日本と独逸を結ぶ壮大でミステリアスな人間模様の二部作です

第一部は中古品店の店主が主人公ですが、第二部はキーパーソンとなった録音技師が中心人物となっています。つまり一冊の長編小説を読んで、二つのミステリーを楽しめるという構成になっています。
舞台設定も東京、甲府、京都そして中国、ロシア、ドイツなど、世界をまたにかけて巡るなど、本人の体験談をもとにしているのかわかりませんが、スケールの大きさを表現する思いを感じます。
ただ時代背景が現代の描写から大正・昭和の時代に飛ぶなど、読み返しをしないと作者の意図を理解するのにやや苦労するかもしれません。
また理科系の話がよく出てきます。文化系の読者としては難しそうな話題には素人にもわかるような補足説明してほしいし、登場人物のキャラクターが反映するエピソードやドロドロした人間関係を描いてもほしいです。
一話ごとにテーマをしぼって書いているので読みやすいですし、物語の展開が意外なのでわくわく感があります。なので、面白そうなストーリーになると確信するところは、もっと厚化粧をしてもらうとおいしいですかね。
最後に、第一部のエンディングが良かったので、とくに二部作にしなくても旗島真が登場した部分で、回想する形をとってもよかったのではないでしょうか。
それでも続きをみないで寝ると夢に出てくるような物語なので、最後まで読み届けたいと思います。古森史郎さん、がんばってください。

レビュワー