第25話

 出がらしのティーパック。

そんなオレの代わりは幾らでもいる。一瞬 躓けば、そこで終わり。

後は追い抜かれて行く一方。そーゆー世界。


 知ってたよ。知ってたさ。

だから、夢と煩悩 食って生きていくにも限界があるって気づいてた。



「無職、か……」



 遂に、夢と煩悩すら手放す日が来た。

コレが、無能で貧乏な人間の末路です。



 グゥゥ……



「腹減った、」


 金が無くても腹は減る。

ありがたーい事に、先日ユーヤ君から お裾分け頂いた高級缶詰とかがある。

コレで暫くは食の心配はイラナイ。でも、来月の家賃は どーしたもんか。

通帳の中は入っては出しての繰り返しで、桁が増えたためしがねぇ。見るまでもねぇ。


「ズワイガニの缶詰、マヂウマ」


 ユーヤ君みたいに卵と混ぜて海の幸スクランブルエッグ何て、シャレオツなもんを作る器用さはナイんでね、そのまんま食いだわ、コレ。



(ユーヤ君……)



 この時間なら、まだ登校してないかな? 隣の部屋にいるのかな?

オレは壁に頭をつける。



(痛かったかな……?)



 傷ついた顔をしたユーヤ君を乱暴に突き飛ばした。



(オレのコト、嫌いになっただろうな……)



 嘘をついてた。

リーマンだとか、全部 適当なコト尽くしで誤魔化してた。



(でも、言えなかったんだよ、『オレが石神亮太郎です』、とは……)



 情けない。



*



 腹こしらえを済ませて2日振りに風呂に入って、

せめて身なりだけは整えた無職のオッサンが出かける先はハローワークかと思うだろぉが、

バカにすんな。

そんな専売特許、早速 使ってたまるもんか。


(近頃の街は親切だよなぁ、求人雑誌 無料設置しといてくれんだからさぁ)


 ハーローワークは最終手段だ。

つか、オレみたいな自営業、職歴に書いても役人サマに相手にされそにない。

一先ずバイトに漕ぎつけて様子を見る。



(様子を見て、どぉすんの オレ?)



 手当たり次第に求人雑誌やら広告やらを手に取って抱えて、オレは土石流のよぉな溜息を連投。



(曲の依頼が来んのを待つ気でいんのかよ? 何処までも ふてぶてしぃやっちゃな、)



 『夢は見るものじゃなく、叶えるもの。必死こいて追い駆けたもん勝ち』ってさ、

そんな名言を吐いた偉人がいたように思うけど、


 あ。ソレ、オレの高校時代の悪友だわ。デリーーート。


 兎も角だ、

夢は まず見ないコトには叶えようもねぇワケで、スタミナねぇと追い駆けられんワケで、

平たく言えばメンタルだわ。


 言うてもさ、『望みのない未来を生きられる程、強い人なんていない』ってさ、

そんな名言を吐いた偉人がいたようにも思うよ。


あ。ソレ、オレの大学時代の元カノだわ。デリーーート。


(何はともあれ、オレの耳には何の音も聴こえない。

体のどっからか溢れ返る音を拾うのが楽しくて楽しくて、

そんな超常現象がつい先日まであったってんだから、ソレこそ夢のよぉな話だわ)


 枯れる時は枯れる。

当たり前にそこに在るモノ何て、何一つないんだよ、諸君。

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