第2話 面接(2)


 面接会場の本社ビルに到着っ!

 十分前!

 トイレに駆け込み、速攻でメイク完了っ!

 三分前!


 ヨシャ! いくぞっ!


 気合いを入れると、いざ戦場へ向かう兵士のように、勢いよくトイレの扉を引き開けた。


 さて、十階に行けばいいのよね。

 エレベーター、エレベーター。

 あ、あっちか。


 エレベーターホールには、数人の人影があった。

 三基のエレベーターが稼働している。

 丁度、真ん中のエレベーターが到着し、扉が開くところだった。

 上に向かうエレベーターだ。


 誰も乗ろうとしない。

 見向きすらしない。

 みんな乗らないのかしら。下に行くエレベーターを待ってるのかな?

 って、ヤバイヤバイ。

 もう時間がない。

 慌ててエレベーターに乗り込む。


 そこには先客がいた。

 操作盤の目の前におじさんが立っている。

 十階のボタンを押そうにも、その人の身体が陰になって、操作盤が全く見えなかった。


「あ、あの、すいません。十階お願いします」

「はいよー。出発するあるよー」


 扉が閉まり、エレベーターが軽やかに上昇を始めた。


 あるよ~?

 おじさんの言葉遣いが面白い。

 格好も奇抜。

 真っ赤な下地に緑を所々に散らしたつなぎ服と、お揃いのニット帽を被っている。

 帽子のてっぺんでは、林檎のような赤い玉がピカピカと光っていた。


「着いたあるよー」

「ありがとうございます」


 不思議なおじさんにお礼を言い、エレベーターを降りる。

 エレベーターは静かに扉を閉めると、さらに上へと昇っていった。


 あのおじさん、クリスマスツリーみたいだったな。

 ふと、そんなことを思った。

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