第3話 カラオケバトル?

「ところでみんなはどんな曲を歌うんだ?」

 そういえばこのメンバーでカラオケに行くのは初めてだ。俺は順番にみんなの好みを聞いていくことにした。

「じゃあまずはきらら」

「ええ!私からですか…」

「ああ、どういうのが好きなんだ?」

 きららは顔を赤らめながらつぶやいた。

「私、アイドルの歌が好きなんです…」

 これは意外だ。きらら以外の四人は驚きを隠せない。

「だって、私って引っ込み思案なところがあって、恥ずかしがり屋でアイドルのみなさんみたいに堂々としているのに憧れるんです…」

「あら、きららちゃん、かわいい悩みなのね」

 咲はきららの頭を撫でた。きららは恥ずかしそうだ。

「きららはアイドルの曲が好きと。じゃあ次はノエルだ」

「俺は昔の曲が好きなのだ」

「アラフォーとかの曲か?」

「そうなのだ」

 ノエルは自分の音楽機器を取り出しプレイリストを俺たちにみせた。そのタイトルはすべて聞いたことのある昔の曲ばかりである。

「なるほどな。ぜひとも後で披露してくれよな」

「わかったのだ」

「じゃあ次は身楽だ」

 身楽のほうを振り返ると身楽は待ってましたと言わんばかりにソファーの上に立ち趣味を語りだす。

「よくぞ聞いてくれた。俺が今おすすめの曲はこれだ!」

 そういうと身楽は自分の音楽機器から曲を流す。その曲を聞いた瞬間身楽以外の四人は驚愕した。

「ヘビメタかよ!」

「ああそうだぜ、かっこいいだろ」

 それにしてもすごいデスボイスだ。どうやったらこんな声が出るんだろうか。

「身楽さんは昔からこういう曲が好きなんですか?」

「そうだぜ。俺の両親がさ、昔ヘビメタやっててさ、そこで結婚したんだ。まあ遺伝みたいな感じだな。きららちゃんはヘビメタとか聞かない?」

「すいません、聞かないです…。」

 そりゃそうだ。きららだけじゃなくて俺も聞かないし、ノエルや咲だって聞いていないだろう。

「てかそういう教也はどんな歌聞くのだ?」

「俺はまあ今流行りのJPOPとかかな」

 みんなにあれこれ言った割には自分の趣味は普通だ。好きな歌手とかではなく、最近街中でかかっている曲やテレビのコマーシャルで流れているような曲をネットで聞くことが多い。

「なんていうか、普通ね」

「普通でいいんだよ。咲はなにを聞くんだ?」

 最後に聞いていなかったのは咲だ。なんとなく洋楽とかすきそうだが果たして実際はどうだろうか。

「私は演歌一筋よ」

「激渋だな」

「咲さん、すごいです」

「演歌好きの友達なんて初めてなのだ」

「さすがは咲姐さんだぜ」

「ちょっとちょっと、みんな驚きすぎじゃない?」

 俺の偏見になるかもしれないが演歌というのは年寄りのイメージがある。それを桜が丘学園の才色兼備と言われている咲が好きと思うとなんていうか、すこしおかしいと感じてしまう。

「てかカラオケに来たんだから歌おうぜ!」

「それもそうね。じゃあまずは言い出しっぺの身楽君に頼もうかしら」

 俺は身楽のほうを見るとすでにマイクを握りしめていた。

「お前たちをメタルな世界へ招待するぜ」

 身楽はヘビメタの曲を歌いだした。まずみんなが思ったことは全然うまくないということだろう。それもそのはず本来のメタルは声がとてつもなく低い。しかし音楽学校に通っているわけでもない身楽がそんな声を出せるはずがないのだ。


「はあ…はあ…どうだった?」

「うん、いいと思うよ」

 俺は適当に感想を述べておいた。優しさってやつだ。

「ノエルさん、この曲有名なんですけど知っていますか?」

「うん?どれどれ…、知っているのだ」

「良かったです。一緒に歌ってくれませんか?」

「オッケーなのだ」

 次に歌うのはきららとノエルだ。きららは自分一人で歌うのが恥ずかしかったみたいだ。しかしいざ二人で歌い始めると非常に上手だ。

「二人とも上手ね」

「ああ、そうだな」


 歌い終わるときららは俺たちに一礼した。相変わらず律儀である。

「じゃあ次は俺が歌うぜ」

 俺は最近流行りの曲を選曲した。カラオケっているのは歌い始めるとなぜか自分の世界に引き込まれる。


 俺は歌い終わるとすがすがしい気分になった。

「平野さん、上手ですね」

「そうか?ありがとう」

「次は私の番ね」

 俺は咲にマイクを渡した。咲が選んだ曲はもちろん演歌である。

「めっちゃ上手だな」

「ああ、俺も同感なのだ」

 演歌っていうのはビブラートがすごい難しいイメージがある。しかし咲はとてもきれいに歌っている。

「咲姐さんにはびっくりだぜ」

「咲さんは本当に何でもできる方ですね」

 きららの意見には俺も賛成だ。才色兼備で歌うのもとても上手となると本当に欠点が見当たらない。


 間もなくして曲が終わった。

「さすが咲、上手だったぜ」

「あら、お世辞でもうれしいわ。ありがとう」

 俺たちはそのあと、ひとしきり歌いあった。そして間もなく時間になったので部屋から出た。

「さて、まだ時間あるしボーリングでも行くか!」

 身楽は相変わらず元気だ。普通なら咲が止めそうだが今日を逃すとこれからは忙しくなる。誰も止める者はいなかった。

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