 俺は、ありきたりの質問を考える。

 そこで思いついたのは卒業文集の寄せ書きだった。彼女の娘が小学生のせいか、最近は小学生の時のことをよく思い出す。

「将来、君は何になりたい?」

 これはなかなか普通の質問だ。子供相手に、我ながら良い質問をした。

「姑」

 が、完全な間違いだった。

 返ってきた答えには、将来なるべきものの話が終わって、老後の話まで飛んでいた。姑なんていうのは、将来の夢を叶えてからなって欲しい。

「あのさ……。姑になる前になるべきものがあるんじゃないの?」

「うん?」

 可愛らしく小首を傾げる姿は歳相応の少女なのだが、頭の中にインプットされている情報が明らかにおかしい。

「とりあえず聞くけど、姑になんてなって、どうするの?」

「嫁をいびり倒すの」

「…………」

 これ、本当に親として彼女が悩むレベルだ。小学生の今から嫁をいびり倒そうなんて、人として拙いだろう。今のうちに矯正しないとダメだ。

 俺は咳払いを入れる。

「君の将来といっても、そこまで遠いものじゃないんだ。もう少し背が伸びて、素敵な大人の女性になった時に何をしたいのかな?」

「もう少し? ……そうだよね。わたしも大人になるんだから、段階を踏まなくちゃいけないよね」

「分かってくれたか」

「余所から嫁を貰うなら、男を作らないと。わたしだけじゃ、男の子を産めないもんね」

 また違う方向に行った……。

 彼女の娘の、姑になるという野望は思った以上に強いらしい。一体、何の昼ドラを見たら、ここまで姑になって嫁をいびりたいなどという強い願望を持つようになるのか。

 俺は顔の前で手を振る。

「そうじゃない」

「もしかして、わたしが女の子しか産めないとでも思ってるの?」

「いや、嫁を貰うために必要な過程の話ではなく……」

「うん?」

 これ、本当に拙いんじゃないか?

「え~と、ママと替わって貰える?」

「わたしには飽きたのね」

 俺は額を押さえる。

 何だ、今のセリフは? 男と別れる前にヒステリーを起こす女の常套句ではないか。

「分かった。ここは粘り強く話そう。俺も一緒に住む住人の2/2が昼ドラでしか会話できないなんて悪夢を見たくはない」

「昼ドラこそ、人類最上の至高の創作物」

 何を言っているんだ? この子は?

 とりあえず、俺は深呼吸を入れる。頭ごなしに怒ることも出来ず、理解させるには懇切丁寧に教えないと分からない生き物だ。真剣にならねばなるまい。

 一体、俺は何をしているのか……。

「姑になるのは、随分と先の話だよね?」

「そうだね」

「でも、姑になっていびり倒すのだけが楽しいことじゃないはずだ」

「ママは、それが一番たのしいって言ってる」

 あの女、生涯口を噤んでてくんないかな。余計なことしか吹き込まない。

「いや、ママはそれを一番だなんて思っていない。一番は、君の幸せを思っているはずだ。友達と遊んだり、何か新しいことを発見する度に笑ったり悲しんだり、君の日々の成長を見ているのが楽しいはずだ」

「そうかな?」

「うん、間違いない。だから、姑なんて歳を取ればいつでもなれるものじゃなくて、こういう仕事をしてみたいとか、ああいう風な女の人になりたいとかを教えてくれないかな?」

 彼女の娘は、何かに納得したように頷く。

「な~んだ、そういうことか」

「そういうことだよ」

「じゃあ――」

 理解させるまで長かったな。

「――玉の輿」

 ダメだ。まだ終わってない。

「玉の輿って分かって言ってる?」

「うん。男をマインドコントロールするの」

 玉の輿ってのは、何処かの似非宗教の教祖にでもなることなのか。

「で、一体、どうやってコントロールするの?」

「それは……」

 やっと彼女の娘が言い淀んだ。これが普通だ。

「いいかい? 玉の輿っていう職業はないんだよ」

「玉の輿って職業じゃないの?」

「そうだよ」

 彼女の娘はオロオロとし始めた。

「どうしよう……」

「どうしたの?」

「また作文に書いちゃった」

「…………」

 俺の呼び出しが、また決まった。

「……まあ、それはいいよ。君の知らないところで、誰かが先生に謝ってくれるから」

「そんな親切な人が居るの?」

「案外、君の直ぐ側に居るのかもね」

 もの凄く近くに……。

「色々と話が逸れたけど、将来が姑とか玉の輿とかっていうのは無しってことで理解したかな?」

 彼女の娘は頷くと、先ほどの『将来は何になりたいか?』ということを考え始めた。

「う~ん……。よく分からない」

「何で?」

「将来、何かになりたいっていうのは、なりたい何かがあるからでしょ?」

「そうなるね」

「わたし、姑以外になりたいものないもん」

 その姑を外して考えてくれないだろうか。

「俺が考えから姑を外すか」

 彼女の娘の生い立ちを考えてみる。

 彼女の娘は、物心ついた辺りから母親と離されている。その間は寂しい思いをしていて、一番求めていたものは……きっと、彼女なのだろう。それを手に入れた今、それ以外を望んでいないのかもしれない。

「無理に考えさせることもないか」

「うん?」

「多分、まだ世の中を知らないってことだよ。ママしか知らないから、ママ以外の仕事や遊びを知らないだけ。成長して色んなことを知れば、他に興味があるものも出てくるさ」

「本当?」

「ああ。大人になると、知りたくもない情報まで入ってくるもんだよ」

「そうなんだ」

「だから、君が姑以外に興味が出た時に教えてよ」

「うん、いいよ」

 歩きながらの会話は終わり、やがて近くの公園に辿り着いた。

 偶の休日だというのに公園は閑散とし、誰も居ない。

「皆、引き篭もっているのかな」

「じゃあ、使いたい放題だ!」

 彼女の娘は駆け出すと、ブランコに飛び乗った。

「元気だね」

 俺は彼女の娘の座るブランコまで歩くと、彼女の娘を観察することにした。

「う~ん! うん!」

 彼女の娘はブランコを漕ぎたいらしいのだが、足をバタバタさせるだけで上手く漕げないようだ。俺に視線を向けると、彼女の娘は右手の親指で背中を指した。

「ブランコが壊れてる」

「じゃあ、動かないな」

「そうじゃなくて……」

 何かを思案し、やがて思いつくと彼女の娘の目が爛々と輝く。

「これは二人用のブランコなんだよ!」

 なかなかユニークな発想をする子だ。

 つまり……。

「押せってことだね」

 俺は彼女の娘の後ろに回り、そっと押してやるとブランコは前後に揺れ出した。

「動いた! 動いたよ!」

「二人用だからね」

「そ、そう! 二人用だから動いたの!」

 俺は笑いを堪えながら、彼女の娘の背中を押し続ける。

「一人でもブランコを漕げる方法があるんだけど、教えようか?」

「あとでね。今は愛人のおじさんが押して」

「了解」

 ブランコなんて、俺も久しぶりだ。こんな風に押したことも押されたこともなかったな。人が乗ってるのを見て、勝手に覚えたっけ。

「俺が押す時に勢いがつくの、分かる?」

「わかるよ」

「そのタイミングで足を前に蹴ってごらん」

 彼女の娘は言われた通りに足を蹴り出す。

「あ!」

 今のでブランコの勢いのつけ方が分かったらしい。俺が押し出したあと、タイミングよく足を蹴り出し、ブランコは高く振り上がる。

 暫くは背中を押していたが、そのうち押さなくても彼女の娘はブランコを漕ぎ続けるようになった。

 俺はブランコの見えるベンチに腰掛けると、大きく息を吐いた。

「子供の相手っていうのは疲れるもんだ」

 まあ、疲れる原因となったのは彼女の娘ではなく、彼女のせいなのだが……。


 ――しかし、この疲労感を許せるのは、何故だろうか?


 俺は極度の面倒臭がりで、他人に干渉されて面倒ごとに関わるのを避けてきた人間である。本来なら、彼女や彼女の娘に振り回されるのを嫌悪すべきはずなのだが、それに対して嫌悪することはなく、仕方ないと許せるようになっている。

 一応、この状況を受け入れている理由は頭に浮かんでいる。変な人間の行動を面白いと感じる、俺の性格のせいだ。

 彼女や彼女の娘の性格は、変だ。それもかなりのレベルの変だ。だから、俺が彼女達を見て、次に何を仕出かすのかと、被害が出るにも関わらず待っているという可能性がある。

「だが、これだと、どうにもしっくり来ない」

 何か、後付けして理由を構築している気がする。理由は、もっと単純なのではないだろうか? 俺が彼女達と出会って変わった……とか?

「それも違う。……退屈じゃなくなったんだよな」

 そう、ただ生きているだけの生活に、急に別の要素が加わり、否応なしに変化が訪れたのだ。

「ああ、そういうことか」

 分かった気がする。俺が退屈だった理由……。


 ――俺自身が他人を避けていたことで、同じ日々しか訪れなくて退屈していたんだ。


 しかし、それは仕方がないと思わせて欲しい。俺にだって、付き合う人間を選別する権利ぐらいあるはずだ。その付き合いたいと思わせる人間が周りに居なかったのだから、退屈な日々が続いても仕方がない。


 ――だったら、出会いでも何でも行動を起こして求めればいい。


 そう思う人も居るだろうが、そんな行動を取れる人間は稀だ。そう思える人は、自分の周りにコミュニケーションの取れる人間が当たり前のように居たから吐ける言葉ということに気付いてもいないだろう。自分の趣味趣向と合う人間を探すなんていうのは、本来、手掛かりも何もないものだ。人の心は見えないし、ある程度のコミュニケーションを取らなければ分からない。初めて話す他人には、一歩距離を取りたいというのが人間だ。必要以上のコミュニケーションなど取りたくもない。

 それでも社会人にもなれば、仕事の関係で初めての人との接触が多くなるのだが、その中で、この人となら話をしたいという人間に、俺は会ったことがない。それは俺と会った相手も同じ印象を受けたことだろう。どちらも上辺だけの付き合いなのだ。

 俺は彼女の娘を見る。

「子供は上辺の付き合いなんてしないからな」

 知らないことの多い子供は、それだけで全てに正直だ。楽しければ笑うし、悲しければ泣く。誰もが子供の頃があり、純粋に楽しいことがあったことを心に刻んでいる。だから、子供の頃と同じ純粋な楽しいことを忘れられない。

「大人になっての楽しみって、何処か淀んでるんだよな」

 金が絡んだり、自分の快楽を満たすものだったり……。それが人間という生き物なんだから仕方がないのだが、それでも求め続け、結果、空虚になり退屈になる。

「……もう一つ分かった」

 大人のはずの彼女が魅力的な理由――彼女も建て前なしに正直だ。今まで会ってきた大人の中で、一番自分に正直だ。

「まともな人間よりも、変な人間な方に興味が向くわけだ」

 変であることが他人に分かるということ。それは自分を偽らず表現しなければ分からない。自分らしさを貫けば、他の人と同じであろうとする人達よりも個性が際立つのは当たり前だった。

 俺は声を出して笑っていた。

「保父さんにでもなっていれば良かったかな? そうすれば、俺の趣味趣向に合う人間と毎日会うことになるのだから」

 彼女達に会って、自分というものがよく分かった。それと同時に、今、手に入れた二人の変な彼女の素晴らしさがよく分かる。

「だから、積極的に関わるのをやめよう。俺は彼女達の仕出かす“変”が、とても愛おしい」

 ベンチを立つと、俺は彼女の娘の側へと歩き出す。

「いつまでブランコを漕いでいるんだい?」

「わかんない! なんか全然飽きないの!」

 俺はクスリと笑う。

 なんて正直な感想か。これを子供は馬鹿だからという言葉で片付ける人間も多いだろう。だけど、楽しいと思うことを理由もなく続けられる、何と素晴らしいことか。

「今度は、騙されたと思ってブランコを止めて立ってごらん」

「楽しいの?」

「俺から言ってもいいけど、君が感じてみれば分かるよ」

 彼女の娘は『ふ~ん』と興味なさ気にブランコを漕いでいたが、直に誘惑に駆られてブランコを止めた。そして、ブランコから立つとキョトンとした顔で俺を見た。

「変な感じがする。少し重いようなふわふわしたような」

「人間は慣れるからね。ブランコを漕いで、足が地面に着いていないのに慣れたんだよ」

「そうなんだ」

「直ぐにいつも通りに慣れるさ」

「ふふん♪」

 彼女の娘がにんまりと笑う。

「またブランコに乗る♪」

「今?」

「今度」

 ブランコ一つで、これだけの笑顔。遊園地などに連れて行ったら、どうなるのか?

「君は、本当に魅力的だね」

「口説かれた!」

「違う……」

 そして、この切り返し。明らかに他の小学生を置き去りにした面白生物だろう……これは。

「今度は、何処に行く? それとも、まだ公園で遊んで行くかい?」

 彼女の娘は顎の下に人差し指を立てると、色々と思考している。

 十分に考えるといい。大人になると、本気でブランコを漕ぐなんて恥ずかしくて出来なくなるし、体重制限で使えないものもあるのだ。

「探検する!」

「じゃあ、散歩の続きだ」

 この街の地理を理解している俺なら、彼女の娘が何処に行きたがっても迷わない。俺は探検隊の小さな隊長を先頭に散歩を続けることにした。

「世の中に子供が多い理由が分かるな」

 俺は感じ始めている。

 子供が居ることの楽しさと成長する過程を見る楽しさを……。

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