鬼と社会  (お題:刀・鬼・命)

 私は鬼だ。


 え?どう見ても人間だって?

 違う違う、君たちは何か勘違いをしている。


 私自身が鬼を名乗っているわけではない。皆がそう呼ぶのだ。


 古来より、異端児、奇形児は鬼として山に捨てられてきた。

 異端の化身である私が鬼と呼ばれるのは当然の事であろう。


 鬼として捨てられた者のほとんどはその場で息絶えてしまう。

 奇跡的に育つ事ができたとしても、人ならざるその風貌ふうぼうと、その行動から誰にも愛されることなく、その命を散らす。


 私はそうはなりたくないのだ。

 その為にも…。


 「さて…と」

 私は愛刀を携え今日も行く。

 私を必要としてくれる所へと。


「さぁ、さぁ!鬼才の刀使いよるマグロの解体ショー。始まるよ!」

 私は司会者の声に合わせる様に剣先を照明に向ける。


「刀使い。今日も華麗にさばいて見せましょう!」

 私はこんな事が好きなのかって?

 違うに決まっている。


 しかし、刀を振るう事しかできない私にはこれしかないのだ。

 こうでもしないと皆に認められない。


 …誰も認めてもらう必要のない鬼は、それはそれで幸せなのかもしれないな。

 私はニヒルに笑うと、刀を振り下ろす。


 皆の歓声が上がった。




===========

※おっさん。の小話


 またもおっさん。の話ですね。


 まぁこの人の様に器用には生きれなかった訳ですが。


 自身にとって、何が大切か。


 どれかを大切にすると、どれかが疎かになってしまう…。


 難しいですよね…。

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