第2話 カレッジ

美生みおの乗ったバイクは軽快に走り出した。スクーターやスーパーカブと同じ位の48ccのエンジンはもう65年ほど前に作られたものだが、車体はほぼ自転車と同じ軽さなので、意外と良く走る。


平らな道なら、時速40キロは出る。下り道なら45キロ、急な上り坂なら20キロ。それで美生には別に不満はなかった。


「がんばれ、クーちゃん。」


急な上り坂に来ると、美生は声をかける。


美生は、自分が通っている女子大に到着した。ここに着くまで15分ほどだが、ずいぶん走ったような気がする。


女子大にバイクで通学する学生はほとんどいないので、大学にバイク置き場はなかった。美生は自転車の駐輪場に停めている。それで何も言われることはない。


「美生さん、おはよう。」

「おはようございます、美生さん。」

「おはよう、美生さん。」


自転車で通学している学生から、次々挨拶される。美生は、音量は小さいがよく通るハスキーボイスで挨拶を返した。美生は、古くてちっちゃなバイクで通学している女学生として、大学で有名人だった。


そして、背が高くて痩せていて、ワイルドなぼさぼさの茶髪とハスキーボイス、ぶっきらぼうだが笑顔が優しい女子として、他の自転車通学の学生の人気者なのであった。

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