第6話

 立っているだけでも汗が出るような、灼けた蒸し風呂ハンマームの空気の中に、礼装をして突っ立っているのは、馬鹿のようだった。

 白い木綿の湯帷子ゆかたびらを着て、陶片タイルで装飾された寝台にうつぶせに寝っ転がり、リューズは湯殿の女に脚を揉ませながら、上機嫌で話を聞いていた。

「そうか、工人たちはやれると言ったか。しかし三月でいいとはな。さすがは我が部族の技術者たちよ。一年ほども苦戦して、勝つときはたった三月とはな」

 リューズはすでに敵の首を取ったかのようだったが、勝つとは限らなかった。

 しかし族長リューズは戦の天才ゆえ、信じて戦えば必ず勝てると思い始めているものは、兵の中には多かった。そしてそれは宮廷においても、徐々に効き目を現し始めた幻想だった。

「楽しみだなあ、シャローム。敵もさぞかしびっくりするだろう。俺もお前たちと共に先陣を切るよ」

 にこにこ話すリューズに笑い返して、宮廷服のシャロームは汗だくだった。

 リューズは連日、暇さえあれば湯殿で蒸し風呂ハンマームに籠もっているとかで、話すにはここに来なければならないらしかった。

 シャロームは、リューズと付き合うために、日々さんざん汗をかかされ、砂牛のように水を飲んだと言っていた。こっちも脱げば、いくらか涼しかろうが、族長の前では礼装するのが鉄則だから、そういう訳にもいかない。

「やっぱり行くのか、リューズ」

 訊ねつつも、止めても行くのだろうなと、イェズラムは思った。長らく歯ぎしりさせられた渓谷に、秘密の抜け穴を掘って、そこから奇襲するなどという、面白みのある作戦に、リューズが自分で行かないわけはなかった。

「行くに決まっているだろう、イェズよ。俺はこの作戦を考えた張本人だぞ。遂行を見届ける責任がある。それに族長が行くと知っていれば、工人たちも仕事の手を抜かず、穴掘り仕事を名誉に思うだろう。なんせ俺の勝利の花道を掘る仕事なのだからな」

 ついこの間、無様に震えていた者とは思えないような、自信たっぷりの尊大さで、リューズは上機嫌に言った。

「いてててて……そこは痛いぞ」

 足裏を揉んでいる女に、リューズは本気で痛かったらしく、焦った風に伝えていた。

 女は恐縮したふうに頭をさげ、手を変えたようだった。

 もっと痛いところをどんどん揉んでやれと、イェズラムは内心思った。

 そういう、いい気になったリューズの姿を、汗を垂らして眺めているシャロームの胸中を察すると、イェズラムはぼんやりと腹が立った。

 あと二、三戦で命が尽きるかと話しに来たときの、シャロームの顔は、いつもの乱暴者の面構えではなかった。自分の一生がもう終わるのが、嘘のようだという顔をしていた。

 それも当然で、シャロームはイェズラムより若く、まだ死ぬような歳ではなかった。身の不運で、石の育ちが早いようではあるが、近頃その進行が急激だったのは、リューズのせいだ。

 無分別に敵陣に突撃する族長を護衛するため、シャロームはおそらく無理をしている。それでも石が中に向かって育つので、そういうこともあるとは思いついていないリューズは、まださして大きくない灰緑色の石を見て、シャロームには支障がないと信じているのだろう。

 こいつは死にかかっているのだと、リューズに教えてやるべきだろうか。そうすればリューズも、魔法戦士たちと一緒に突撃するのは止めると言うかもしれない。シャロームがいつの間にか死んでもかまわないとは、リューズは思うまい。せめて、しかるべき英雄譚ダージを思いつくまで、留め置こうとするはずだ。

 それとも、シャロームを待機させて、あとの二人だけを従えていくつもりだろうか。ヤーナーンは火炎術士で、ビスカリスは治癒者であり、念話と石化術の使い手だった。敵からの攻撃を迎撃してやれるのは、風刃術を用いるシャロームだけだ。そのシャローム抜きで、イェズラムはリューズに突撃を許すつもりはなかった。

 今から他の、迎撃の役に立つものと、置き換えるか。

 イェズラムは、自分から離れて立っているシャロームを見やった。こちらを見返すシャロームは、デンが何を思案しているか、分かっているぞという、苦みの強い苦笑を見せた。

「リューズ、司令塔のを倒すのか。俺にやらせてくれ」

 何を思ったのか、シャロームは急に、そんな頼み事をした。リューズは自分の腕を枕に顔を伏せていたが、不思議そうに顔を上げ、シャロームを見た。

「なぜだ、シャローム。あれはイェズラムの獲物だ。今回はイェズラムに英雄譚ダージをやろうと思って、わざわざ考えたんだ」

デンにはもう、いくらでも英雄譚ダージがあるだろう。俺にもそろそろ派手なのが、回ってきてもいい頃合いだ」

 強請ねだる口調のシャロームに、リューズは声もなく笑った。

「お前はまだ先でいいよ。イェズラムのほうが年長者だし、こいつの石を見ろよ。こいつのほうが先にくたばるんだ。道を譲ってやれよ、シャローム。それが派閥のデンに対する、礼節だろう」

 リューズに言わずもがなのことを諭され、シャロームは苦笑したまま、無念そうに首を振った。

「年功序列か……それは仕方がない。それは道理だが、リューズ……この糞ったれが」

 唐突に悪態をついて、シャロームはくるりと背を向けた。蒸し風呂ハンマームを出る扉に向かう、遊び仲間の魔法戦士を、リューズは唖然として見守っていた。

 シャロームが後ろ手に扉を閉めるのを、イェズラムは伏し目に見つめた。

 確かにここは、汗をかくためのの部屋で、ひどく暑かった。それにしても、シャロームは汗をかきすぎていた。顔色も良くはなかった。

 たぶん、堪えきれずに出て行ったのだ。暑いのがではなく、石が痛むのが。

 リューズはイェズラムに言い渡されたことを真に受けて、麻薬アスラを抜くために蒸し風呂ハンマームに籠もっているのだった。だからシャロームも、ここでは煙管きせるを吸うわけにはいかない。そしてそのまま薬が切れたら、痛みが襲い、耐え難くなってくる。

 その話をシャロームは、リューズにしたくなかったのだろう。まさかひっきりなしに吸っていないと、耐えられないほど痛いとは、知られたくなくて。

 知られれば先陣での護衛から、自分が外されるのは目に見えていた。シャロームは与えられたその役目を、誇りに思っているらしかった。

 この次や、さらにその次のいくさが、今回のような、派手なものである保証はない。もしやあいつは、いっそこの一戦で死のうかと、覚悟を決めて頼んだのではないのか。どうも盛大になるらしい、名君らしい勝ち戦を、自分の死に場所にしたいと考えて。

「あいつは口が悪いよなあ、イェズラム。本当にお前のジョットか」

 リューズが上機嫌に水をさされたという口調で、文句を言ってきた。しかし怒っているのではなかった。シャロームの気安い悪態を、こいつは案外気に入っている。ただ今は、なぜ悪態をつかれたか分からず、その不可解さに不機嫌なだけだ。

「シャロームは意味無く悪態はつかない」

 イェズラムは教えてやりながら、懐から取りだした布で、顔の汗をふいた。

「あれのどこに、どんな意味が? 仕方ないだろ、順番だ。なるべく皆に見せ場をやりたいが、お前は誰かと武功を分かち合うような、寛大な英雄ではないだろ」

 脚を揉み終えたらしい女が、杯によく冷えた水を入れてきて、リューズにうやうやしく差し出した。結露が汗のように、銀杯を滴っていた。

 リューズはうつぶせのまま、美味そうに水を飲んだ。

「今回のは、シャロームに譲ってやってもいい。あいつが、どうしてもと言うなら」

 喉を鳴らして飲んでいるリューズに、イェズラムは答えた。

 その答えは、リューズには気にくわなかったようだった。飲み干した銀杯を、リューズは蒸し風呂ハンマームの華麗な陶片装飾のある壁に投げつけた。

「今さら無理だ。お前のために考えてやったネタだろうが。俺の苦労も顧みず、いい気なものよ、エル・イェズラム」

 ふて腐れたふうに言うリューズに、イェズラムは沈黙で答えた。

 お前もな、と、嫌みを言ってやりたかったが、シャロームにも面子めんつがあろうから、それを保ってやらねばならなかった。本人が黙っているのに、自分がここで、お前もシャロームの苦労を顧みていないと言って、事情を暴露ばくろするのでは、あまりに心ない。

 だが、もし近々の、どこかの戦場において、シャロームが自分の見ている目の前で、突然死んだら、リューズはどう思うだろう。仕方なかったと思うだろうか。

 いいや、そうは思うまい。リューズはそういう性格ではない。恩義のある者には心を尽くすたちだ。

 だからもし、そういうことになれば、リューズにはいい薬だ。魔法戦士はおとぎ話の英雄ではない。皆、生身の体で生きており、その死は英雄譚ダージうたうような、華麗なものではない。

 それでも彼らを使い潰して戦うしかない。それがつらければ、族長冠を戴く身で、魔法戦士を友人にすべきでない。

 リューズもそろそろそれを、悟ってもいい時期だ。

 彼らは家臣であって、友ではないのだと。

 しかしそれを、シャロームにやらせるか。もしもそれをやれるなら、この上ない忠義かもしれないが。あっちも案外、友のつもりで、付き合っているのではないか。この訳の分からん族長と。

「朗報がある」

 イェズラムは静かに告げた。

「なんだ、勝ち戦に優る朗報などあるものか」

 リューズはまだ不機嫌らしかった。腕にあごを乗せて、知らん顔していた。

懐妊かいにんした」

「お前がか」

 ふん、と鼻で笑って言うリューズは、可愛げがなかった。イェズラムは渋面じゅうめんになった。

「お前の側室たちがだ」

「誰がしたのだ。十人もいると誰だか見当がつかない」

 本当に見当がつかないらしく、リューズは教えられるのを待っている顔だった。

「全員だ」

 リューズは心底驚いた顔をしていた。

「そんなのありか」

「申し分のない戦績だな。流産、死産もありえるし、そのうち何人が男子を生むか、あとは運任せだが、まさか全員が女児ということはあるまい」

 半々としても、五人は男子が生まれるはずだ。

 しかし、これからが後宮では戦になるだろう。

 次代の族長は当代に指名されて決まるおきてではあるが、たとえそれ自体に意味がなくても、長子をげることには名誉がある。

 後宮には後宮の英雄譚ダージがあろうから、側室たちも、その栄光を掴もうと激戦するだろう。念入りに警護させねば、生まれる前に胎児が食い合う羽目になる。

「そりゃあ……やりまくった甲斐かいがあったよ。男子を挙げたら、俺もいいかげん、気に入った女と寝ていいか」

 そう言う割には、深刻な顔で、リューズは尋ねてきた。

 リューズは側室たちが好きでないようだった。もともとからして、惚れてめとった正妃ナオミ姫が、政争のさなか、過分な寵愛ちょうあいのツケを払って死んだので、リューズはおのれの放蕩を批判する宮廷の不満をなだめねばならず、急ぎ世継ぎも必要だというので、やむなく有力な諸侯の娘をまとめて全員妻にしたような次第だった。

 ナオミ姫は、亡きアズレル様の未亡人だった。リューズは本当に好きだったようだが、他人のお下がりでは、結局、族長妃として適切な人物ではなかった。

 死んでくれてよかったのだが、正妃の冠には未だに主がおらず、正式な婚姻をした妻のいないリューズは、おおやけには独身だった。

 めぼしい有力な諸侯の娘は一通り側室にしてしまったし、その中からひとり格上げして、二番目の正妃を作るかだが、誰にするかの決め手に欠けた。女たちが後宮で争うのに任せておき、リューズはそれを眺めはするが、特に誰かひとりを寵愛するということがなかった。

 すでに娘をひとり後宮にあがらせておきながら、その姉妹をさらに正妃にという野心に対しては、リューズはけろりとして、そのような淫蕩いんとうは神殿が許すまいと答えるばかりだ。

 どうも、誰も正妃にするつもりがないらしい。

 それにはイェズラムは賛成だった。

 玉座の権力はまだ盤石ばんじゃくのものとは言えない。強力な諸侯とあまりに深く結びつくと、増長した婚家に、引きずられるかもしれなかった。

 全員を側室にとどめて、果てしなく相争わせておくのがいい。

 時には正妃の冠をちらりと見せるだけで、それが弱みの相手を、容易く幻惑することもできる。

 側室の子では、神殿は婚外子として見なすので、継承のときには正妃の養子とする習いだった。リューズにはそのための正妃がいないことになるが、その時には、指名した者の生母を正妃にしてやればいいのだ。

 継承指名は当代族長の臨終りんじゅうとこで行うものだった。そのとき結婚して、そして指名して、死ねばいい。死によって婚姻は解消され、それで終わりだ。

 リューズがそこまで考えてやっているのかは、謎だった。

 たぶん、深くは考えていないだろう。正妃の座を、ほかの女に与えるのがしゃくなだけだ。

 悲惨だった即位前の時代に、ほとんど誰も自分を省みなかった宮廷で、優しくしてくれた女に、未だに義理を感じているのだろう。案外これでも、リューズは純情なやつだ。

 それでも政治的な辻褄つじつまは合っている。実に不思議なやつだった。巧妙な策士とも、感情だけで動く馬鹿とも、どうとでも読める。

「お前に、ナオミ姫のほかに、好きな女ができたのか」

「いや、そうではないんだがな。あんまりではないかと思うのだ。後宮に無数の美女を囲っておきながらだな、無駄な矢は射るなというお前が怖くて、嫌々めとった十人としか寝られないというのは。族長職に苦難が多いのは我慢するが、たまには役得やくとくがあってもいいんじゃないのか」

 リューズが眉間に皺を寄せて、真剣にその話をしているのが可笑おかしくなり、イェズラムは堪えようとしたが、結局失敗して、喉を鳴らして笑った。

「まったくお前はな、身勝手なやつだよ、リューズ。お前の妻たちも気の毒なことだ。泣く泣く連れてこられたのは、向こうのほうだろう。実際はじめは、泣き暮らしていた者もいたようじゃないか」

「それは仕方ない。俺がよっぽど嫌だったのだろう」

 リューズはむすっとして、ぶつぶつ答えた。

 宮廷育ちのリューズは、都会の美女に慣れていて、地方の諸侯の娘たちの、ひなびた深窓しんそうかたくなさとは、折り合いが悪かったのだろう。

 そんな箱入りの、なよやかな姫君たちが、名だたる百戦錬磨の玉座の間ダロワージの女官たちや、竜の涙の女戦士たちのようにはいくはずもない。

「お前が愛してやらないからだ」

 イェズラムは苦笑して教えた。相手は王族に美しい夢を見ているような、田舎の令嬢たちだったのだ。

「めそめそ湿っぽい女は嫌いなんだよ、俺は。弱っちいのも苦手なんだ。それでも我慢してるだろ。ちゃんと全員はらませただろ。その血のにじむような努力をな、お前は少しはめろ」

 リューズは恨めしそうに、そう言った。まるで何もかもお前のせいだという口調だった。

 それにイェズラムは呆れた。確かに、一日も早く世継ぎをもうけろと口うるさく忠告したが、それは王統を維持する上での当たり前の義務だった。その常識を教えてやっただけで、指図したわけではない。

「さっきめたろう。申し分のない戦績だと。側室たちの腹が埋まっている間は、好きなのと寝ればいいさ」

 呆れた顔を隠さず、イェズラムはまた教えてやった。

 まさかリューズでも知らない訳はないだろう。ひとたびはらんだ女の腹に、追加でもう一人仕込むことはできないという事実は。

 それともまさか、双子や三つ子はそうやってできると思ってはいまいな。

 その辺のからくりを、自分は教えたことがあるか、イェズラムは急に不安になった。そんなことは話したことがないはずだ。リューズは色事めいた話は、玉座の間ダロワージの恋のさや当てから、いつの間にか憶えてきていたのだ。宮廷の、途方もなく下らない猥談わいだんを、事実と思っていたりはしないか。

 だがその件を、今ここで率直に聞くのもどうかと思えて、イェズラムはただじっとリューズを見つめ、押し黙っていた。リューズはもう機嫌がいいらしく、汗をかきながら、にこにこしていた。

「まあ、とりあえず俺はひとりで寝るよ。当座、なんのしがらみもなく、ひとりで寝こけるほどの快楽は、そうそうないぜ、イェズラム。のんびり朝まで、勝ち戦の夢でも見るよ」

 屈託くったくなく喜んでいるふうなのを見て、イェズラムにはまた苦笑が湧いた。

 知ってか知らずかは、この際どうでもいい。とにかく側室たちは皆、無事にはらんだのだし、勝てば戦はそれでいいのだ。正攻法かどうかなど、この際、敢えて問う必要はない。

 いかなる戦場においても、族長リューズ・スィノニムはそれでよい。こいつは道の上を歩くような玉でなく、自ら道を作って進む大器たいきだ。そう信じて、ほうっておけばいい。

 よろけたときだけ、支えてやれば、あとは自分で上手に歩く。幼い頃、初めて歩いたときから、リューズはそうだった。

「それにしても暑くてたまらん。俺はいつまで蒸し風呂ハンマームにいればいいんだ、イェズラム」

 リューズは呻いて、それはこちらの台詞だと思うようなことを言った。汗を拭って、イェズラムはまた少し、唖然とした。リューズはまるで、自分に言われてここに閉じこもっているような口ぶりだった。

「出たければ出てくれ。お前につきあって、シャロームも俺も、わざわざこんなところに礼装で立たされていたんだぞ」

「なんだと、イェズ……それはとんでもない話だぞ」

 両手で顔の汗をぬぐって、リューズがぼやいた。

「お前が、蒸し風呂ハンマームで酔いを抜けというから、連日こうして、我慢大会だったんだろうが。それこそ干涸ひからびるくらい汗をかいたけどな、さっぱり酔いが抜けないんだよ。なにかこう、気分が高揚して、走り出したいというか……ずっと興奮したまんまなんだ」

 そう言って、自分の白い手のひらを見るリューズの黄金の目は、確かにいつもにまして爛々らんらんとしていた。まさしく壁画の太祖の、闇夜にも燦然さんぜんと輝く明るい星のごとき、王家の黄金の目だった。

「そんなに長く薬が抜けないわけはあるまい。あれから吸ってないのだろう」

 イェズラムは確かめた。

「吸ってない。でも、いつもより深く酔っている気がする。戦地での高揚を想うと、むらむらしてきて夜も寝られん」

 ああ、それでかとイェズラムは納得した。薬を抜かせて体調がいいせいかと思っていたが、勝ち戦の予感に興奮していただけだったのだ。それが後宮での戦の、勝因だったのか。

「それならもう、蒸し風呂ハンマームを出て、水でも浴びて、氷菓でも食ったらどうだ。お前は麻薬アスラで酔っているわけじゃない」

 イェズラムが教えると、リューズは、そうなのかと意外そうな顔をした。

「じゃあ何に酔ってるんだ、俺は」

「お前の中の、王家の血にだろう」

 自分自身の中で作られる何かに、お前は酔っぱらっているんだ。

 イェズラムがそう教えると、リューズは得心できないという顔だった。どうも本人には、それが分からないらしい。

 別に分からなくていい。たとえ分からなくても、その酔いはいずれ遠からず、玉座の間ダロワージを酔わせ、全軍を酔わせ、部族領にあまねく拡大する。

 やがて全土が族長リューズ・スィノニムに酔いしれる日が訪れたとき、始めには俺ひとりの目にしか見えていなかったお前という星の光輝は、まさに燦然さんぜんとまばゆく輝く名君の光として、部族史に誇らしく記されるだろう。

 そうだといいと願って、玉座に座らせたのだが、俺が名君の大英雄になるには、あとどれくらい生きて、どれくらい面倒をみないといけないのか。

「なんだかよく分からんが、氷菓は食いたいよ。シャロームにな、皆で冷たいものでも食って、機嫌を直そうと言ってくれ。どんな英雄譚ダージにしたいのか、話ぐらいは聞くから」

 シャロームもへそを曲げて、困ったものだという声で、リューズは頼んできた。

 イェズラムはうなすいた。とにかくもう、ここにいるのは暑くて敵わない。

「楽しみだなあ、我が英雄イェズラムよ。お前の勇姿を、また拝めるよ。早く出陣したいものだ」

 起きあがりながら、うっとりと上機嫌に言うリューズに、イェズラムは苦笑を隠す深い一礼をして、蒸し風呂ハンマーム辞去じきょした。

 まったくリューズは夢見がちで、いい気なものだった。

 そのおとぎ話に付き合わされる英雄たちは、命からがら血反吐ちへどを吐く毎日だ。

 それでも名君が甘美な酔いのある夢から醒めぬように、都合良く振る舞ってやりたくなるのは、こいつの人徳のなせる技か、それともあんまり子供みたいで、世話が焼けるからか。

 イェズラムがそれを考えながら湯殿にある談話室サロンまでいくと、そこの円座にぐったりと側臥そくがして、シャロームが煙管を吸っていた。

 寝ているのかと思ったが、ぷかぷか煙をふかしているので、どうもふて腐れているだけだった。

「エル・シャローム、族長がお前と氷菓を食って、機嫌を直させるそうだ。ヤーナーンとビスカリスを探して、氷菓といっしょに族長の部屋へ行け」

 そう命じても、シャロームは目を閉じたまま、煙管きせるをふかして寝っ転がっていた。

 反抗的な態度だなと思ったが、イェズラムはとがめる気にはならなかった。

 側の席に座って、イェズラムはシャロームが何か言うのを待った。

 部屋は涼しかったが、汗で濡れた服が冷えて、居心地は良くはなかった。

 それでもシャロームはまだ、脂汗をかいていた。

「もっと強い薬ないかな、兄貴デン……」

 かすれた声で、シャロームが寝たまま尋ねてきた。

 イェズラムは考えて、シャロームがくゆらせる煙の匂いを嗅いだ。

「さあな。施療院せりょういんに行ってみろ。何かはあるだろう、脳まで溶けるようなのが」

 ぼんやり教えてやると、何か面白かったのか、シャロームは苦しそうに笑った。

「俺が死にそうって、リューズに言わないでくださいよ」

「言ってない。言いたければ自分で言うがいい」

 頷いて笑い、シャロームはやっと身を起こした。億劫おくうそうに座り直して、今さらこちらに頭をさげたシャロームに、イェズラムは目で答礼してやった。

 こころなしか背を丸めて座るシャロームには、いつものような覇気はきがなかった。

「すみませんでした。族長に一礼もせず」

 なぜかその件を、シャロームはイェズラムに謝った。

「別にいい。他に誰もいなかった。それに、何かと我慢ならなかったんだろ」

 心中は察するがとほのめかすと、シャロームは返事をしたのかどうか、曖昧あいまいな音で答え、深いため息をついた。

 疲れているようだった。それは疲れもするだろう。あれに付き合わされたら。

「無理をするなシャローム。必要なら、戦場にはあと一人二人、役に立ちそうなのをお前の下につけてやることもできる。魔法を出し惜しめば、そのぶん命も延びるんだぞ」

 イェズラムが諭すと、シャロームは床を見たまま、わかっているふうに小さく頷いていた。

「そうですね、デン。俺もそろそろ、遅ればせながら、後釜あとがまを育てるべき時です」

「そういうことは気にするな。俺がやる。お前は自分の延命を考えればいいんだ」

 シャロームはその話に、どことなく上の空で頷いていた。なにかを回想するような表情を、シャロームはその灰色の目に浮かべていた。

 その物思いは、ずいぶん長いようだった。ちらちら揺れる瞳が、今ここにはない何か激しいものを、見つめているようだ。

 やがてシャロームはぽつりと、独り言のように口を開いた。

「怖いと思ったことがないんです。族長と突撃するときは、いつも」

 なんの話かと、イェズラムはシャロームの横顔を見つめた。

「普段、ひとりで考える時には、このままだと長くないと思って、死ぬのが怖い時もあるんですが、なぜか、族長と先陣を切ると、俺は自分が、無限に魔法を使えるような気でいるんです。族長が行く、進路を塞ぐ敵を、手当たり次第に倒すと、すごく気分がいい。このままずっと、戦い続けていられたら、きっと……」

 シャロームは自分がしている話が、まともかどうか、不審がるような顔をして、いっとき言葉を呑んでいたが、結局、その続きを話した。

「きっと俺は、本物の英雄になれると思えて、まあ、それもいいかと。それはそれで、本望かと、思っているような気がします。いつも、その時には」

 だから何だと、イェズラムは答えかけ、それを堪えた。

 それはたぶん、シャローム、お前が何かに酔っぱらって見た、妄想だ。そうやって戦い続けたら、お前はもうすぐ死ぬ。なんでもないそこらの戦場で、突然死ぬのかもしれないのだぞ。

 英雄的にという保証はない。誰も気がつかないうちに、お前に最後の時がきて、皆は戦場に、乗り手を失ったお前の馬だけが駆け抜けるのを見つけ、お前は冷たい血泥けつでいのなかで、ひとり悶死もんしするような、そんな最期オチかもしれないのだ。

 それでも本望と言えるのか。

 いくら馬鹿で、直情的なお前でも、仮にも英雄だというなら、もっとましな死に方をしろ。

「俺もせめて、もうちょっと若けりゃよかったな、デン。あの癒し系のやつみたいに。そしたら名君の物語の、完結までとはいかなくても、あと二、三巻先の、話の盛り上がったところまで、付き合えたかもしれないのにな」

「それだと序盤の巻にお前はいないことになるぞ。話の筋も決まり切った頃合いに現れて、山ほどいる名君の英雄たちと押し合いへしあいするうちに、ころっと死んで退場するような、ほんのちょい役が関の山だよ」

 リューズが本物の名君として名実ともに認められればそうだ。全宮廷が、あいつに跪く。その時は魔法戦士たちも、星を見上げるたくさんの顔のうちの一つにすぎなくなる。

 星はその顔のひとつひとつの名を呼んで、友よと微笑みはしない。族長とはそんな、気安いものではない。玉座の高みから冷たく見下ろして、英雄たちが死んでも、それには気づきもしない。そういう薄情で、手の届かない存在だ。

 リューズもいずれは、そうならざるを得ないだろう。いつまでもシャロームたち三人と遊びたわむれ、俺のことをデンと思って生きていくわけにはいかないだろうから。

 そう思うと、寂しかったが、そんなことは問題にならないと、イェズラムは思った。感情など。竜の涙にとって、そんなものは、踏みにじられるためにあるようなものだ。

「そうか、じゃあ、序盤で良かったのかなあ」

 シャロームは真面目に思案する顔だった。

 難しそうに眉間に皺を寄せて、こちらを見ている弟分ジョットを、イェズラムは微かに苦笑して見つめ返した。

 見ればまだ若かった。それが死ぬと思うと哀れで、どうにかならんものかと思えたが、どうにもならない。運が尽きればそれまでで、死に行く竜の涙を引き留める、そんな魔法は、どこにもないのだ。

「シャローム、先陣を切る族長の右を、いつも同じやつに走らせるつもりは、俺にはないんだ。それをやるのは、後にも先にも、お前たち三人だけだ」

「どうしてですか」

 しかめた顔で、シャロームは不可解そうに訪ねた。

「リューズの性格だ。あいつはお前らが死んだ後、代わりの魔法戦士で後を埋めはしない。突撃するのは止めないだろうが、自分を名前で呼ばせるようなのを、新しく選びはしないさ」

「どうしてですか」

 同じ言葉で再び問うてくるシャロームは、さらに不可解そうな顔だった。イェズラムは困って、シャロームに笑いかけた。

「お前が死ぬと、あいつは悲しいからさ。リューズはお前らのことを、友達だと思っているんだ。お前は誰か自分の友が死んだとして、誰か他のやつがその代わりをやれると思うのか」

 目をまたたいて、シャロームはしばらく考え、そして言った。

デン、分かんないです。俺には。でも俺は、そういう族長のときに、英雄やっててよかったな。そこには運がありましたよ」

「そうだな。お前みたいな馬鹿でも、力業ちからわざだけで活躍できる時代だよ」

 イェズラムは思わず、考えたそのままのことを言ってやった。

 シャロームはそれに、参ったという顔をして、にやりと笑った。その顔には古い傷の跡があった。

 そういう傷跡は、シャロームには沢山あるはずだった。治癒者の施術を嫌って、それを拒むので、傷が自然に治癒したあとにも、傷跡が残るからだった。

 なぜ治癒術を拒むのか、かつてイェズラムはシャロームを叱ったことがあったが、シャロームは治癒者が嫌いだというのだった。彼らに生殺与奪せいさつよだつを握られて、足元を見られているようで、不本意だったのだろう。

 もしも負傷して死ぬなら、それが自分の運命で、自分は死を恐れないからと、若い頃にはそう言っていた。運が尽きれば死ぬのが定めと、潔く割り切って戦うのが、男の戦いだと。

 ずいぶん青臭い見栄だと思えるが、それがシャロームの、リューズと気の合うところだった。

 リューズは突撃するとき、治癒者を連れて行くのを拒んだ。突撃して死ぬなら、それが運命で、そんな弱い運の者には、部族を率いることはできないと、リューズは随分ずいぶん確信めいて言っていた。

 敵をこの目で見ずに戦って、勝つことはできないし、自分自身が先陣に立たずに、魔法戦士たちに突撃を命じることはできない。どこにいるんだか分からないような後ろのほうから、死ぬ気で行けと命じるやつがいて、誰がその命令に喜んで従えるだろうかと、リューズはごねて、結局イェズラムの制止を聞くことはなく、毎度毎度とっとと突撃し、けろりとして生きて戻ってきた。

 なんとか隠れ治癒者のビスカリスを紛れ込ませたので御の字と、諦めるほかはなかった。

 しかしビスカリスが族長の警護において、治癒者として働いたことはない。リューズは彼が、詩人だから連れて行くのだ。ビスカリスには詩作の才能があるらしく、やつが念話で出先から送ってくる族長の様子を語る口調は、いつも従軍詩人たちの株を奪った。

 元々は、敵陣を駆けめぐるリューズとともに動き回る大本営と、全軍との連絡をとり、あるいはこちらが族長の安否を常に知るために張り付かせたのだったが、今ではどちらかというと、ビスカリスは景気のいい即興そっきょう英雄譚ダージを、全軍に向かって念話で怒鳴るためにいるようなものだった。

 その叙事詩じょじしの中で、族長リューズは勇猛果敢に敵を恐れず、エル・ヤーナーンは派手に火炎を撒き散らし、進路を切り拓くエル・シャロームの風刃術ふうじんじゅつえにえていた。

 我らに続け兄弟たちよと誘う念話の声を、兵たちは族長の言葉だと思って聞き、それによって志気はいつも激しく高揚した。

 誰がどんな才能によって優秀か、やってみるまで分からないものだ。おそらく魔法戦士は誰しも皆、大なり小なり英雄になれるのだろう。名君に仕えて、命がけで働くかぎり。

デン

 真面目なつらをして、シャロームが改まって言った。

「なんだ」

「名君双六の件だけど、俺はリューズの出目を、実はほとんどいじってなかった。あいつは本当に全然死ななかったし、本当にやたらと『イェズラムに怒られる』で止まるんだ」

 それが不思議だというように、シャロームは感心して話しているが、イェズラムはどう思っていいか分からず、とっさに難しい顔をした。

 シャローム、お前はそれでは、実は賽子さいころ任せで、リューズに典医や女官の服をがせたり、夜光虫を食わせたりしていたのか。

 どんな忠臣だ。お前は本当に、俺の頼んだ仕事をやっていたのか。

「人には運てものがあるでしょう、デン。俺は運のないほうだから、余計に分かるけど、リューズにはきっと、ものすごい強運がありますよ。あいつはきっと、何か凄いものになる。それが名君かどうか、俺にはわからないけど、とにかく何か、もの凄いものに」

「もの凄い馬鹿な暴君かもしれないぞ」

 先行きを悔やんで、イェズラムがぼやくと、シャロームは面白そうに、声をあげて笑った。

「それはないよ、兄貴デンが手綱を取ってる限り。俺も一応、ちゃんと英雄になったじゃないですか。怖くてできないんだって、大した悪さは。また兄貴デンに怒鳴られると思うと」

 よく言うよと、イェズラムは項垂うなだれた。

 お前もリューズも他の連中も、何かといえば世話かけやがって。危なっかしいわ腹が立つわで、正視に耐えないんだよ。時には哀れで、可愛くもあり、なんとか守ってやりたいが、結局なにもしてやれないし、それぞれ一人で歩いていくのを、はらはら心配して見ているほかには、うるさく説教するぐらいしか、できることもないのに。

 まさかお前が、俺より先に死せる英雄になるとは。シャローム。

「すまなかったな、シャローム。お前に変な役目を押しつけて。リューズは我が儘だから、お前もいろいろ困っただろう」

「そんなことないですよ。兄貴デンが族長の警護役に、俺を選んでくれて、感謝してますよ。まさか夜光虫まで食うはめになるとは、思ってなかったけど」

「お前も当たったのか、『夜光虫を食う』に……」

「いや、食わされたんですよ、リューズに。忠臣なら主君と苦楽をともにしろっつって。あれは不味まずいです、今まで食ったものの中でも最低です」

 忠告めいた口調で真剣にそう言って、それからシャロームは笑った。

「でも、あいつといるのは楽しいな。本当に最高です。最後の瞬間まで、げらげら笑って一緒に走り抜けますよ。英雄と出るか、馬鹿と出るかは、この際、名君双六の賽子さいころ任せです」

 冗談めかせて笑って話し、シャロームは立ち上がった。その姿には、もういつもの生気がみなぎっていた。

 もうじき死なねばならないというのが、何かの間違いではないかと、イェズラムは思った。しかしそれは、願望だったろうか。

施療院せりょういんに行って、それから氷菓と族長の部屋へ行って、機嫌を直します」

「もう変なもんを食わせるな、シャローム。双六すごろくもやめてくれ」

 イェズラムは、シャロームに言った。それは命令のつもりだった。

 しかしシャロームは、にやりとして、頷きながら答えた。

「保証しません、デン。リューズは誰かが止めるのを、聞くような玉じゃないから。知ってるんですよね、それは。骨身にしみて。いいかげん、そろそろ、覚悟決めたらどうですか。なんせデンは、何もかも知ったうえで戴冠たいかんさせた張本人なんですから」

 にやにやして言うシャロームと真顔で見つめ合い、イェズラムはどことなく、呆然とした。

 深々と一礼して、シャロームは部屋を出て行った。

 その知った風な口調が生意気に思え、イェズラムは渋面じゅうめんのまま鼻で笑ったが、シャロームの言うとおりだった。

 リューズは制止を聞くような玉ではない。まして三人もいる目付役が、すっかり酔わされて、誰も制止しないのなら、なおさら増長するだけだ。

 まったく毎日頭が痛い。

 イェズラムは内心にそう愚痴ったが、しばらく頭に食らいついていた頭痛は、すっかり晴れていた。あたかも、名君の戦勝を予感する静かな高揚が、頭の芯からゆっくりと、石に冒された脳の苦痛を、深い酔いに痺れさせているかのようだった。

 再びの王都出陣まで、あと半月ばかり。

 文字通りの突貫工事に向けて、王都や近隣の都市から、工人を根こそぎ集めさせていた。

 そんな作戦に本当に勝機はあるのかと、王宮でごねる軟弱な連中も、あの手この手で根こそぎ蹴散らしてやった。

 玉座に対したてまつり、勝てるかどうかとく者は、不忠者だ。勝利は待つものでなく、戦って掴みとるものだ。

 かくなる上は、着慣れた甲冑に身を包み、稀代きたいの名君と見込んで掲げた星を担いで、忠節を尽くすひと戦を、勝つまで戦い抜くだけだ。

 穴掘りディガーデンの花道か。

 あいつは本当に、面白いことを考えるやつだと、イェズラムは改めて胸中に、得意げなリューズの笑みを反芻した。

 あいつが次の巻ではどう出るか、それがあまりに気がかりで、死ぬに死ねない。その物語ダージが『名君の死』であがるまで、我が目で見守りたいというのは、石を持ったこの身の上には、途方もない野望だが、それでもまだ、どちらか片方だけでも、目玉の残っているうちは、あいつに付き合って、俺もいっしょに走り抜けようか。

 シャロームのように、げらげら笑ってというわけには、いきそうもないが。

 疲れた渋面で、イェズラムはそう思い、自分も立ち上がった。奥から出てくるらしい上機嫌のリューズが、妙な内容の鼻歌を歌っている声が聞こえたからだった。

 そんな高貴なる血筋の族長らしからぬ振る舞いに、この口がうるさく小言を言い始める前に、さっさと退散するのがよかろう。

 たまには、あいつにも気晴らしを。

 渋々ながらも、そう意を決して、イェズラムは足早に、湯殿から立ち去った。

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