終わった世界と願い

「世界の終わり」とか「終わった世界」なんかのワードが入ってたら無条件で好きなんですが、この作品でも一つの終わりが描かれています。短編ゆえに詳細は描かれておらず、どのようにしてその終わりが訪れたのかは想像するしかないのですが、そうして想像の余地があるのもいいところだと思います。この作品で描かれるあの世界は僕らが生きている世界とパラレルに存在するものかもしれないし、果てというからには時間軸の延長線上かもしれない。そこに付随する時間に関する設定もよいと思いました。
さて、この作品では「終わった世界」のほかにも「時空を超越する願い」みたいなものもテーマの一つに挙げられるのではないかと思います。願いや想いというのはヒト特有の感情であり、この作品でそれを伝えるツールとして選ばれているのが手紙です。手紙は古今東西あらゆる作品において感情を伝えるための道具として使われます。普段言えない想いを伝えるためであったり、そもそも物理的に直接伝えられないために手紙という手段を用いるのでしょう。この作品においてはどちらかといえば後者に近いかなと思います。それが世界が終わっても人間の願いは終わらないなんて結論になるかは分かりませんが、でもなんとなく想いや願いというのはそれだけで物理現象を超えたなにかを引き起こしても納得はできると思えてしまいます。そう思えばこの作品においての面白さは世界の終わりという無慈悲な現象に対して、人間の思いや願いといった感情をもってそれに立ち向かったところだと思います。
とはいえ人間は変化する生き物ですのでそれが無くなった世界で生きることが主人公たちにとって幸せだったのかということもまた考える余地があるなと思います。というよりは変化をしなくなった生物は生き物というよりは概念に近いなとか思ったり。少女の決意はある意味で時空を超えて人間をもやめるものであったというのはそれだけで凄まじいなと思いました。それもまた願いの強さみたいな話になるのかもしれませんが。
最後になりましたが、この度はもとぷに企画に参加頂きありがとうございました!またなにかやった際は参加いただけると嬉しいです。