第24話 中国(ビジネスでの面白体験)

 さて、今回も中国について書いていきたいと思います。


 これまでとはちょっと趣向を変えて、中国人と仕事でお付き合いするなかで経験した面白エピソードをいくつか紹介します。まあはっきり言ってしまうと、面白くない(苦労した)経験の方が圧倒的に多いんですけどね。そこはご愛嬌ということで。


 

【タバコ】


 中国人はタバコを吸う人が多いです。地方にある中国系企業に行くと、商談の場に灰皿が置いてあってみんなスパスパとタバコを吸います。大抵の場合、最初にタバコを取り出した人が、「お前も吸うか?」とジェスチャーで問いかけてくるので、「吸います」と答えると、箱から取り出した一本をこちらに向けてぽいっと投げてきます。手渡しではなく、必ず放り投げてきます。


 僕はなんとなくこの動作が気に入って、ちょっといいブランドのタバコを持って行っては、最初にタバコを取り出して、ぽいっと放り投げていました。現地の人たちの真似をすると、なんとなく仲間に入れるような気がするんですよね。


 中国で有名な高級タバコに熊猫(パンダ)シリーズがあります。かの鄧小平も好んでいたブランドとされ、パッケージには可愛いパンダの絵が描かれています。大熊猫という最高級品になると、ひと箱一万円を優に超えるものもあるそうです。僕はもっとずっと安い、とは言っても庶民レベルでは高級品の部類に入る小熊猫を好んで持ち歩いていました。商談の場でさりげなく出すと、「おっ、熊猫のタバコじゃないか」と気づかれて、いい話のネタになる訳です。



【忘年会のお知らせ】


 中国の正月は旧暦をベースにしており、2月の初めからおよそ一週間が春節(旧正月)と呼ばれる連休シーズンになります。そのため、忘年会は1月に開かれるのですが、ある時、取引先の中国企業から忘年会のお知らせが送付されてきました。


 そこにはこう書かれていました。


 〇月〇日に忘年会を開催します。

 つきましては、下記のなかから景品をお選び頂き当社宛てに送付ください。

 1.液晶テレビ

 2.冷蔵庫

 3.その他家電製品

 4.ゲーム機 …………、以下略。

 

 えーっ、嘘でしょ? 忘年会の景品を贈らないといけないの?? 似たような通知は複数社から送られてきました。



【スピード出世】


 とある取引先に、かなり気が強いタイプの女性課長がいらっしゃいました。若くて綺麗な方でしたが、あれやこれやと言いつけられて、かなり苦労した覚えがあります。ある時、この方が社長の愛人になったという噂を耳にしました。翌月、この女性課長は部長に昇進していました。そして更に三か月後には副社長に。最後にお会いした時は社長とおそろいの指輪をしていたのを覚えています。結構な規模の会社でのお話です。ありそうな話ではありますが、きっと日本ではここまであからさまなことはしないでしょう。



【白酒】


 ご存知の方も多いと思いますが、中国で酒といえば紹興酒か白酒です。白酒はパイチュウと読みます。トウモロコシなどの穀物から蒸留される無色透明な酒で、アルコール度数は40度~50度とかなり強い。独特の甘ったるいような香りが特徴的で、中国版の日本酒みたいなイメージでしょうか。そして、超悪酔いします。


 この白酒をショットグラスに注いで一息に飲み干すのですが、宴会の場ではそれはもう死ぬほどに飲まされます。乾杯は中国語でカンペーと言いますが、酒を注がれてカンペーと言われたら、グイっと飲み干すのがマナー。これを十回も二十回もやらされる訳です。


 ただでさえ僕は酒が弱いのですが、本当に生死の境を彷徨うほどに飲まされます。透明な酒なので口を拭くふりをしてこっそりとお絞りに吐き出したり、ちょこちょこトイレに足を運んでは吐いたりしますが焼石に水。


 中国では前後不覚になるほど酔っ払い、お互い本当の姿をさらけ出してはじめて友人になれるという文化があります。中国で仕事で成功したければ、これは受け入れざるを得ない通過儀礼であると言えるかもしれません。


 たまに、どちらが酒が強いかを競い合うようなシーンもあったりします。中国チーム対日本チームみたいな構図になって、ひたすら酒を注ぎ合って飲みまくる。滅法酒が強い飲み要員みたいな人を連れてくるなど、中国チームはたまに姑息な手を使ってくることがあります。そんな時、僕らは日本酒を持ち込んで、中国人が飲み慣れていない酒を使って攻撃をしかけるのです。まあ、結局最後はみんなベロベロになるだけなんですけどね。




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 最近、短編小説も書き始めました。今は「目が覚めたら、家ごと砂漠に引っ越ししていた件」というお話を書いています。前半の一話を書き終えたところですが、短いお話ですので、よろしければ是非そちらもお読み頂けると嬉しいです。近いうちに後半もアップする予定です。


 いつも「うまのほねダイアリー」を読んで頂き有難うございます! 

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