おみくじはギャンブルだっ!⛩

給湯器の2000年問題を無事クリアして2019年の元旦を迎えることができたよ。清々しい新年の朝だね。

ボンともまあ・・・だったし。


初詣は大家のおばあちゃんとボン、そしてわたしの3人で行くことになった。大家さんは毎年1人で行ってるらしいから結構嬉しそう。


「エンリちゃんやボンちゃんは感心だよー。こんな年寄りの言うこと聞いて給湯器も見てくれたし初詣も一緒に連れてってくれるなんて」

「大家さんと言えば親も同然! 当然のことですよ〜」

「おっ、ボン。珍しくいいこと言うね」

「だって就職でこっち出て来て初めての一人暮らしで。不安でしたけど大家さんがなにかとお世話してくれて。あ、もちろんお隣さんで大家さんと同じくらい人生の大先輩であるエンリさんにも感謝してますよ」


ボン、何が言いたいんだよ。


まあ、無事社殿への参拝を終えて、じゃあ、ってことでやっぱりこうなるか。


「エンリさん、おみくじ引きましょうか」

「わたしはパスかな」

「え。どうしてですか?」

「ここ何年もロクなおみくじ引いてないから」

「え。小吉とか?」


首を振るわたし。


「じゃあ、凶?」

「ううん。大凶。3年連続で」

「うわあ・・・」

「ちょっと、エンリちゃん、そりゃーダメだわ」

「まあ、幸薄い女ですよわたしは」

「ダメダメ。エンリちゃんみたいないいコが幸せになれないんなんて世の中間違ってるわよ」


お。大家さん嬉しいこと言ってくれる。


「お祓いしようか、3人で」


大家さんのご厚意でご祈祷料を出していただき、3人で代表してアパートの住人全員の大願成就を祈願することになったよ。


大盛況だね。控えの間には50人ぐらいの人が折り畳みの布椅子に腰かけて静かに待ってる。

おじいちゃん、おばあちゃんに挟まれてニコニコ顔のちっちゃい男の子。

2人で初めてのお正月を過ごす若い夫婦。


ああ。

でもまあ、いいか。わたしらも3人だし。


「では、どうぞ」


宮司さんの案内で仕切り戸が開かれて横にスライドする。

そのままの並びでご神前に正座してさ。


「ではお一人ずつ順にご祈祷させていただきます。その後、玉串をご奉納いただきます」


あ、全員? 以下同文じゃないんだ・・・


穂夢田運ほむたうん町○丁目○番に住まいし遠藤何某・・・家内安全・・・・」


整然とそれぞれの家庭や職場の祈願内容が読み上げられていく。

わたしたちの番になった。


穂夢田運ほむたうん町○丁目○○番地 田ノ志荘たのしそうに住まいし10名・・・ん?」


止まった。


「ええ・・・御籤勝利みくじしょうり? あー・・・運気上昇・・・」


ふむ。そう翻訳したか。


『エンリさん、なんてこと書いてんですか!? 宮司さん呆れてますよ』

『いいじゃん。今年こそ勝ちたいんだよ、わたしは』


・・・・・・・・・・・・・・・・・


ご祈祷を終えたわけだからそれで運も好転してるはずで、だからおみくじはいいやという考え方もあろうけれども、一発勝負に賭ける!


「あ。大吉だ」

「ワタシもだよ」

「え!? そんなあっさりと!?」

「僕はこれで5年連続大吉です」


と、ボン。


「ワタシも10年連続大吉じゃ」


と、大家さん。


うーん。プレッシャーがどんどん大きくなる。


「エ、エンリさん、頑張ってください!」

「エンリちゃん、ファイトだよっ!」


指を鳴らしウォーミングアップする。

木箱に100円玉を入れる。

そのまま右手をおみくじがるつぼの如く渦巻いている丸穴の箱に、ぐばっ、と差し込む。

最深部に到達し指先が箱の底に触れたことを確認したわたしは、ぐぎぎぎ、と指をこわばらせ、そのまま拳を握りこむ。

手の平と人差し指から小指までの4本の指の関節に、おみくじのきちんと糊付けされた長方の形状が伝わってくる。親指と人差し指をこすり合わせてひとつ落としふたつ落とし・・・


そしてとうとう、わたしが引き上げて糊をはがして運命を開くべき御籤みくじが決まった。


えいっ!


わたしが開いたその先には・・・


「エンリちゃん、どうだった!?」

「エンリさん、どうなんですか!?」



「・・・糊で破けて、見えない」


PS. その後、書かれているお言葉の文面から、末吉と推測できたよ。う、嬉しい・・・♪( ´▽`)








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