第9話 分析

「6,7歳といったところか。」

 

 「いや、6,7歳といったいところか。じゃねーよ。なんで、なんでちっちゃくなってんの!?」

 

 冷静に分析するジェミニにハヤトは振り返り焦ったように言う。

 

 「それはですね。ハヤト様の目の前にあるその泉。アナネの泉と言って若返り効果があるんです。普通は聖水で薄めて肌に塗ったりして使うんですがハヤト様は原液を直接、飲んだので全身が若返ったのかなぁって」

 

 焦るハヤトに対し冷静に分析し更に説明までする姫様は少し楽しそうに見える。

 

 「まぁ、別にいいじゃないか。どのみちさっきの姿で外に出たら一瞬で八つ裂きだろうからな。」

 

 恐ろしい事を楽観的に言うジェミニはからかうようにハヤトの頭を撫でる。

 

 「やめろよ!ってか外はどうなってるんだ?そもそも俺はなんでこんなとこにいるんだ?」

 

 ハヤトはジェミニの手を払い、今まで疑問に思っていた事を問いかける。

 

 「勇者様と聖教会が手を組んだみたいなんです。ハヤト様が城でお眠りになったあと聖教会の聖騎士達が城に潜入し、眠っているハヤト様をこの迷宮に運び込んだようです。すべてはハヤト様を抹殺するために。」

 

 「勇者ってあいつですか。あの……城のホールで俺を蹴っ飛ばした奴か?」

 

 ハヤトは苦い思い出を蘇らせ眉間にシワを寄せた。

 

 「そうです。確か名をヤマオ マサトシと言っていました。勇者様が急に出立したいと申され不振に思った父は場内に見回りを出しハヤト様がいなくなった事に気づきました。その後、場内で見つかった聖騎士達を捉え、居場所を聞き出し慌てて参ったのですが」

 

 姫様の説明の後にジェミニが補足する様に言う。

 

 「元々、聖教会は勇者と聖女以外の召喚を嫌うからな。私達も表向きは迷宮のマップ作成で来ている。まぁ、どうやって迷宮の外に出そうか考えていたが手間が省けて良かったじゃないか。」

 

 そう言いながらジェミニは持っていたカバンから取り出した白い布地に金の刺繍の施されたローブの裾を短剣でスルスルときっていく。やがて元の長さの半分程になり、それをハヤトに着るように伝え手渡した。

 ハヤトがそのローブを着込んでいる間にジェミニはロングソードのベルトを少し長くして肩からかけれるように色々と細工し始めながら説明する。

 

 「それは身体強化の魔道具の付いたローブだ。本当は使う予定なかったんだけどな……。まぁ、その体じゃ今まで通り動け無いだろうし」

 

 ハヤトがそのローブを着込むと体の内からじわじわと力が溢れ始めハヤトが飛び上がると姫様の事を軽々と飛び越える程の性能を示した。それを見ていたジェミニはロングソードのベルトを細工しながら言う。

 

 「あんまり無茶はするなよ!耐久力はそれほど無いんだからな!」

 

 地面に降り立ったハヤトはジェミニからロングソードを手渡され、それを背負った。サイズに違和感も無く体にぴったりフィットした。

 

 「では行きましょう。集まってください。」

 

 そう言って姫様は取り出した小さなロッドをひと振りした。すると3人の足元に大きな魔法陣が現れ、ゆっくりと上昇を始めた。


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