第20話-番外編-真夏の昼の淫夢3

真夏の昼の淫夢……3


被害者8人目。


ついに、自分一人になってしまった。

「こ、こっちくんなぁ…!」

迫り来る2人に向けて、数本のビームを放つ。しかし、発狂している2人にはなかなか当たらない。菅野がいつも通りならきっとすぐに当たってるはずなのに。軽々と避けた2人は着実に黒成の元へと近づいてきていた。

「このぉぉ!!」

更に数本のビーム。充満するガスのせいで視界が遮られ上手く撃てない。が、複数のうちの一本が運良く秋夜に当たったらしく雷に打たれたかのように地面に落ちた秋夜。サイボーグとなり機械化した秋夜の体は雄志の高エネルギー弾は苦しいものだったようだ。

「逃がさないゾ」

しかし、安堵も束の間。目の前には鼻息を荒くした菅野がいた。

「お、おい…菅野、落ち着けって…」


「イエェェェェェイ!!」

「?!」

菅野が突然の雄叫びをあげる。獲物を目の前にして喜びの声をあげているのだろうか。雄志は初めて"違う意味"で狩られる者の恐怖を感じた。

「空前絶後のぉ!

超絶怒涛の変態科学者ァ!

変態を愛しィ!変態に愛された男ぉー!!」

菅野はなぜか自己紹介を始めたようだ。しかし、あまりの迫力に雄志がツッコミを入れる隙が無い。

「変態、盗撮、タケリタケH!

すぅぅべての変態の生みの親ァ!」

「タケリタケH作ったの おめぇがよ?!」

スキアリ。ここぞとばかりにツッコミを入れる、が。

菅野は止まらない。

止まれない。

「そう、我こそはァ!!

ちょっと薬の配合間違えて一時期女の子になってたァ!!(まだ ほぼ女の子だよ…)

貯金残高4万円!(少なすぎるだろ…)

キャッシュカードの暗証番号、

6741!(虚しい、な…)

財布は今!自室に置いてあります!

黒成くゥゥん!今がチャンスです!!」

凄まじい圧力で指を指されてたじろぐ黒成。菅野は勢いに任せて、更に続けた。

「もう一度言います!6 7 4 1 !

「む な し い」って覚えてください!

そう、全てをさらけ出したこの俺はァァ!!

サンシャイン

か ん の(ボフッ!) こ ぅ……」

凄まじく体を反り返せて微動だにしなくなった菅野。

「イエェェェェェイ!!」

「名前最後まで喋らねぇのがよッ」

ツッコミの言葉と同時に拳が突き出ていた。

「ジャスティスッ--!!?」

殴られた菅野は気絶したらしく動かない。

「や…やっちまった」

菅野を気絶させたはいいものの、ガスは眼前まで迫っていた。

嫌だ…このままホモになるのは…。

壁に追い詰められ、口と鼻を塞ぎ… もうダメだと諦めかけたその時、

ガスが薄まってきているのが分かった。

火呂が窓ガラスを割って登場したせいなのか…?

ガスの中、目を凝らしてキノコを探す。

「…あった……!」

ガスが薄まってきたおかげで陽の光で照らし出されるキノコが見えた。

焦げている。黒く燻り、煙を上げていた。恐らく雄志のビームの流れ弾が当たっていたのだろう。

なんて黒いキノコ☆

「えぇ………」

こんなことなら最初から自分の遠距離攻撃が可能なビームで焼けば良かったのに……

そこまで思ったその時、気が抜けたせいか黒成の緊張の糸がプツリと切れた。

暗転する視界の中、ガスの中で倒れた不安ともう大丈夫なんじゃないかという曖昧な安心感で頭の中は混沌としていた。


--------------------

------------------

-----------------

---------------

-------------

----------

-------

----

「はっ…!?」

黒成は飛び起きた。

「お、どうした?アウトな夢でも見たのぜ?」

妹と戯れながら黒成に声をかける緋音。2人とも先ほどの狂気は感じられない。

他のメンバーも…

「ホモホモしい夢でも見たんじゃねぇか?」

ビクッ

六花の声に誰かの肩が震えた気がした。何故だろう、震えた奴の肩の服の色は白かった気がする。

「ホモホモしいって…な、なんて夢を見てんだよ黒成ぃ……」

震えた声は菅野だった。

もちろん肩をビクつかせたのも、菅野。

黒成は証拠品の名称を口にした。

「タケリタケ H …」

「 」

原因物質の発言に菅野は白目を剥く。

確信犯である。


「やっぱりおめぇがァァーッ」


菅野の股間が蹴りあげられる。

そこには男としてのブツの感覚があった。しかし黒成には一切の容赦はなかった。

「もっかい女さ戻れやゴルァ!」

「やめてぇ、潰れるゥ!!」

「オラァ!!わぁの高エネルギーで焼却処分してけらァァ!!!」

「やめてぇー!!物理的に女の子になっちゃう!!」

「昇天しちゃう!逝っちゃうから!我輩のおちn…《自主規制》…が天に召されちゃう!昇天しちゃうって!また無くなっちゃう!!」

せっかく実験の効果が切れてきてたのにィィィーー!と叫ぶ菅野の声は虚しく。


菅野は再び女の子に戻った。


そして、唯一ガスの吸い込みが少量で記憶が残っている黒成は。


《 なにかの扉が 開いた きがした ! 》

が、

《 戸締りしておけぇ、そんな扉はァ! 》

と自分に言い聞かせる。

そうだ、戸締りしておけ、そんな扉は。


記憶が残っていない他メンバー等は頭に「?」マークを浮かべて眺めていることしかできなかった。

夏の暑さに加え、当事者としての記憶がハッキリと残っている黒成はそんな事にさえイラついていた。その腹いせはもちろん元凶である菅野だ。


このあと めちゃくちゃ


黒成の高電圧エネルギー電気椅子の刑


に処してサンドバッグにした。


お前のせいで変なものに目覚めかけた!と。


番外編終わり!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る