第11話 ギャンブルの師匠

 カジノ編はおいおい書いていこうと思いますが、今回は僕にとってのギャンブルの師匠についてまとめてみたいと思います。


 大学時代、僕にはギャンブルの師匠とも言えるべき人がいました。名前は仮にフルタさんとしましょう。


 フルタさんは学費、生活費の一切を全てギャンブルで稼いでいた強者。とあるサークルの一つ上の先輩で、破滅型の性格でしたが麻雀やパチスロなどの博打は鬼のように強い。如何にして勝つか、金を稼ぐかはこの人から受けた影響が大きいです。ちなみに今は色々あって音信不通。無事に生きていてくれればと願いたくなるほど破天荒な人でした。将棋やオセロなどのゲームも尋常でないくらい強く、ある種の天才だったんだと思います。


 時はパチスロ4号機全盛期。一日十万円以上負けることもあるが、勝つときは数十万円も珍しくない、というギャンブル性の高いパチスロ機が市場を席捲していた時代です。イベントの日は朝から何百人も並ぶ、または前日の夜から徹夜で並ぶ人もいるほどの鉄火場。パチプロもざらにいましたし、借金苦で首を括った人もいたと聞きます。蛇足ですが、現在のパチスロ機は規制が入ったため、もっとマイルドな仕様になっています。


 当時、僕たちの主戦場は高田馬場、池袋、新宿、渋谷などの東京中心部界隈でした。サラリーマンの平均月収くらいは稼いでいたと思います。大学になんかいきません。僕は自宅にも帰らず、フルタさんの家に居候し、連日のようにパチスロ・麻雀三昧の日々を送っていました。酷い時は朝タクシーでパチンコ店へ向かい、閉店まで打ち、寿司か焼き肉を食べてまたタクシーで帰る、という堕落しきった生活。なにせ使っても使ってもお金が減らず増えていくのです。生産性ゼロの典型的なダメ人間ですね。あ、ちなみに僕はきちんと4年で大学を卒業しています。このへんの要領はいいんです。


 フルタさんにはお兄さんがいました。その筋の人でパチンコ店の経営にも携わっていたようです。ここには書けないこともあるのですが、いわゆるパチスロ攻略法みたいな情報もそのルートで流れてくることがありました。攻略法とまではいかずとも、パチスロ新機種の詳細なスペック情報なんかも。こういうのって結局は情報を持っている人が勝つようにできているんですよね。


 そんなある時、フルタさんに彼女ができました。十歳くらい年上の金髪ソープ嬢です。彼女はフルタさんと同棲をはじめたので、これをきっかけに僕の居候生活は終わりを迎えます。相変わらず一緒に打ちに行くことはありましたが、段々と頻度は減っていきました。


 大学卒業後、フルタさんとは二度会っています。


 最初に会った時、フルタさんは外資系の超一流企業に就職していました。俺は口が上手いからどこにだって就職できるんだ、と言っていたのを覚えています。


 二回目に会った時は疲れ切った表情で、髪はぼさぼさ、ヨレヨレのスーツを着ていました。


 しばらくして、風の噂でフルタさんはその超一流企業をクビになったと聞きました。そして現在に至るまで音信不通です。大学時代、俺はきっと陽のあたる人生は歩めないからと言っていたフルタさんのことなので、裏の世界でよろしくやっているのかもしれません。


 フルタさん、元気にしてるといいなあ。あなたと過ごした堕落しきった最低の日々、最高に楽しかったです。

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