第6話 セットアップ

美生みおには、バイク屋がしてやったりという顔をしたように見えた。


美生がこのバイクに乗るにしても、とりあえず整備が必要という事でバイク屋は3台のバイクを軽トラの荷台に積み始めた。小さいバイクとはいえ、積めるのかなと美生は思ったが、前後左右にはみ出しながらもバイク屋は器用に積んでしまった。


3台のバイクの登録書類を渡し、代わりに預かり証をもらう。


「2週間くらいで整備します、できたら電話しますので。」


「あの、私、あまりお金がないんですが。」美生は言いづらそうに話した。


「他の2台の売却代金から引いておきますから、大丈夫ですよ。」


バイク屋は帰って行った。


「ずいぶんかかったわね。」

「これで、ようやく厄介払いできるわ。」


家の中に入ると、美生の母が相変わらず不機嫌そうに言った。美生は1台は自分が乗ることになったとは言い出せずに、その内言おうと思った。


そして言う機会もなく2週間が過ぎてしまい、バイク屋から電話がかかってきた。


「クッチョロの整備ができました。週末にお届けしますので、ヘルメットとグローブを用意しておいてください。」


さあ、美生は困った。


とりあえず、ヘルメットは祖父のものがサイズ的になんとか使えそうだったのでファブリーズをかけまくって、グローブは大き過ぎたのでホームセンターで一番良さそうな作業手袋を買った。


そして結局、母には言えず、納車の日となってしまったのだった。

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