第9話
「うーん案の定エグい!」
早速緋音が全員に転送した小説はエグさとグロさの塊だった。この子は女の子なのに一体どうしてこんな性格の歪んだ凶悪な狂気っ子になってしまったのか。
「火呂ど緋音が合作で書いだ小説もエグいけど、これもエグさの塊で、マジで吐きかげだわ……」
「おっ、検証成功だね!!やったぜ。」
「六花のやづも笑わさるし、エロいし」
「やったぜ。」
「火呂のは笑いすぎで吐きかげだ……!!」
「やったぜ。」
やったぜ☆×3獲得。やったぜ!
唐突に送られてきた試練の小説の数々を思い出したのか黒成は涙目である。
「おっとそうだ、メニューそろそろ決めようぜ?」
鷹からアイコンタクトを貰った火呂は皆に提案する。
「おっ、そうだな」
「ここは定番のチーズインハンバーグですね」
もうメニューを決めていたのか涙音は素早く店員さんを呼ぶボタンを押す。
「アイェェェ?!まだ決まってなーーァ!!」
「まだだ!!まだ終わってな〜い!!」
相変わらずカオスだ。
「妹ちゃん激しスギィ……!!」
急いで一通りの注文をし終えたメンバーは疲れ切っていた。
しかし、淫夢厨の発言を姉は許さなかった。
「あっは、その言葉は語弊があるのぜ六花クゥン」
「ッアーーーー!!!!」
ゴリゴリとツボを押され、激痛にのたうち回る六花。面白がって取り押さえるメンバー。
ここは飲食店である。
「ふぅ。」
一通りのいつもの流れを終えた一行は注文したメニューが届くまで大人しく会話に花を咲かせる。
「つーか火呂、あの小説、あれで終わりなんず?なんだが救われねぇしモヤっとすんだけど」
部活中に読んだ新作の続きが気になって仕方がない黒成。その顔はあまりにも寂しそうだった。
「あー、あれな。実はな続きは"無い"んだよ……」
火呂の言葉には力がこもっていた。
「"if"の世界としてなら今俺が続きを書いてるぜ?」
緋音は左眼に掛かるモノクルに指をかけながら笑う。
「if?」
「転生、パラレルワールド、別世界……」
緋音の笑みはどこか悲しげだった。
「とにかく、この物語、"まだ"続きは無いんだよ」
火呂が笑って話を終わらせたところで各々が注文したメニューがゾロゾロと並べられる。
話に熱中しすぎてエネルギーを存外消費していたのか、目の前に運ばれてきた食事の香りに腹が鳴った。
「まぁ、ifの話は後で見せるから、今は食おうぜ!」
緋音も目の前の肉に早く手をつけたいようで、その手には既にナイフとフォークが握られていた。
「んだな」
「「いただきます!」」
元気な言葉と共に一行は食事に手をつけ、それぞれの話に花を咲かせた。
ある者は銃の話。
ある者は小説の続き。
ある者はお絵かきの話。
ある者は世界観の話。
ある者はゲームの話。
ある者は無言で。
そしてある者は、話をしながらも何かを感じ取っていた。
吉報のようで、悪報。
嬉しいようで、嬉しくない。
1人だけ誰からも見えないサングラスの奥に目を伏せて感じた緊張の糸。
今日は……7月、2日。
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