第2話 万彧《ばんいく》:孫晧を即位させた張本人

 万彧ばんいくは呉後期の政治家で、呉の滅亡を招いた暴虐の君主・孫晧そんこうを推薦し、即位させた人物です。


 孫晧は、父・孫和が孫権の後継者候補から外されて自殺したのち、母とともに地方で暮らしていました。


 孫休が即位すると、孫晧は鳥程候に封じられて任地へ行きます。

 万彧は鳥程の県令(県の長官)で、そのころから孫晧と交友がありました。


 孫休が亡くなったとき、蜀も魏(のちに晋)に滅ぼされたころで、呉では有能な君主を求めていました。


 孫休の子では魏を相手にたたかうことはできないとして、万彧は丞相の濮陽興ぼくようこう(前回出てきた人です)と左将軍の張布に、孫晧を後主に推すようたのみました。


 濮陽興たちは孫休の妃・朱氏に伺いを立てて許可をもらい、平和裏に孫晧を帝位に就かせました。このころの孫晧はまだ聡明でしたが、だんだんと酒や女色におぼれ、粗暴になっていきます。


 濮陽興と張布は孫晧を帝位に就けたことを後悔しましたが、万彧はそれを孫晧に告げ口してしまいます。おそらくは自分が孫晧を推挙した手前、朝廷内で反発が出ることをおそれて保身に走ったのでしょう。

 濮陽興たちは孫晧に殺されてしまいます。

 

 のちに孫晧が華里へ出かけたとき、万彧は丁奉に、


「今回はとくに急ぎの用事もないのに、華里へ来た。もし陛下が都にもどらないようであれば、国家のため、われわれだけでもさきにもどらなければならない」


 と相談しました。


 孫晧はこれを知って内心怒り、宴会のときに毒酒を万彧に飲ませました。

 ただこのとき、給仕が毒酒の量を減らしたので万彧は死なずにすみましたが、けっきょく万彧は自殺してしまいます。


 万彧はある意味、呉滅亡の元凶を招いた張本人ともいえるでしょう。

 ただ時世はすでに魏(晋)にあったので、孫晧以外が君主になったとしてもどうにかなるものでもなかったのかもしれません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る