第23話

「しがないサラリーマンじゃなくて……」



『嬉しいだろぉねぇ、その作曲家! そんなに絶賛されてるとは、知る由もなーい』


『ユーヤ君はユーヤ君の才能を伸ばすんに頑張ったらイイんだよ。絶対に。

きっと、何処かで そのセンセイは見守ってくれてるからっ、』



「石神サンが、」



{石神亮太郎、本人……?}



 布団に寝かして俺が呟くと、石神サンの目が僅かに開く。



「ユ、ヤ、君……?」


「……、」



 俺は何て言えば良いんだろう?

混乱してて、何が何だか分からない……


 石神サンの目は熱でダルそうながら、ココが何処なのかを ゆっくり見回して確認している。

そして、自分の部屋だと思い出すなり、息を飲んで目を見開く。



「な、何でココにユーヤ君がいる、ワケ……?」


「ぁ、あの、俺、看病……」



 別に、やましい気持ちがあったわけじゃなくて、

いつもお世話になってるし、俺がホームシックにもならずに一人暮らし何て出来るのは、

石神サンが お隣にいてくれるからで、だから、本当に、純粋に……

石神サンに何かあったなら、その時は俺が1番に助けたいって、ソレだけで……


でもソレは、俺の独りよがりだったのかも知れない……


石神サンはゴクリ……と喉を鳴らして体を起こすと、



「か、――帰れ……」


「ぃ、石神サン、」


「帰れよ!!」


「!!」



 苦しそうに絞り出される石神サンの声……

俺は石神サンの熱で火照った手にドン! と突き飛ばされた。

大した力は無い。けど、俺は腰を抜かして、



「石神、サン……」



 全部、全部、ショックだったんだ。

この部屋での出来事が処理できなくて、走って部屋を飛び出す事しか出来なくて……




*

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る