露天風呂の日
拝啓、猫先生。
梅雨の半ばとはいえ、梅雨らしからぬ天気が続きます。夏日がつづくこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。あまりの暑さに日中は木陰で涼み、涼しくなった夜中に活動されているのでしょうか。
夜の闇は恐ろしいですか。
最近は明かりのせいで暗闇と呼べる暗さはないですね。
真っ暗な闇に身を投じていると、恐怖を覚えたものです。
あの頃は闇よりも、なにもかもが恐ろしかった。
見るものすべてが初めてなのに知っているように語られる。
語る人たちも初めてなのに知っていることが当たり前のようだった。
昔のことを掘り出したところで詮無きことだとはわかっています。
大人という生き物は、そういった物をやり過ごす術を身に着けた存在です。
自分の感情に狼狽えず、自分自身に動揺を気取られないよう、取り繕う。
ひどくずる賢い処世術です。
大人とはかくあるべきだ、と語る書籍の多いこと多いこと。
理性と感情を持っている人間は、その付き合い方に苦慮しています。
子供の頃は感情が勝り、大人になると理性が求められる。
でもどちらも大切で、どちらか一方なんて生き方はしてはいけない。
猫先生の背中はいつだって、そう語っていらっしゃってましたね。
この国の多くは、仕事に生きています。
人生を生きてはいません。
仕事をする生き方が人生だ、なんていうかもしれません。
でも、どんな人生を生きるのかの途中に仕事があるのではないですか。
人生を生きるのもまた難しい。
誰もが一度きりの人生を、まだ道半ば、先に何があるのかしらず歩いています。
歩く中で出会えた人たちともう一度会いたいものですね。
会ってどうするのだろうと考えますが、ただ会いたいです。
もうじき梅雨らしくなるそうです。
雨が降ったら降ったで、いっぱい降るのでしょうね。
どうかお体にお気をつけてください。
敬具
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