第12話 戦闘

城壁に登ったシャインたちの目の前には人の気配のない城内だった。

シャインは城内に降りようと思いのぞき込もうとしただが城壁の端に透明な膜があり頭を強く打った。ジェミニは透明な膜を浸りと触った。


「結界か……シャイン下がってろ」


そう言ってジェミニは透明な膜に向けて弓を引き絞った。矢は勢いよく膜に突き刺さりヒビが入った。ジェミニはヒビのいった膜に向けて蹴りを入れた。膜はガラスが割れるように砕け穴が空いた。


「行くぞ! ほら立て」


ジェミニは転がったまま唖然としているシャインを立たせヒラリと城内に降りていった。

シャイン達も慌ててジェミニのあとを追った。


───────────────────


しばらく進むと赤い屋根のホールが見えた。そしてその下に人の気配を感じた。

シャイン達は物陰から様子を伺う。そこには2人のフードを被った女と男がいた。女は赤髪で男の方はフードを深く被り顔はあまり分からない。

赤髪の少女がもう1人に申し訳なさそうに言う。


「すみません……全員、飛ばせませんでした……」


男は構わないと言いながらホールを見上げる。


「残りはここだけか。頼んでいいか?」


赤髪の女が頷くと男はホールの裏へと回っていった。女はホールの扉に何やら書き込んでいく。


「まずいな……」


ジェミニがそう言うとエリーが地面に魔法陣を書き始めた。訳が分からずキョロキョロしてる俺をジェミニはガシリと掴み赤髪の女の方に向ける。


「今からあの女を攻撃する。エリーに合わせていくぞ」


ジェミニはそう言うとエリーの方を見る。エリーは頷きシャインをみる。

シャインはロングソードを引き抜いた。青い光がふわりと浮かび上がった。

それを見たジェミニは一気に魔法陣を書き上げた。


「行くぞ!!」


ジェミニはそう言うと物陰から飛び出した。



ジェミニは走りながら黒い弓を引き矢を放った。鋭く飛んでいく矢は赤髪の女の右腕に刺さった。


  赤髪はシャイン達に気づき、足元に用意していたのか攻撃魔法陣を次々と起動させる。

 魔法陣は赤色に浮き上がりそこから火の玉が次々と溢れ出てシャイン達に向けて飛んで来る。

 シャインは飛んでくる火の玉を必死にロングソードで斬る。ロングソードの青いもやに当たると火の玉は吸い込まれる様に消えていった。

 

 1方ジェミニは飛んでくる火の玉をひらりひらりと躱して徐々に赤髪との距離を縮める。

 

 二人に効果が無いと解ると赤髪は矢を受けていない左手を掲げ、叫ぶ。

 

 「स्तंभों के देवताओं मेरी रक्षा करो ।#氷の槍__アイスランス__#」

 

 赤髪が叫ぶと手の前に青い魔法陣が現れ複数本の氷の槍が飛び出した。

 

 しかしジェミニはそれすらも軽々と躱し、なおも赤髪との距離を縮めていく。

 シャインは氷の槍を火の玉と同じ様にロングソードで切り落そうとした。だが一本目の槍を受けるとロングソードに纏っていた青いもやは消え2本目を受け止めると氷の槍は消えず、シャインは吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされ転がったシャインに向けジェミニの躱した残りの数本の槍が軌道を変え一斉に飛んでいく。

 

 完全に腰を付いたシャインはすぐに起き上がれず氷の槍が目前に迫ったその瞬間、地面に大きな魔法陣が現れそこから盾の形をした植物がシャインと槍の間に飛び出し迫り来る槍を受け止めた。


 シャインが立ち上がり振り向くとそこにはロッドを振り、次々と魔法陣を組み立てるエリーの姿があった。

 

 

 いつの間にか短剣に持ち替えて迫り来るジェミニを赤髪はバックステップで躱し、ローブの下から取り出した小刀をジェミニに向けて投げつけた。

 宙に浮いていたジェミニは躱すことが出来ず、その足に小刀が突き刺ささり着地したジェミニはバランスを崩し地面に倒れ込んだ。

 

 赤髪は今が好機とジェミニに向けて、今度はローブから取り出した短剣を振りかざしたが、またもエリーの魔法陣が地面に現れ、盾の形の植物に阻まれた。

 女は突き刺さった短剣を引き抜こうと手に取ったが、勢いよく突き刺した短剣は盾の植物に深く突き刺さり抜けなくなっていた。

 その一瞬の隙にエリーが女に向けて魔法を放つとツルのような植物が地面から伸び赤髪を押さえつけようとする。

 赤髪はツルから逃れようと飛び上がったが足を絡め取られ地面に落ちた。地面から次々とツルが伸びやがて赤髪を完全に拘束した。

 

 一同は赤髪を捕まえたことで一瞬、気を緩ませた。

 

 しかし次の瞬間、新たに緊張を上塗りさせるような圧倒的恐怖を纏いながらあの黒いローブの男がジェミニの背後から現れた。

 


 突如現れた黒いローブの男は自分の体の2倍はあろう大剣を肩に担ぎ、シャインが迷宮で対峙した赤毛の狼とは比にならないほどの圧倒的な威圧感を全身に纏っていた。

 その威圧感は先程まで躊躇なく魔法陣を構築し続けていたエリーすらもその手を止め地面にへたりこむほどだ。

 

 シャインはその恐ろしさに手足をがくがくと震えさせ、ロングソードをその場に落とした。

 

 男は肩に担いでいたその大剣を地面に向けて叩きつけた。地面に倒れ込んだままのジェミニに向け大地が裂けながら斬撃が飛んでくる。

 

 

 シャインは震える手足を振り払いとっさに倒れ込んだままのジェミニを抱え、横に転がった。

 

 斬撃はジェミニが倒れ込んでいた場所まで伸び、エリーの盾の植物もろとも地面が裂けていた。

 

 「ほう、まだ動けたか。」

 

 男はニヤリと笑いながら続ける。

 

 「我の威圧を受けてもなお動くとは。面白い!」

 

 そう言いながら男は再び大剣を振りかぶりシャインに向けて斬撃を放った。


倒れ込んだままのジェミニを抱え、ロングソードも手放してしまったシャインになすすべもなく迫り来る斬撃をただ見つめるばかりであった。


しかし斬撃が目の前まで迫った瞬間、後ろから誰かが声をあげた。


「बुराई की कमी से पहले देवता प्रतिबिंबित#反射__リフレクト__#」


その声に反応し、シャインの目の前に白く神々しい光を放つ魔法陣が現れた。

その魔法陣は迫る斬撃を受け止め、驚くことにその斬撃を男に向けて跳ね返した。


跳ね返された斬撃は男が放った時よりも強く速く大地を切り裂きながら男に迫る。



男は回避行動もろくに取れず跳ね返された斬撃に直撃した。男のローブは破れ、中に甲冑でも着ていたのであろうか、銀色の破片が空中に舞い上がった。


「あ……ありえん。我が斬撃を跳ね返すなど……。」


そう言って男は倒れ込んだ。



その光景を見たのか先程の声の主が高らかに笑いながら言う。


「ハッハッハ!貴様など相手にならんわ!」


シャインは声の主を確かめようと振り返った。



そこに立っていたのはピンクのゴスロリ服の様なものを着て、腕を組み高らかに笑う幼女の姿があった。










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